事件名 |
新日本交通事業協同組合外5社 |
事件番号 |
愛媛地労委 平成 5年(不)第2号
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申立人 |
自交総連愛媛地方本部 |
被申立人 |
新日本自動車交通 有限会社ほか3社 |
被申立人 |
新日本タクシー 有限会社 |
被申立人 |
新日本交通事業協同組合 |
命令年月日 |
平成 6年 8月19日 |
命令区分 |
全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、(1)組合からの団交申入れに対し、イ.被申立人らが運賃
改定が実施されていないことを理由として、ロ.協同組合が団交の当事者適格がないことを理由として、ハ.新日本タクシー外4
社が団交拒否問題が労働委員会に係属中であることを理由として、ニ.上部組合書記長の出席を理由として団交に応じなかったこ
と、(2)運賃改定後、申立支部組合員に対してのみ長期間にわたり賃金の暫定払いを続けたこと、(3)運賃改定後、申立支部
組合員に対してのみ長期間にわたり賞与を支給しなかったことが不当労働行為であるとして争われた事件である。
愛媛地労委は、(1)ニについて上部組合の役員が出席することを理由とする団交拒否の禁止、(2)について運賃改定日以降
新賃金協定が発効する日の前日まで「平成3年協定」による賃金の支払いと、同日以降の賃金について同協定により算出した金額
と暫定払いの支給額との差額の支払い、(3)について5年及び6年上期賞与について平成4年協定により算出した額に各々の起
算日以降支払済に至までの年5分の金員付加の支払いを命じ、既に死亡した組合員X1については同人の遺族への支払いを命じ
た。また、(1)(2)(3)について文書手交を命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人新日本タクシー有限会社、同新日本自動車交通有限会
社、同新日本第一交通有限会社、同新日本観光ハイヤー有限会社、同新日本交通有限会社(以下「5社」という。)及び同新
日本交通事業協同組合は、申立人自交総連愛媛地方本部(以下「組合」という。)の役員が参加することを理由に、同組合及び
同組合の新日本合同支部の申し入れた団体交渉を 拒否してはならない。
2 被申立人5社は、平成5年4月23日以降、申立人組合との間に新たな賃金協定が発効する日の前日まで、同組合と平成3
年10月9日に締結した賃金協定(以下「平成3年協定」という。)により、同組合員に賃金を支払わなければならない。
また、被申立人5社は、平成5年4月23日以降の賃金について、平成3年協定により算出した金額と暫定払いとして実際
に支給した金額との差額を申立人組合員(X1については、その相続人)に支払わなければならない。
3 被申立人5社は、平成5年度上期、下期及び平成6年度上期賞与について、申立人組合と平成4年5月29日に締結した賞
与に関する協定により算出した金額に、平成5年度上期賞与については平成5年7月1日、同年度下期賞与については平成6年
1月1日、平成6年度上期賞与については平成6年7月1日をそれぞれ起算日として支払済みに至るま で、年5分の金員を付
加して申立人組合員(X1については、その相続人)に支払わなければならない。
4 被申立人5社及び新日本交通事業協同組合は、本命令書写しの交付の日から7日以内に、下記のとおり、縦1m×横
1.5mの白紙に楷書で明瞭に記載し、被申立人事業所内の従業員の見やすい場所に7日間掲示しなければならない。
記
平成 年 月 日
自交総連愛媛地方本部
執行委員長 X2 殿
同 新日本合同支部
執行委員長 X2 殿
新日本交通事業協同組合
代表理事 Y1
新日本タクシー有限会社
代表取締役 Y1
新日本自動車交通有限会社
代表取締役 Y2
新日本第一交通有限会社
代表取締役 Y1
新日本観光ハイヤー有限会社
代表取締役 Y3
新日本交通有限会社
代表取締役 Y1
貴組合に対して行った下記の行為は、愛媛県地方労働委員会において、不当労働行為と認定されましたので、今後はこのよ
うな行為を繰り返さないようにいたします。
記
1 平成5年3月5日及び翌6日に貴組合からなされた団体交渉の申入れに対して、運賃改定がなされていないことを理由
に申入書を受け取らず、団体交渉を行わなかったこと。
2 平成5年5月11日付で貴組合からなされた団体交渉の申入れに対して、労働委員会に係属中であることなどを理由に
団体交渉を行わなかったこと。
3 貴組合の役員が参加することを理由に、団体交渉を行わなかったこと。
4 運賃改定後、長期間にわたって貴組合員に賃金の暫定払いを続けたこと。
5 長期間にわたって貴組合に賞与を支給しなかったこと。
以上 |
判定の要旨 |
5111 被申立人の追加
一度取下げがあった者に再度追加申立てがあり、当事者追加の形で、労委が取り扱っても、一事不再理の原則もなく、労委規則に
基づく適法な手段であるとされた例。
2113 交渉団体として不適格
本件協同組合は、そのメンバーである5社とは別法人ではあるが、実態上、密接不可分の事業体と認められ、申立人組合員の労働
条件に重要な影響力を行使しうる立場にあり、団交の当事者適格があるとされた例。
2300 賃金・労働時間
運賃改定が行われていないとしても、手当等を含めた賃金体系についての交渉などは意義あるもので、それを拒否理由とすること
はなし得ないとされた例。
2241 他の係争事件の存在
労委で団交拒否の問題が審査中であることを理由に組合との団交を拒否することに正当理由がないのは明らかであり、また組合
が、5社中1社にのみ申し入れているのは、従前の会社側の意向に沿ったもので、拒否理由にはならないとされた例。
2211 団交ルールの先議
暴力問題について詫び状を出さないことを理由に会社側が団交を拒否することは、すでに暴力問題が別件和解で解決していること
から、理由とならないとされた例。
1201 支払い遅延・給付差別
協定の締結を遅らせることにより、賃金の暫定払いを長期間継続し、賃金が決らないとして賞与を支給しないことは、非組合員や
組合脱退者には早くから差額清算していることからみて、組合から脱退者を出させるための行為とされた例。
4501 妥結事項の文書化(協定・議事録確認等)を認めた例
団交は形式的には1社にのみ申し入れているが、組合は社長の発言に従い便宜上5社中、任意の1社から交渉を始めているにすぎ
ず、交渉拒否の事態の惹起は容易に推認できることからみて、5社に対して団交応諾を命ずるのが相当とされた例。
4406 バックペイに利子・付加金を付したもの
賞与が長期間支給されていないなどの事情を考慮し、賞与に年5分の金員を付加して支払うことを命ずべきだとされた例。
4407 バックペイの支払い方法
救済対象者1名が死亡したので、賃金差額と平成5年上期賞与を相続人に対して支払うべきことを命ずるのが相当とされた例。
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業種・規模 |
道路旅客運送業(ハイヤー、タクシー業) |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集100集344頁 |
評釈等情報 |
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