労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  島精機製作所 
事件番号  和歌山地労委昭和47年(不)第7号 
和歌山地労委昭和48年(不)第1号 
申立人  和歌山県合同労働組合 
申立人  同上島精機分会 
被申立人  株式会社 島精機製作所 
命令年月日  昭和49年 4月25日 
命令区分  全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) 
重要度   
事件概要  分会公然化、別組合結成を背景とした分会員の昇給、一時金、業務給等の低査定、組合間差別等をめぐる事件で、差額の支払、差別してはならないこと等、ポスト・ノーティスを命じた。 
命令主文  1 被申立人は、今後申立人組合を軽視ひぼうなどしたり、その組合員の脱退をすすめたり、また組合員であるということを理由に差別したりして組合の運営を支配し、又はこれに介入してはならない。
2 被申立人は、申立人組合の島精機分会員(以下「分会員」という)に対し、昭和47年7月及び同年12月の一時金の支給にさいして行なった考課査定について、分会員の項目別平均がそれぞれ分会員以外の従業員の項目別平均を下まわらないように再査定を行ない、その結果に基づいて計算した額と、既支給額との差額を支払わなければならない。ただし、再査定によって計算した額が既支給額に満たないときでも、既支給額はこれを返還させてはならない。
3 被申立人は、分会員に対し、昭和47年8月の昇給にさいして行なった考課査定について、分会員の項目別平均が分会員以外の従業員の項目別平均を下まわらないように再査定を行ない、その結果に基づいて計算した額と、既に昇給せしめた額との差額を昭和47年8月に遡って昇給せしめなければならない。ただし、再査定によって計算した額が、既昇給額に満たないときでも既昇給額を変更してはならない。
4 被申立人は、分会員に対し、昭和47年5月の業績手当の配分にさいして行なった考課査定(出勤状況査定は除く)について、分会員の項目別平均が分会員以外の従業員の項目別平均を下まわらないように再査定を行ない、その結果に基づいて計算した額と、既支給額との差額を支払わなければならない。ただし、再査定によって計算した額が既支給額に満たないときでも、既支給額を返還させてはならない。
5(1) 前記2項、3項及び4項によって救済を受けるべきものの範囲は、昭和47年7月及び同年12月の一時金並びに同年5月の業績手当についてはそれぞれの支給当時、同年8月の昇給については、その決定当時、分会員であって、かつ、昭和49年2月2日現在、申立人組合の組合員であったものとする。
 (2) 前記2項、3項及び4項にいう分会員以外の従業員は、管理職を除いた従業員とする。
6 被申立人は、本命令到達後3日以内に、下記文言を縦1m、横2mの木製板いっぱいに筆太に墨書し、これを従業員の見やすい場所に引き続き10日間掲示しなければならない 
判定の要旨  1201 支払い遅延・給付差別
3501 労働者の行為と不利益取扱の時期との関連
分会員が、一時金、昇給において、非分会員より低位に処遇されたことの合理的理由の疎明がないこと、分会公然化後の会社の分会に対する非難又は差別等の態度から、会社は分会員なるが故に差別したものと考えざるを得ない。

1201 支払い遅延・給付差別
3501 労働者の行為と不利益取扱の時期との関連
分会員に対し業績手当の標準支給額よりいちじるしい低額を支給したことは、分会公然化後の考課査定の結果であり、その査定を正当化する理由や差別支給を合理化する疎明がない以上、会社は分会員なるが故に、差別支給したものと考えられる。

2212 交渉の場所・時間
会社側の一方的な団交条件として、場所を社外とする旨を通告したことは、社内ではけんそうにわたり仕事に支障があるという条件がすでに解消していること、組合の求める社内団交を拒否していながら別組合とは社内で団交を行なっていることからみて、組合に対する不当な差別である。

2500 別組合の結成・援助
2610 職制上の地位にある者の言動
課長待遇Y1が計画した第二組合結成準備行為は、第二組合結成の誘因となったといえるが、第二組合はY1が手をひいた後に準備委員会ができ、それが発展したと考えられるので、会社の庇護のもとに結成されたとは断定できない。

2620 反組合的言動
「今後、別組合以外とは一切交渉しない」等の言辞につき、会社は企業内組合以外とは生産計画について団交をしない意味であると主張するが、その後生産計画につき別組合との話合いがなされていないことからみても、会社の真意は、組合をひぼうし、軽視し、勢力を低下させることにあったものと考えられる。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
設計室長が組合員に別組合加入を呼びかけたことは組合に対する支配介入であり、また、座談会で組合活動を抑制する言動をしたことも、当時の同人の行動からみて、組合員、組合を意識した行為と推認され、支配介入行為である。

2901 組合無視
本件時短の実施は、申立組合との団交を拒否しながら、他方では対立関係にある別組合の同様の要求を容れて、組合とは協議もせず一方的に実施する旨を告示したことからみて、不条理な手続きで組合を軽視し、不当に差別した不当労働行為である。

2901 組合無視
別組合との賃上げ妥結内容を一方的に準用し、団交不要を宣言したこと、および「従業員の絶対多数を代表する別組合との団交で賃上げは妥結した」旨の社告を出したことは、対立関係にある別組合のみを重視した態度であり、会社の組合を軽視し、嫌悪し、差別し、弱体化させようとする真意のあらわれと言わざるを得ない。

2500 別組合の結成・援助
3410 職制上の地位にある者の言動
課長待遇Y1の第二組合結成準備活動は、管理職又は利益代表者の組合に対する支配介入行為であるが、会社は、これを知りながら、かつその行為を阻止する機会があったにもかかわらず、Y1の役職辞退届を預ったのみであり、その行為を阻止するなんらの行動にもでておらないことからみて、Y1の行為を容認したものと認めざるを得ない。

4415 賃金是正を命じた例
昇給、一時金の差別是正方法としては、昇給等の際に行なった考課査定につき、組合員の項目別平均の非組合員の項目別平均を下回らないよう再査定を行なうことが合理的であると考える。

業種・規模  精密機械器具製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集53集235頁 
評釈等情報  判例時報  757号 

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
中労委昭和49年(不再)第22号 再審査棄却(初審命令をそのまま維持)  昭和50年11月19日 決定 
東京地裁昭和51年(行ク)第46号 全部認容  昭和51年10月 9日