労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大手前高松高等(中)学校 
事件番号  香川地労委 昭和53年(不)第2号 
申立人  香川県大手前高松高等(中)学校教職員組合 
被申立人  学校法人  倉田学園 
命令年月日  昭和58年12月10日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  (1)無許可のビラ配付を理由とする組合委員長X1に対する警告書の交付、(2)無許可の会議室使用を理由とする同人に対する警告書の交付、(3)組合員X2に対する退職勧奨、(4)学園職制Y3による組合員ニュース配付及び職場集会への介入、(5)卒業式終了後の職員祝賀会における抗議行動を理由とする組合委員長X1及び同副委員長X3に対する訓告処分、(6)本俸の格差是正、前歴計算方法の明示及び昭和52年年末ボーナスの査定に関する不誠意団交、(7)学園理事Y2が教職員X5ら5名に対し、電話で組合結成の有無を確認したこと、(8)学園理事長Y1が人を介し、組合員X4を呼び出したこと、(9)組合活動に対する論評を掲載した「学園だより」の職員会議での配付、(10)学園理事の組合嫌悪の発言、(11)生徒を使っての私学助成をすすめる会への父兄の勧誘を理由とする訓告処分、(12)本俸の格差是正、諸手当の公立並み待遇、ホームルームの時間確保、日曜日、祝祭日の日直廃止問題、昭和53年3月の期末手当及び団交において了承した有給休暇の文章化等に関する不誠実団交が争われた事件で、(1)の無許可のビラ配付を理由とする組合委員長X1に対する警告書の撤回、(2)の無許可の小会議室使用を理由とする同人に対する警告書の撤回、(3)及び(4)の組合員X2に対する退職の勧奨、組合ニュース配付に対する制止等の組合の運営に対する支配介入の禁止、(5)の職員祝賀会における抗議行動を理由とする組合委員長X1及び同副委員長X3に対する訓告処分の撤回、(6)の前歴計算方法及び昭和52年年末ボーナスの査定に関する団交応諾を命じ、(7)から(12)まで及びポスト・ノーティスについては申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人学園は、申立人組合執行委員長X1に対する無許可のビラ配付を理由とした昭和52年9月26日付、同年10月12日付、昭和53年6月28日付、同年7月1日付、同年7月5日付、同年7月19日付及び同年8月5日付の各警告書並びに組合員X1に対する昭和53年8月5日付の警告書を撤回しなければならない。
2 被申立人学園は、申立人組合執行委員長X1に対する無許可の小会議室使用を理由とした昭和52年9月26日付、同年10月12日付、同年10月19日付、昭和53年6月22日付及び同年7月18日付の各警告書を撤回しなければならない。
3 被申立人学園は、申立人組合の組合員X2に対し、組合員である故をもって退職を勧奨することにより、組合の運営に支配介入してはならない。
4 被申立人学園は、申立人組合の正当な組合活動である就業時間外における職員室でのビラ配付及び小会議室使用の職場集会に対し、その職制を通じて制止、警告する等して、組合の運営に支配介入してはならない。
5 被申立人学園は、申立人組合執行委員長X1及び同組合の副執行委員長であったX3に対する職員祝賀会における抗議行動を理由とした昭和53年3月23日付の訓告処分を撤回しなければならない。
6 被申立人学園は、申立人組合の昭和52年9月16日付の公立並み待遇の早期実現に関しての前歴計算にかかる要求及び同年11月4日付の昭和52年年末ボーナスの査定に関する要求について、誠意をもって団体交渉に応じなければならない。
7 申立人組合のその余の申立ては、棄却する。 
判定の要旨  0205 第三者・取引先等への働きかけ
1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
生徒を使っての私学助成をすすめる会への父兄に対する勧誘行為を理由に組合委員長X1および同副委員長X3を訓告処分に付したことが、これらの行為は正当な組合活動の範囲を逸脱しており、訓告処分は不当労働行為とはいえないとされた例。

1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
無許可のビラ配付を理由に組合委員長X1に対し警告書を交付したことにつき、同ビラ配付活動が形式的に就業規則に違反していても、正当な組合活動に当たると認められる以上、学園は、これを問責することはできないとして、不当労働行為に当たるとされた例。

1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
無許可の会議室の使用を理由に、組合委員長X1に対し、5回にわたり警告書を交付したことにつき、組合の当該会議室の使用によって、特段、職場秩序の維持に支障があったり、具体的に施設の管理上、不都合があったとは認められず、学園は組合から許可申請があれば許可すべきであり、許可しないことが著しく不相当であると推認される場合であることから、未だ、正当な組合活動の範囲に属するというべきであるとして、不当労働行為にあたるとされた例。

1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
卒業式終了後の職員祝賀会において、組合副委員長X3が抗議書を読み上げたことを理由に、同人及び組合委員長X1を訓告処分に付したことが、組合が何らかの抗議行動をとらざるを得ない状況にあったこと、抗議書の読上げも長時間を費やしたものとは認められず、また、読上げ後、同祝賀会を中断させたことについて陳謝していること等からみて、正当な組合活動に対する不利益取扱い及び組合の運営に対する支配介入に当たるとされた例。

2240 説明・説得の程度
本俸の格差是正に関する団交申し入れに対し、団交ルールの未設定等を理由に団交に応じなかったり、決定権を有しない校長を出席させる等、不誠実な対応が認められるものの、その後、団交に応じ、本俸の是正等について説明し、実行していることから、団交は誠実に行われたとされた例。

2240 説明・説得の程度
組合が求める前歴計算方法の明示と公立並み待遇について、誠意をもって組合を説得する努力を行うことなく拒否したり、交渉中であるにもかかわらず、組合の頭越しに、全職員に対して、前歴加算方法を公表したりしたことが不当労働行為とされた例。

2251 一方的決定・実施
組合が要求している諸手当の公立並み待遇について、労使協議を経ずに一方的に実施したことは、不誠実な団交に当たるとの組合主張につき、家族手当及び通勤手当は、既に公立並みになっており、また、住宅手当については、順次改善したいと回答するなど、交渉は断続的であるが継続されているとして、不当労働行為とはいえないとされた例。

2242 回答なし
昭和52年年末ボーナスの査定に関する団交に理事長がわずか1回出席して、算定ベースが51年度と違うことと、52年度の方式を説明したのみで、その他の交渉は最終決定権のない校長に当たらせていることが、不誠実団交とされた例。

2242 回答なし
日曜日、祝祭日の日直廃止の問題について、団交での回答以後は、一切同問題について議論をしないとの学園の態度は、団交拒否に当たるとの組合の主張につき、学園は首肯できる理由をあげて当分応じられない旨回答しており、学園の対応が誠実を欠いたものとはいえないとされた例。

2253 受取り拒否・申入れなし
昭和53年3月の期末手当について、学園は、組合の要求したプラスアルファの55,000円については、全く回答を示さず、また、算定ベースと査定についても全く組合の意見に耳をかさず、一方的に実施したとの組合主張につき、55,000円は支給できず、公立並みの 0.5カ月分が精一ぱいであると回答した事実が認められること、算定ベースについて、団交を要求したと認められるに足る疎明がないこと等から、団交拒否とはいえないとされた例。

2252 署名・調印拒否
団交において了承した有給休暇について、内規として文章化しないのは団交拒否に当たるとの組合主張につき、学園は、必ずしも内規として文章化することを約束したとまではいえず、団交拒否があったものとは認められないとされた例。

2302 労務管理・労使関係
ホームルームの時間確保は一般的に労使関係の問題とはいい難く、学園に団交応諾の義務はないとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
学園理事Y2が教職員X5ほか5名に対し、組合結成の有無を確認する電話をしたことが、不当労働行為とはいえないとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
組合結成から間もない時期に、学園理事長Y1が人を介して、組合員X4を呼び出したことが、組合運営に対する支配介入とまではいえないとされた例。

2620 反組合的言動
組合活動に対する考え方を表明した「学園だより」を職員会議で配付したことが、組合活動への介入とまではいえないとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
学園理事Y2の組合嫌悪の発言が組合の運営に対する支配介入とまではいえないとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
教頭補佐Y3が組合ニュース配付、職場集会をやめるよう制止し、警告を続けたことが、不当労働行為とされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
学園理事Y2が父親を介して、組合員X2に退職勧告したことが不当労働行為とされた例。

4825 その他
中間管理職である生徒指導主事が加入する組合は、労組法第2条ただし書第1号に該当するとの学園主張が斥けられた例。

5200 除斥期間
ビラ配付等及び小会議室使用に対する各警告書の撤回並びに団交応諾を組合がはじめて請求する救済の内容として準備書面において主張したのは、いずれも行為の日から1年以上経過しており、申立ては却下されるべきであるとの学園の主張につき、組合は申立書において、学園の行為の具体的事実について概括的ではあるが申立てしていることが認められ、準備書面においては、各請求内容を具体的に特定したに過ぎないとして学園主張を斥けた例。

業種・規模  教育(自動車教習所を含む) 
掲載文献  不当労働行為事件命令集74集598頁 
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委 昭和59年(不再)第4号 一部変更(初審命令を一部取消し)  平成 5年 5月19日 決定 
東京地裁 平成 5年(行ウ)第193号 救済申立棄却命令の一部取消し  平成 9年 2月27日 判決 
東京高裁 平成 9年(行コ)第36号 控訴の棄却  平成10年11月30日 判決 
 
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