労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  松下工業 
事件番号  長崎地労委 昭和57年(不)第3号 
申立人  松下工業労働組合 
被申立人  松下工業 株式会社 
命令年月日  昭和58年 8月 5日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  会社が一時金の支給にあたって、定率・定額による支給の外に、新たに人事考課を導入して、別組合と差別したこと、社長との団交のため有給休暇を取得した執行委員長に対し、有給休暇を取り消すとともに賃金カットを行ったこと、組合事務所の貸与差別を行ったこと、一時金交渉についての会社の考え方を述べた「申し入れ書」を会社掲示板に掲示したこと及び不誠意団交が争われた事件で、組合員17名に対し、56年年末一時金のうち人事考課査定分を別組合の組合員の査定分の平均支給率による是正及びバックペイ(年5分加算)、執行委員長に対する年次有給休暇取消処分の撤回及びバックペイ(年5分加算)、誠意ある団交の実施及び文書手交を命じ、組合事務所の貸与差別、一時金の支給時期差別、「申し入れ書」の会社掲示板への掲示、交渉出席委員数及び録音機持込問題を理由とする団交拒否、たび重なる交渉委員の交替による不誠意団交及び職場環境改善要求に関する不誠意団交については申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、下記申立人組合の組合員17名に対し、昭和57年3月3日に支払った、昭和56年年末一時金のうち人事考課査定分である考課金額について、松下工業新労働組合の組合員に対する人事考課査定分平均支給率と同率により、同日付で是正し、前記申立人組合員が既に受理した金額との差額及びこれに対する昭和57年3月3日から支払済みまで年5分の割合による金額を支払わなければならない。
              記
 X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、X10、X11、X12、X13、X14、X15、X16、X17
2 被申立人は、申立人組合執行委員長X5に対し、昭和57年3月1日に行った同年2月26・27日の年次有給休暇取消処分を撤回し、同人が受けるはずであった賃金及びこれに対する昭和57年3月25日から支払済みまで年5分の割合による金額を支払わなければならない。
3 被申立人は、申立人組合と次の事項について、誠意をもって団体交渉を行わなければならない。
(1) 昭和57年3月2日付昭和56年年末一時金についての確認書中、一時金の欠勤減額・人事考課に関する事項。
(2) 昭和56年賃上げ交渉における 547円差額問題。
4 被申立人は、本命令書受領後速やかに、下記文書を申立人に対して交付しなければならない。
              記
                    昭和 年 月 日
松下工業労働組合
 執行委員長 X5  殿
            松下工業株式会社
             代表取締役社長 Y1
 当社が、貴組合の組合員に対し、昭和56年年末一時金支給について不利益取扱いを行ったこと、X5に対する年次有給休暇取消処分及び賃金カットを行ったこと、昭和56年年末一時金交渉に伴う確認書中、一時金の欠勤減額・人事考課に関する交渉並びに昭和56年賃上げ交渉における 547円差額問題について、誠意をもって団体交渉を行わなかったことなどは、いずれも労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると長崎県地方労働委員会によって認定されました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
5 申立人の、その余の申立ては棄却する。 
判定の要旨  1202 考課査定による差別
会社が一時金の支給にあたって、定率・定額により支給される部分の外に、従来行われていなかった時間外労働の時間数のみを査定基準とする人事考課を組合と協議することなしに導入して、別組合と差別したことが、時間外労働の拒否闘争を行った組合に対し、時間外労働の時間数という客観的資料の名のもとに、別組合と差別し、時間外労働拒否に対する報復と同時に組合の弱体化を企図して行った不利益取扱いであるとされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
一時金の支給時期が別組合と差別されたとの組合主張につき、組合への支給が別組合に比べて遅れたのは、組合と会社との団交が長びいた結果にほかならないとして斥けられた例。

1204 スト・カット
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
一時金交渉についての紛争の局面打開のため、大阪在住の社長との団交を行うため有給休暇の請求をした委員長に対し、会社が、争議中に行われた組合活動のための不就労であるとして有給休暇を取り消し、賃金カットしたことにつき、有給休暇の請求は、争議中とはいえ社長と折衝するための休暇権の行使であり、これが争議行為に当たらないことは明白であるとし、有給休暇を認めずに賃金カットしたことは、正当な組合活動に対する不利益取扱いであるとともに組合運営に対する支配介入であるとされた例。

2242 回答なし
会社が56年年末一時金交渉の収拾時に、「57年以降の一時金の欠勤減額・人事考課に関して、今後とも、労使双方誠意をもって交渉する」との確認書を交わしながら、57年夏季一時金の交渉において、「考課査定について、説明するが協議はしない」との態度に終始して誠意ある団交を行わなかったことが不当労働行為であるとされた例。

2213 交渉人数
会社が団交における組合の交渉委員数及び録音機持込問題を理由に一時金交渉を拒否したとの組合主張につき、団交での交渉委員数及び録音機持込問題で一時団交が紛糾したものの、その後、団交が行われ、確認書も取り交わして一時金交渉を収拾していることから採用しがたいとされた例。

2247 解決済
分社前の会社が支払う旨約束した56年の賃上げ時の会社回答と実際の引上げ額との間に生じた差額の支払い問題についての団交要求に対し、同差額については既に57年賃上げ交渉における会社回答で説明済であるとして、その後の団交に応じようとしない会社の態度につき、同差額問題が組合との間で合意に達せずに未解決のまま残っているとみられることから、会社が誠意をもって団交に応じたとは認められないとされた例。

2242 回答なし
職場環境についての団交に会社が誠意をもって応じていないとの組合主張につき、会社が組合の要求に応じて、改善できるものは一部実施していることから、必ずしも誠意がないとは認められないとして斥けられた例。

2248 実質的権限のない交渉担当者
団交の際の交渉委員がたびたび交替するなど団交に誠意をもって応じていないとの組合主張につき、分社以後の団交においては一貫して常務、総務部長らが交渉委員として出席していることが認められるとして斥けられた例。

2620 反組合的言動
会社が団交委員、団交内容及び一時金仮支給についての会社の考え方を述べた「申し入れ書」を会社掲示板に掲示したことが組合及び組合幹部に対する誹謗であるとの組合主張につき、これにより組合員が動揺したり、組合運営に影響を受けたとの疎明もないとして斥けられた例。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
組合事務所が別組合と広さ、構造などの点で差別があるとの組合主張につき、組合の事務所は、組合結成時から貸与を受けて使用しているものであり、一方、別組合の事務所は、女子作業員の福利施設と兼用の一室を貸与されているにすぎないことから、この事実をもって一概に差別取扱いがあったとはいえないとして斥けられた例。

業種・規模  電気機械器具製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集74集132頁 
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
長崎地労委 昭和58年(不)第1号 一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む)  昭和58年 8月 5日 決定 
中労委 昭和58年(不再)第35号/他 一部変更(初審命令を一部取消し)  昭和61年 3月 5日 決定 
中労委 昭和58年(不再)第36号/他 一部変更(初審命令を一部取消し)  昭和61年 3月 5日 決定 
 
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