労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  朝日新聞社 
事件番号  福岡地労委昭和49年(不)第24号 
申立人  朝日新聞労働組合西部支部 
申立人  朝日新聞労働組合 
申立人  日本新聞労働組合連合 
被申立人  株式会社 朝日新聞社 
被申立人  株式会社 朝日新聞社西部本社 
命令年月日  昭和50年10月31日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  新機種導入に伴なう機付人員をめぐる組合の業務命令拒否行動等に対して、執行委員長を3日間の停職処分に、組合員76名を譴責処分にした事件で、処分の取消しを命じ、賃金カット取消請求は棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、昭和49年7月10日付をもって発令したX1に対する3日間の停職及びX2ほ か76名(別紙記載の者)に対する譴責の懲戒処分を取り消し、この処分が行なわれなかった ものとして取扱わなければならない。
2 申立人のその余の申立は棄却する。 
判定の要旨  0200 宣伝活動
機付人員削減問題に関する組合のビラ等の内容には一部不穏当なものも含まれているが、その多くは組合の主張を内容とするものであり、ビラの貼付、立看板掲出方法も器物・建造物の効用を著るしく阻害する程度とは認められないこと等を総合すると本件組合の行為は硬直かつ性急な会社の態度に対抗するためにとられた行為として違法・不当とはいえず、これを問責することは相当でない。

0300 争議行為の範囲
会社の一方的な機付人員変更に反対して行った業務命令拒否は、規約上の争議実施の手続きを踏んでいないが、組合の指令のもとに職場の組合員が一体となって行ったもので、業務の正常な運営を阻害したものというべく、本件業務命令拒否行動は争議行為としての実質を有するものと判断される。

0411 怠業
会社の一方的な勤務体制変更に反対して、業務命令を拒否し、従来の勤務体制についたことはその目的が従来の勤務体制を維持することにあり違法不当なものではなく、また手段においても昼勤拒否は単なる労務提供拒否であり、夜勤就労は会社の認めた就労者と一諸に従来どおりの作業を行なったに過ぎず、所有権侵害、施設管理権侵害があったとはいえず、その他の事情を勘案すると争議行為として許される範囲を逸脱したものということはできない。

0417 法令・協約・信義則違反
規約上の争議手続を踏んでいない組合支部の指令に基づく業務命令拒否行動であっても、そのことは争議行為の正当性の判断に直接影響するものではなく、組合内部の問題としてはともかく、対使用者との関係では、組合の意思に反した行動であったとの要素がない限り違法評価事由とはならず、本件の場合、事前・事後組合の各機関により正式承認されており、使用者との関係において正当性は失なわれていない。

1400 制裁処分
支部組合の行った機付人員変更反対のための業務命令拒否、ビラ貼付及び立看板の掲出等が正当な争議行為ないしは、違法、不当な行為として問責することが相当でないと判断される以上、業務命令を拒否した支部組合員76名に対する譴責処分とこれら支部組合員を指導した支部報行委員長に対する停職処分は、不利益取扱いである。

2620 反組合的言動
組合の業務命令拒否行動等に対して会社が配布した社報号外の内容は、いずれも会社の見解を表明したもので、直ちに組合内部の撹乱を意図したものとは認められず、配布時期は、組合が当該行動を開始した翌日以降であり、しかもこれにより従業員が動揺したとも認められないこと等から、組合の行為を違法不当と考えた会社がこれに対抗するため所信を表明した行為とみるのが相当であり、支配介入には該当しない。

4413 給与上の不利益の場合
会社が昼勤拒否者X2ら76名に対してその不就労分の賃金を支給しなかったとしても、同人らの昼勤拒否が争議行為としてなされたと認められるときは、当該カット分の賃金は請求しえない。

4820 単一組織の支部・分会等
申立人組合西部支部の規約は、単一組合たる本部組合の規約に包括されているが、独自の決議・執行機関及び代表者を有し、本部規定の準用により労組法第2条・第5条第2項各号の要件を具備しており、会計及び争議行為についてある程度本部の監督ないし統制に服さねばならないが、これをもって支部の独自性が全く喪失するとは判断されず申立資格を否認すべき理由はない。

4905 経営補助者
不当労働行為救済申立ての被申立人は、労働関係上の対向関係にあり、かつ不当労働行為救済の目的から必要と認められるときは、独立した法人格を有するか否かにかかわりなく、適格を有すると考えられるところ、本件西部本社の代表は業務執行の直接の職務・権限がないとしても、事務を統轄するものであり、支部組合との団交では被申立人会社を代表する責任者の立場にあったと認められ、さらに本件申立の原因となった紛争は当該事業場で発生したことなどから本件申立の範囲内において組合西部支部との間に集団的対向関係としての実態が存在すると認めうるから西部本社は本件申立ての被申立人適格を有する。

5008 その他
組合自ら本件業務命令拒否行動は争議行為ではないと主張していても、客観的な行為の態様と機能からみて争議行為に該当する時は、労働委員会はその法的判断を行なうべきは当然であり、それが争議行為として正当なものであれば、当然に法的な免責効果が生ずる。

5008 その他
組合は、機付人員削減を目的とする業務命令を無効との解釈に立って本件業務命令拒否を争議行為ではないと主張するが、労委は本件業務命令の有効・無効に立ち入るまでもなく、組合の行動が客観的に争議行為とみられるときは、その正当性を判断すれば足りる。

業種・規模  出版・印刷・同関連産業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集57集136頁 
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
福岡地裁昭和50年(行ウ)第33号 請求の棄却  昭和54年 4月10日 判決 
福岡高裁昭和54年(行コ)第8号 請求の棄却  昭和57年 3月 5日 判決 
 
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