労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件名  石塚運輸 
事件番号  神奈川地労委 昭和58年(不)第19号 
申立人  全日本運輸一般労働組合川崎地域支部 
申立人  全日本運輸一般労働組合神奈川地方本部 
被申立人  石塚運輸 株式会社 
命令年月日  昭和59年 8月10日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  申立人組合員に対してのみ小型車への配車や残業を伴わない業務等を割り当てたこと、組合事務所の貸与に関する不誠意団交、職制による組合脱退を勧める言動が争われた事件で、業務等の割当てによる差別扱いの禁止、組合員3名に対する残業手当(年5分加算)の支払い、誠意団交の実施、組合脱退を勧める言動の禁止及びポスト・ノーティスを命じ、賃上げに関する団交拒否については、賃上げが実施されていることから、申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、被申立人に雇用されている申立人の組合員に対し、11トントラックの運転業務から外したり、運転助手のみの業務もしくは残業の伴わない業務などを割り当てたりして同組合員以外の大型運転免許を有する従業員との間で差別扱いをしてはならない。
2 被申立人は、申立人の組合員であるX1、X2及びX3に対し、昭和57年6月13日以降、残業の伴わない業務などを割り当てた期間について、同期間における同組合員以外の運転手の平均残業時間を基礎として算出した金額から同人らが現に支給を受けた当該手当額を控除した金額に年5分の相当額を加算して支払わなければならない。
3 被申立人は、申立人との組合事務所の貸与問題に関する団体交渉に誠意をもって応じなければならない。
4 被申立人は、申立人の組合員に対し、職制をして組合からの脱退を勧める言動をしてはならない。
5 被申立人は、申立人らに対し、本命令受領後速やかに下記誓約書を縦1メートル、横2メートルの白色木板に楷書で鮮明に墨書し、被申立人事務所入口付近の従業員の見やすい場所に、見やすい状態で1週間掲示しなければならない。
          誓  約  書
 当社が貴組合に対してなした次の行為は、いずれも不当労働行為である旨神奈川県地方労働委員会により認定されました。当社は、ここに貴組合及び貴組合員らに対し、多大の損害と迷惑をかけたことを深く反省し、今後かかる行為を再び繰り返さないことを誓約いたします。
(1) 貴組合石塚運輸分会組合員に対し、大型トラックの運転業務から外し、もしくは「積置き」のみの業務を担当させ、又は運転助手業務を担当させるなどにより、他の大型運転免許を有する従業員との間で差別扱いをしたこと。
(2) 組合事務所の貸与につき、いったん貸与を前提に条件を協定したにもかかわらず、その履行に関する団体交渉において誠意をもって交渉に応じなかったこと。同じく、昭和58年度の賃上げ交渉において誠意ある団体交渉をしなかったこと。
(3) 職制を通じて貴組合の組合員に組合を脱退させようとしたこと。
  昭和 年 月 日
             石塚運輸株式会社
              代表取締役 Y1
全日本運輸一般労働組合神奈川地方本部
 執行委員長 X4 殿
全日本運輸一般労働組合川崎地域支部
 執行委員長 X5 殿
6 申立人らのその余の救済申立てを棄却する。 
判定の要旨  1302 就業上の差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
申立人組合員に対してのみ継続的に小型車への配車割当てをしたこと、早出残業を伴わない積置きだけの業務等を割り当てたことが、いずれも充分な合理的理由を見い出すことができず不当労働行為であるとされた例。

1302 就業上の差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合員と非組合員との間に生じた残業時間の格差は、配車差別によるもので、不利益取扱いに当たるとされた例。

2244 特定条件の固執
2249 その他使用者の態度
組合事務所貸与に関する団交において、同事務所を貸与できない根拠について何ら具体的な説明をせず、会社の方針を変更する意思はないとの態度に固執していることが、誠実に団交を行ったとはいえないとされた例。

2240 説明・説得の程度
2249 その他使用者の態度
賃上げに関する団交において、充分な資料を提示せず、要求に応じられない合理的な根拠を説明しなかったことが、誠実に団交を行ったとはいえないとされた例。

2611 その他の従業員の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
親睦会会長の組合員に対する組合脱退を勧める発言が、会社の意を体してなされた不当労働行為であるとされた例。

4302 組合員資格喪失者(含組合脱退・死亡)
申立て後に会社を退職した組合員に係る救済について、退職により従業員たる地位を失ったが、申立人組合に所属し、救済命令を求めることを希望していることから、被救済利益は失われていないとされた例。

4414 その他の不利益の場合
非組合員に対する組合員3名の残業時間格差を是正するにあたり、非組合員の全運転手の平均残業時間を基礎として算出するのが相当であるとされた例。

4505 その他
賃上げに関する団交拒否の救済にあたり、賃上げが実施され解決に至っているので、ポスト・ノーティスにおいて会社の態度を反省させるにとどめ、団交を命ずるまでの必要はなくなったとして、棄却された例。

業種・規模  道路貨物運送業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集76集153頁 
評釈等情報  労働判例 1984年12月1日  438号 79頁 

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
横浜地裁 昭和59年(行ク)第10号 全部認容  昭和59年12月 6日 決定 
横浜地裁 昭和59年(行ウ)第25号 請求の棄却  昭和61年 3月27日 判決 
 
[全文情報] この事件の全文情報は約187KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。