事件名 |
新日本交通 |
事件番号 |
高松高裁平成10年(行コ)第11号
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原告 |
新日本交通事業協同組合 外5社 |
被告 |
愛媛県地方労働委員会 |
被告参加人 |
自交総連愛媛地方本部 |
判決年月日 |
平成11年 2月26日 |
判決区分 |
控訴の棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、春闘要求書受取拒否、団交拒否、賞与不支給をめぐって争わ
れた事件で、愛媛地労委の救済命令(6・8・19決定)を不服として会社が行政訴訟を提起したところ、松山地裁が会社の請求
を(1)一部棄却・却下した(10・3・31判決)ため、これを不服として会社が控訴、(2)一部認容(同判決)し、地労委
命令の一部を取消したため同地労委・組合が控訴していたが、高松高裁は各控訴を棄却した。 |
判決主文 |
1 一審原告ら、一審被告及び補助参加人の各控訴をいずれも棄却す
る。
2 当審の訴訟費用について次のとおり定める。
(1) 補助参加によって生じた費用は補助参加人の負担とする。
(2) 一審原告らの控訴費用は一審原告らの負担とする。
(3) 一審被告の控訴費用は一審被告の負担とする。 |
判決の要旨 |
6140 訴の利益
団交拒否の禁止を命ずる労委命令主文について、現時点ではその拘束力を喪失し、会社はその命令に従うべき義務を負っていない
から、この主文の取消を求める訴えの利益は消滅したと判断した一審判決が維持された例。
2244 特定条件の固執
タクシー運賃の値上げが正式に認可されていないからといって、これが団交拒否の正当な理由にはならないと判断した一審判決が
維持された例。
2123 その他交渉出席者
組合役員が参加すること等を理由に団交を拒否したことは、正当な理由なく団交を拒否したものと評価せざるを得ないと判断した
一審判決が維持された例。
1201 支払い遅延・給付差別
組合員に対しては、運賃値上実施時から本件命令発令時までの約1年4か月もの長期にわたり、賃金暫定払制度を適用し、低額な
賃金を支払い続けたことは、七条一号の不当労働行為に該当すると判断した一審判決が維持された例。
1201 支払い遅延・給付差別
組合員に対しては、平成五年上期賞与支給期限から本件命令発令時までの約1年2か月もの長期にわたり、賞与を支給しなかった
ことは、七条一号の不当労働行為に該当すると判断した一審判決が維持された例。
5008 その他
6320 労委の裁量権と司法審査の範囲
タクシー運賃値上げの実施により、旧賃金協定は失効し、新賃金協定が締結されるまでの間の賃金算定基準として賃金暫定払制度
が適用されているから、仮に旧賃金協定の内容が労働契約の内容となっていたとしても、労委が不当労働行為の侵害状態の是正の
限度を超えて積極的に個別労働者の労働契約内容の履行を5会社に命ずべき権限はないとされた例。
5008 その他
6320 労委の裁量権と司法審査の範囲
旧賞与協定の賞与算定基準はタクシー運賃値上げ後も労働契約の内容となっているとはいえず、別組合の賞与協定の賞与算定基準
を限度に、他の従業員と同様の基準での支払い義務があったといえ、仮に旧賞与協定の内容が労働契約の内容となっていたとして
も、労委が不当労働行為の侵害状態の是正の限度を超えて積極的に個別労働者の労働契約内容の履行を5会社に命ずべき権限はな
いとされた例。
2300 賃金・労働時間
2305 労働協約との関係
組合の賃上げに関する団交申入れに対し、5社が、タクシー運賃値上げ申請認可後でないと協議する意味がないので、認可後団交
するとしたことが、同申入れ事項には旧賃金協定が失効し、運転手に不利益な賃金暫定払制度が適用される等値上げ認可前に協議
すべき事項が含まれていることから、労組法七条二号の不当労働行為に当たるとされた例。
1201 支払い遅延・給付差別
本件賃金暫定払制度の適用が不当労働行為となるのは、五社が組合員以外の運転手に対しては早期の段階で賃金暫定払制度の適用
を中止し、5社組合賃金協定又はこれと同内容の賃金暫定基準による高額な賃金を支払っているのに、正当な理由なく組合員に対
してだけ暫定払制度による低額な賃金を支払い続けたからであるとされた例。
1201 支払い遅延・給付差別
本件賞与の不払いが不当労働行為となるのは、5社が組合員以外の運転手に対しては早期の段階で5社組合賞与協定ないしこれと
同内容の賞与算定基準による賞与を支給したのに、正当な理由なく組合員に対してだけ賞与を支給しなかったからであるとされた
例。
5008 その他
6320 労委の裁量権と司法審査の範囲
6355 その他
不当労働行為による「侵害前の状態」の回復は、別組合員や非組合員と同様に、別組合賃金協定と同内容の賃金算定基準ないし別
組合賞与協定と同内容の賞与算定基準により、組合員を処遇するよう命じることが限界で、これを超えて、旧賃金協定ないし旧賞
与協定による賃金・賞与の支払いを命ずるのは「侵害前の状態」の回復を超えて、組合員への過度の利益付与及び使用者への過度
の負担を課すことになり、救済命令の限界を超えるとされた例。
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業種・規模 |
道路旅客運送業(ハイヤー、タクシー業) |
掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集34集262頁 |
評釈等情報 |
中央労働時報 1999年5月10日 953号 66頁
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