概要情報
事件名 |
池上通信機 |
事件番号 |
神奈川地労委昭和49年(不)第12号
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申立人 |
総評全国一般労働組合神奈川地方本部 |
被申立人 |
池上通信機 株式会社 |
命令年月日 |
昭和49年 8月16日 |
命令区分 |
全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) |
重要度 |
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事件概要 |
分会員名簿の未提出を理由に賃上げについての団交を拒否し、別組合に示した最終回答と同額の会社回答を受諾しないことを理由に賃金差額の仮返いを拒否した事件で、団交の応諾、賃上げ額の仮払い、ポスト・ノーティスを命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人会社は、申立人組合の申し入れる昭和49年3月16日より適用されるベースアップ並びに諸手当の改訂等に関する団体交渉拒否してはならない。 2 被申立人会社は、申立人組合の組合員に対して昭和49年3月16日から他の従業員と同一の基準による賃上げ額について仮払いせよとの申立人組合の要求を拒絶してはならない。 3 被申立人会社は、本命令交付後1週間以内に下記文書を申立人組合に手交するとともに、縦、横1メートル以上の白紙に鮮明に墨書して被申立人会社藤沢工場正門かたわらに掲示後1週間にわたって破損することなく掲示しなければならない。 誓 約 書 池上通信機株式会社は、昭和49年度賃上げに関し、貴組合と団体交渉を行わず、未妥結を理由に他の従業員と差別して賃上げを実施しなかったことは、労働組合法第7条第1号、第2号および第3号に該当する不当労働行為であったことを認め、今後このような行為をしないことを誓約します。 昭和 年 月 日 総評全国一般労働組合神奈川地方本部 執行委員長 X1 殿 同池上通信機藤沢分会 分会長 X2 殿 池上通信機株式会社 代表取締役社長 Y1 |
判定の要旨 |
1201 支払い遅延・給付差別
2901 組合無視
会社が団交を全く行なわず一片の文書回答を示して応諾を迫り、また他の従業員に賃上げが実施されても団交が行なわれない状況のもとで組合が仮払いを求めたことは意図するにたらず、組合が会社から一方的に示された回答を受諾しないのを奇貨として賃金改訂を実施せず、賃金改訂分の仮払いを拒絶したことは、合同労組の組合員であることを理由に差別扱いをなし、分会の弱体化を図ったものである。
2253 受取り拒否・申入れなし
会社は組合から団交申入れがなかったと主張するが、組合が口頭で再三団交を申入れていることが認められ分会公然化以来一度も団交が行われず、その手続きに関する取り決めもない事情の下では、たまたま形式上の申入書が提出されていなかったとしても、それをもって団交を拒否する正当事由とはなし得ない。
4300 労組法7条2号(団交拒否)の場合
別件において、組合員名簿の未提出を理由に団交を拒否した事件について係争中であり、同一状態の下での団交拒否を重ねて申立てるのは不適当であると会社は主張するが、交渉事項が異なれば組合にとって新たな団交の必要性が生じ、別の被救済利益が存するものと解される。
4300 労組法7条2号(団交拒否)の場合
本件審問終了後、組合の団交申入書に対し、会社は団交に応ずる旨形式的に回答しているが、なお労働委員会の命令を不服として争っている以上、「組合員名簿の提出を条件とする」会社の基本姿勢が変ったものとは認め難く、組合の被救済利益は消滅したとは考えられないので主文による救済が必要と思料する。
4505 その他
組合は、F工場以外の各工場にも誓約文の掲示を求めているが、事件はF工場に関するものであるからその必要は認められず、主文による救済が適当である。
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業種・規模 |
電気機械器具製造業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集54集176頁 |
評釈等情報 |
 
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