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概要情報
事件番号・通称事件名  東京地裁令和7年(行ウ)第158号
灰孝小野田レミコン外2社労働委員会救済命令取消請求事件 
原告  X支部(「組合」)
 
被告  国(処分行政庁 中央労働委員会(「中労委」))
 
被告補助参加人  Z1株式会社、Z2株式会社(Z1会社と併せて「本件2社」)、Z3株式会社(本件2社と併せて「本件3社」) 
判決年月日  令和8年7月22日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、本件2社が、①加入するB2協同組合の行った組合との決別宣言に賛成したこと及びB1会社との間の製品運送契約を解除したことが労働組合法(「労組法」)7条3号に該当する不当労働行為であるとして、また、その結果、②B1会社が組合員(「本件組合員4名」)を解雇等したことが、B1会社を支配する本件3社による同条1号及び3号に該当する不当労働行為であるとして、組合が大阪府労働委員会(「府労委」)に救済を申し立てた事案である。

2 初審府労委は、本件3社は、いずれも本件組合員4名の労組法上の使用者には当たらないとして、組合の救済申立てを棄却したところ、組合はこれを不服として再審査を申し立てた。

3 中労委は、再審査申立てを棄却したところ(「本件命令」)、組合は、これを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起した。

4 東京地裁は組合の請求を棄却した。

 
判決主文  1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は、原告の負担とする。
 
判決の要旨  1 本件2社の労組法上の「使用者」該当性
⑴ 判断枠組み
 一般に使用者とは、労働契約上の雇用主をいうものであるが、労組法7条に定める「使用者」が、団結権の侵害に当たる一定の行為を不当労働行為としてこれを排除し、是正して正常な労使関係を回復することを目的としていることに鑑みると、雇用主以外の事業主であっても、労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、当該事業主は同条の「使用者」に当たるものと解するのが相当である(最高裁判所平成7年2月28日第三小法廷判決・民集49巻2号559頁参照)。
 そして、原告は、本件2社が、労組法7条1号の不利益取扱い、同条3号の支配介入を行った使用者に当たると主張して、本件組合員4名の雇用確保等を求めていることからすれば、本件2社がその求めに応じるべき使用者であるというためには、労働者の基本的な労働条件等、特に労働者の雇用そのもの(採用、配置、雇用の終了等)について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあることが必要であると解すべきである。

⑵ 具体的検討
ア 平成4年11月18日、本件2社に懲戒解雇された者を含む組合の組合員22名を原告、本件2社を被告とする訴訟(「本件2社訴訟」)において、和解(「4.11.18和解」)が成立した。
 B1会社は、本件2社訴訟において、本件2社が懲戒解雇を撤回し、任意退職した本件2社の従業員の雇い入れなどを内容とする4.11.18和解に基づき、本件2社の生コンクリート(「生コン」)の輸送を目的とする会社として設立されたものであること、本件2社は、設立に際し、本件2社の従業員であった組合員らを雇用したことが認められる。また、本件2社は、平成6年12月以降、B1会社の株式をB6会社から譲り受けて保有していたことが認められる。さらに、本件2社とB1会社は、平成5年頃、本件2社の製造する生コンの運送に関する契約(本件運送契約)を締結したが、本件運送契約書では、B1会社は、主に本件2社の指定する工場製品の運送業務を請け負うものとされ(第3条第1項)、実際に、B1会社が事業を停止するまでの間、専ら本件2社の製造する生コンの輸送を行い、他の業務は行っていなかったこと、また、本件運送契約では、B1会社が車両の増車又は更新をする場合には、本件2社と協議した上で決定することとされていた(第8条)ことが認められる。
上記のようなB1会社の設立経緯、本件2社によるB1会社の株式保有関係、B1会社の生コン運送業務に鑑みれば、本件2社は、B1会社の経営に一定の影響力を有していたと認められる。

イ しかし、B1会社に派遣した管理職以外のB1会社の運転手ほか従業員の採用、採用条件、退職等の雇用そのものについては、組合とB1会社との間で協議し、決定されてきたことが認められ、本件2社がこれに関与したことは一切認められない。
 そして、Z2会社の工場で稼働するB1会社の運転手の割り当ては、Z2会社から必要な台数のミキサー車の発注を受けて、B1会社自身が決定していたこと、Z1会社の工場で稼働するB1会社の運転手の割り当ては、B1会社の正社員のミキサー車運転手についても残業時間が平準化するようZ1会社によって調整されたが、これはB1会社の依頼に基づくものであること、就業開始時刻より前に業務開始される配車については、B1会社が作成した残業調整表に基づいて、原則としてB1会社が指定した順位に従って配車の割り当てが行われていたこと、B1会社の部長が、B1会社の運転手に対し、翌日の乗務場所や出勤時間を毎日指示していたこと、B1会社の運転手は、B1会社によって指示された出勤時間・乗務場所に従って出勤し、B1会社の社長や部長によるアルコールチェックや勤怠管理を受けた上で、業務に従事していたことが認められる。このょうに、B1会社が、B1会社の運転手の出勤の可否や残業の状況を考慮した上で、Z2会社又はZ1会社の工場で稼働するB1会社の運転手を実質的に決定し、B1会社自らアルコールチェックや勤怠管理を実施していたことからすれば、B1会社がB1会社の運転手の作業日時、作業時間、作業場所等の決定について主要な役割を担っていたといえ、本件2社が、B1会社の運転手の作業日時、作業時間、作業場所、作業内容等その細部に至るまで自ら決定していたということはできない。
 また、B1会社の正社員の昇給、年間一時金や年間休日、B1会社の運転手の採用及び採用条件、退職及び退職条件などの基本的な労働条件については、組合とB1会社との間で協議・決定してきており、本件2社は一切関与していない。
次に、B1会社は、1か月間の勤務日数が0日でも、35時間の時間外労働分として普通残業手当と称する手当を支給し、基本給に職務手当や住宅手当といった手当を加算した額から所得税や社会保険料等を控除した額を従業員に支給するなど独自の賃金制度を採用し、B1会社従業員の賃金計算事務等を行っていており、本件2社はその具体的な内容を認識すらしておらず、Z1会社が大津市内に有する工場においては、同じ業務を行うZ1の正社員のミキサー車運転手と組合の組合員との間で、固定残業代の内容等で明らかな不公平が生じていたにもかかわらず放置されるに至っていた。加えて、B1会社の運転手は、本件運送契約に基づく生コン運送業務に用いられる最も重要な機材であるミキサー車につきB1会社所有のミキサー車を利用して生コン運送業務に従事していたことが認められる。そうすると、B1会社が本件2社の一部門であるとはいえないし、B1会社の運転手の業務が本件2社の作業秩序に組み込まれていたということもできない。
 さらに、本件2社がB1会社の運転手の作業時間帯の変更や作業時間の延長、休憩等を随意に決めていたことを裏付ける客観的な証拠はなく、B1会社の運転手の作業時間帯の変更や作業時間の延長、休憩等の点について本件2社の従業員の指揮監督の下に置かれていたということはできない。

ウ 以上からすると、本件2社は、B1会社の経営に一定の影響力を有していたとは認められるもののその影響力は間接的なものにとどまるものであり、実質的にB1会社の運転手の採用、配置、雇用の終了、賃金等の労働条件、勤務時間の割り振り、労務提供の態様、作業環境等を決定していたともいえないから、B1会社の運転手の基本的な労働条件等、特にB1会社の運転手の雇用そのもの(採用、配置、雇用の終了等)について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったということはできない。

⑶ 組合の主張について
ア 組合は、本件2社が、4.11.18和解において、B1会社に対して専属的に生コン輸送を委託して、同社の経営を維持し、B1会社に所属する組合の組合員の雇用に責任を負うことに合意した旨主張し、証拠(略)がこれに沿う。
 しかし、4.11.18和解において、本件2社は、本件労使紛争の解決金として組合に対して3億円も支払っていることに加え、組合の組合員を受け入れる新会社を設立するのはB5会社とB6会社とされていて本件2社ではないのであり、本件2社が組合の組合員の雇用責任を負うことをうかがわせるような記載は見当たらない。組合の上記主張に沿う上記各証拠は裏付けを欠くものであり、採用の限りでない。

イ 組合は、本件2社は、B1会社との間で専属的な輸送契約を締結し、 27年間にわたり生コン輸送を委託し続け、B1会社の経営に対して強い支配力を有していた旨主張する。
 しかし、本件2社とB1会社との間の本件運送契約において、本件2社がB1会社に対して他社との取引を禁止したものと認めることはできず、結果的にB1会社が本件2社からしか受注しなかったとしても、それはB1会社の経営判断に基づくものというほかない。そして、本件2社とB1会社との間の本件運送契約が結果として27年間継続したとしても、そのことが直ちに本件2社の使用者性を基礎付けるものではない。

ウ 組合は、本件2社は、個別の出荷時に発車時刻や納入の順番が記載されている出荷伝票を各運転手に交付し、無線で到着時間や待機などを逐次指示する、現場からの追加注文のために終業時刻の延長を指示するなどしていたのであり、B1会社の運転手の業務が本件2社の作業秩序に組み込まれていたと主張する。
 しかし、組合が指摘するような本件2社の従業員による現場における指示は、生コンの積み込みのタイミングや出荷先等についてのものであるところ、これは、作り置きや保存ができないため、製造後すぐの生コンを必要とする数量を必要な場所に過不足なく適時に輸送するという本件運送契約に基づく業務の性質上必要とされるものであり、このような指示をもって、B1会社の運転手の業務が本件2社の作業秩序に組み込まれていたと評価することはできない。

エ また、組合は、B1会社の運転手の業務は、本件2社の積み込み設備で開始され、本件2社の出荷伝票、無線設備により管理され、本件2社の残コン処理設備で終了するなど、本件2社の事業運営に物理的・機能的に編入されていたと主張する。
 しかし、生コンの適時の運送を本旨とする本件運送契約において、運送対象である生コンの積み込み設備や残コン処理設備、運送場所や運送対象を知らせるための出荷伝票、作り置き等ができない生コンを適時に運送するために必要な連絡を行うための無線装置について、運送を委託する者の所有に属することは通常であり、これをもって、B1会社の運転手の業務が本件2社の作業秩序に組み込まれていたということはできない。

オ さらに、組合は、B1会社の運転手は、本件2社のいずれかでのみ勤務しており、その作業環境等は本件2社の工場設備・管理体制に依存しており、特に、Z1会社においては安全衛生委員会にB1会社の運転手も参加していたことを指摘し、本件2社は、B1会社の運転手の作業環境等について、現実的かつ具体的に支配・決定していたというべきであると主張する。
 しかし、B1会社の運転手はZ1会社の工場での乗務に携わることが多い者であるところ、作業環境の改善等を検討するに当たり、その意見を聞くことはあり得るところであり、安全衛生委員会への参加をもって、Z1会社がB1会社の運転手の作業環境等について現実的かつ具体的に支配・決定していたということはできないし、Z2会社についても、そのように認めるに足りる状況はない。

カ(ア) 加えて、組合は、B1会社の従業員の基本的な労働条件賃金は、本件2社が参加する京都集団交渉により決められており、本件2社は、B1会社の従業員の重要な労働条件である賃金につき、現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったと主張する。
 しかし、京都集合交渉は、組合や訴外組合がそれぞれの労働組合の組合員を雇用している企業に対して春闘統一要求書を提出して交渉し、合意した事項について協定書を締結し、これを踏まえて、各企業はその雇用する労働者の所属する組合又は訴外組合と個別に交渉して組合員の労働条件等を決定するものであることが認められる。仮に、B1会社が上記協定書の内容に従って組合との間で組合員の労働条件を決定したとしても、それはB1会社の経営判断に基づくものといえる。また、京都集合交渉は毎年行われているが、本件2社が京都集合交渉で協定書を締結したと認められるのは平成11年度のみであり、平成9年度及び平成10年度の協定締結者には本件2社が含まれていない。このようなことからすれば、本件2社が参加して合意された協定書の内容と同一の労働条件が、B1会社の従業員の労働条件に係る組合とB1会社の交渉によって合意されたとしても、本件2社が、B1会社の従業員の重要な労働条件である賃金につき、現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったということはできない。
(イ) 組合は、本件2社は、B1会社の実費運賃と本件2社の精算基準単価運賃との差額を本件2社が負担すること等を内容とする平成7年4月1日付けの覚書(「7.4.1覚書」)を締結したのであるから、本件2社からB1会社ヘの運送委託料はB1会社の従業員の賃金の一部の支払にすぎず、本件2社がB1会社の従業員の賃金を決定していたなどと主張する。
 しかし、本件2社はB1会社の車両の使用を最優先にすること及びB1会社の実費運賃と本件2社の精算基準単価運賃とに差額が発生した場合は本件2社が差額を負担することなどを含む7.4.1覚書の内容からすれば、本件2社はB1会社の経営を援助する目的で同覚書を締結したものといえるのであり、結果的にB1会社の従業員の賃金が本件2社からB1会社に支払われる運送委託料を原資とするものだとしても、本件2社がB1会社の従業員の賃金を決定していたなどということはできない。また、組合と本件2社の車両稼働等についての協議内容を踏まえると、組合は、B1会社の経営上の問題として車両の稼働等について本件2社に交渉を申し入れ、本件2社はB1会社の取引先としてその交渉に応じていたと認められるところ、交渉結果を反映したB1会社の経営状況によって結果的にB1会社の従業員の賃金などの労働条件に影響を与え得るとしても、本件2社がB1会社の従業員の労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に影響を与える地位にあったものということはできない。
(ウ) 組合は、B1会社設立の経緯から本件2社には雇用責任がある、本件2社がB1会社を破産させ、同社の従業員の地位を奪ったことは、本件2社が労組法上の「使用者」であることの証左であるなどとも主張する。
 しかし、前記のとおり、本件2社が、B1会社の従業員の雇用責任を負っていたとまで認めることはできない。また、本件2社による本件各契約解除によるB1会社の経営状況の悪化がB1会社の破産に影響していたとしても、そのことをもって、本件2社が、B1会社の従業員の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったということはできない。

キ よって、組合の主張はいずれも採用することができない。

⑷ したがって、本件2社は、労組法上の「使用者」に該当しない。

2 Z3会社の労組法上の「使用者」該当性
⑴ 判断枠組み
ア 上記1⑴記載のとおり、労組法7条が団結権の侵害に当たる一定の行為を不当労働行為として排除、是正して正常な労使関係を回復することを目的としていることに鑑みると、雇用主以外の事業主であっても、雇用主から労働者の派遣を受けて自己の業務に従事させるなどして、その労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、上記事業主は同条の「使用者」に当たるものと解するのが相当である(平成7年最判参照)。
 そして、同条の前記趣旨目的に鑑みれば、親子会社間において親会社の使用者性が問題となる場合であっても、これと異にして解すべき理由はないが、親会社と子会社及びその従業員との関係は様々であるから、親会社が、子会社の従業員の基本的な労働条件等について、子会社と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあるといえるか否かは、当該親会社と当該子会社との関係の実態等を個別に考慮して検討すべきである。
 そして、組合は、Z3会社が、労働組合法7条1号の不利益取扱い、同条3号の支配介入を行った使用者に当たると主張して、本件組合員4名の雇用確保等を求めていることからすれば、Z3会社がその求めに応じるべき使用者であるというためには、少なくとも労働者の基本的な労働条件等、特に労働者の雇用そのもの(採用、配置、雇用の終了等)について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあることが必要であると解すべきである。

イ この点につき、組合は、会社法上の「親会社」は、「会社等が株式会社の財務及び事業の方針の決定を支配している場合における当該株式会社等」 (会社法2条4号、同法施行規則3条2項等)をいうところ、親会社は、会社法に基づき、子会社等の労働者の雇用・労働条件に関わる財務及び事業時方針の場面において、子会社等の労働者の雇用・労働条件につき「現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位」にあるとして、使用者性を否定する特段の事情がある場合を除き、労組法上の使用者性が認められるべきであると主張する。
 会社法上、親子会社は親会社が子会社の経営を支配し、その財務及び事業方針の決定を支配する関係にあるとされている(会社法2条3号、4号、 同法施行規則3条1項、2項)。しかし、当該関係は、主として親会社が有する子会社の株主の議決権の割合に着目して規定されるものである (同規則3条3項参照)。 また、子会社が独立性を持った法人である限り、子会社と第三者との関係性についてまで親会社が直ちに支配できるものではないことを考慮すれば、子会社の従業員の労使関係の規制については会社法が想定するところではない。したがって、親会社に当たることから、直ちに、子会社の従業員の基本的な労働条件等について、子会社と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあるということはできないから、この点に関する組合の主張を採用することはできない。

⑵ 具体的検討
ア 4.11.8和解に基づくB1会社の設立にはZ3会社の関連会社等が関与していたこと、Z3会社の関連会社であるB5会社はB1会社設立当時から同社の株式の51%を保有し、その後これをB7会社に譲渡したこと及び平成10年度以降のB1会社の代表取締役にはZ3会社の退職者が就任し、役員以外の管理職にもZ3会社からの出向者が就任していたことが認められる。また、Z3会社は、B1会社から、B1会社の生コン輸送実績や、B1会社と分会との交渉状況、B1会社と本件2社との車両・運賃に関する交渉状況などについて報告を受けたり、子会社(B8会社)を通じた貸付による融資を行っていたほか、B1会社の株主総会や定款変更に関わり、B1会社の収支の改善策や不祥事対応等について助言するなどしていたことが認められる。
 これらのことからすれば、Z3会社は、資本関係及び役員等の派遣を通じて子会社であるB1会社の経営に関与し、相当程度の影響力を有していたと認められる。

イ しかし、Z3会社がB1会社から報告を受けたり、B1会社に対して助言を行った事項については、いずれもB1会社の経営に関し親会社の子会社に対する管理、監督の一環として採られた措置ということができ、B1会社の従業員の基本的な労働条件に直接関係するようなものではない。むしろ、B1会社に派遣した管理職以外のB1会社の運転手ほか従業員の採用、採用条件、退職等の雇用そのものについては、組合とB1会社との間で協議し、決定されてきたことが認められ、Z3会社がこれに関与したことは一切認められない。このほか、B1会社の正社員の昇給、年間一時金や年間休日などの基本的な労働条件についても、組合とB1会社との間で協議・決定してきたことが認められ、Z3会社が、組合とB1会社との間の上記協議に何らかの関与をしたことは認められない。また、B1会社は独自の賃金制度を採用し、B1会社の従業員の勤怠管理や賃金計算事務等の労務管理もB1会社が行っていたことが認められるところ、Z3会社がこれらの制度の創設や事務等に関与していたとは認められない。さらに、前記1⑵イ及び同⑶ウ記載のとおり、B1会社がB1会社の運転手の作業日時、作業時間、作業場所等について主要な役割を担っており、生コンの適時の運送という業務の性質上必要な現場における具体的な指示は本件2社が行っていたところ、Z3会社が、B1会社従業員に対して現場で業務遂行について具体的な指示を出していたと認めることもできない。
 これらの事情に照らすと、本件について、Z3会社が、子会社であるB1会社の従業員の基本的な労働条件等、特に労働者の雇用そのもの(採用、配置、雇用の終了等)について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったとは認められない。

⑶ 組合の主張について
ア 組合は、4.11.18和解に基づくB1会社の設立の経緯からZ3会社はB1会社従業員の雇用責任を負うものであり、このことは同日付け覚書(「4.11.18覚書」)及び同日付け念書(「4.11.18念書」)からも明らかであると主張し、証拠(略)がこれに沿う。
 しかし、Z3会社は、4.11.18和解に、利害関係人としても参加していない。4.11.18和解については、Z3会社の関連会社であるB5会社が4.11.18和解の当事者として、B6会社とともに、本件2社の生コンを輸送する会社を設立し、本件2社の元従業員を雇い入れること及び新会社設立についてはB5会社及びB6会社が詳細を決定することなどが合意されたことが認められるものの、このような合意内容からすれば、B5会社は、B6会社とともに、新会社を設立し、本件2社の元従業員を新会社で雇い入れることについて責任を負っていたとはいえるとしても、新会社設立後から相当期間経過後における元従業員の雇用を維持することの責任まで負っているということはできない。ましてや、4.11.18和解の当事者でないZ3会社について、同和解の当事者でさえ法的義務を負わないB1会社従業員の雇用責任を負っていると認めることはできない。

 次に、Z3会社の大阪支店(「大阪支店」)は、4.11.18和解の成立日に、B5会社及び組合との間で、大阪支店及び同支店管轄のZ3会社関連の各社と組合間で起こる諸問題に対して大阪支店と組合が双方誠意を持って協議し解決していくことを確約することや、当該協議の代表者が交代した場合には後任者が承継していくことなどが記載された4.11.18覚書を締結していることが認められる。しかし、同覚書にB1会社従業員の雇用についてZ3会社が責任を持つといった内容は含まれていないから、同覚書をもって、Z3会社がB1会社従業員の雇用責任を負っているとはいえない。
 そして、大阪支店は、同日、本件2社及びB6会社を名宛て人として、「新会社の設立・免許取得・経営維持・雇用確保等については、当社が責任をもって、A5組合との協議・調整等を行います」という記載のある4.11.18念書を作成していることが認められる。しかし、このような念書の作成経緯及びその内容からすれば、当該念書は、Z3会社が、本件2社及びB6会社に対し、4.11.18和解の後も組合との協議等について責任をもって対応することを表明したものであって、それを超えて、Z3会社が、B1会社に一旦採用された従業員について設立後相当期間経過後の雇用の維持についてまで責任を負うことを約したものとみることは困難であるし、4.11.18念書の名宛人に組合が含まれていないことからすれば、Z3会社が組合に対して労組法上の使用者としての義務を負うことを表明したものともいえない。

イ また、組合は、Z3会社がB1会社に対して多額の貸付けを行っており、その資金がB1会社の管理職や従業員の賃金の原資となっているとして、Z3会社のB1会社に対する支援は、単なる親会社から子会社への支援を超えた繋がりと関係性を有すると主張する。
 しかし、組合が主張するような上記のような事情は、経営不振に陥った子会社に対する親会社の救済措置というべきものであって、貸付額が多額であるが、それはZ3会社においてB1会社の経営を存続させるべきという経営上の判断に基づくものというべきである。これらは親会社の子会社に対する管理、監督の一環としてとられた措置ということができ、単なる親子会社の関係性を超えたものであると認めることはできない。

ウ さらに、組合は、Z3会社が、B1会社元社長による従業員に対するハラスメントという安全配慮義務という労務問題に関して、B1会社元社長に指導し、慰謝料を支払わせるなど、積極的に組合と交渉し、B1会社に代わってその是正を図っているところ、このような人事労務への関与は、単なる親子会社の関係性を超えたものであると主張する。
 しかし、組合が主張する上記のような事情は、Z3会社から派遣された子会社の代表者の行為に係る労務問題について、親会社の子会社に対する管理、監督の一環としてとられた措置ということができ、Z3会社によるB1会社元社長の労務問題に対する関与をもって親子会社の関係性を超えたものであるとはいえない。

エ 加えて、組合は、Z3会社はB1会社を破産させ、同社の従業員の地位を奪ったことは、Z3会社がB1会社の従業員の労組法上の使用者であることを示していると主張する。
 しかし、B1会社の従業員の基本的な労働条件は、組合とB1会社の協議で決定されていたことは前記のとおりであり、Z3会社が、B1会社に派遣した管理職等以外の従業員の雇用に具体的に関与していたとは認められない。また、Z3会社がB1会社の従業員の雇用責任を負っていたとはいえないし、Z3会社のB1会社ヘの関与は、親会社が子会社に対して行う管理、監督の範囲を超えるものとは認められない。さらに、B1会社は平成16年頃には経営不振に陥り、毎年数千万円単位の経常損失を計上していたこと、平成26年3月時点の借入総額が6億3000万円を超え、破産債権総額が6億5000万円を超える状態にあったことからすると、B1会社が経営判断として破産申立てを検討することは、不合理とはいえない。これらのことからすると、仮にB1会社の破産申立てがZ3会社の決定した方針の下に行われたものであり、破産を原因としてB1会社の従業員の地位が失われる事態が生じたとしても、Z3会社がB1会社の従業員の労組法上の使用者に当たるということもできない。
オ 組合は、Z3会社からB1会社に派遣されたB1会社元社長の「給与明細表」には報酬ではなく賃金と記載されていたこと、Z3会社からB1会社ヘの出向者にZ3会社の従業員のみが加入することのできる持株会の案内がされたこと、Z3会社がB1会社ヘの出向者の就業報告を求めたことをもって、B1会社元社長やB1会社ヘ出向している管理職はZ3会社の従業員として活動していたというべきであるとし、B1会社の役員と管理職が決定したB1会社の従業員の労働条件はZ3会社が決めたものといえるなどとも主張する。
 しかし、B1会社元社長に対して賃金を負担して支払っていたのはB1会社であるし、また、持株会の案内の送付や出向者の就業報告の求めなどは、親会社である出向元から出向先の子会社で勤務する者に対して採られる措置として特殊なものとはいえず、組合が主張する事情を踏まえても、B1会社元社長やB1会社に出向している管理職がB1会社において、Z3会社の従業員として活動していたなどと認めることはできない。

カ 組合は、Z3会社から派遣されたB1会社前社長は、Z3会社のために自身の経営する会社(B1会社)の解散を進言し、解散のシミュレーションまで示すなど、B1会社の代表者自身が経営者としての認識を有していなかったのであり、B1会社は独立した法人としての実体がなく、法人格否認の法理に照らしてZ3会社を使用者と認めるべきであるとも主張する。
 しかし、B1会社は、その従業員の基本的な労働条件について組合との間で協議・決定する、独自の賃金制度を採用しその従業員の賃金計算事務等を行う、アルコールチェックや勤怠管理を実施するなどしており、Z3会社から独立して企業活動を行っていたと認められることは前記のとおりであるところ、B1会社の法人格が形骸化しているということはできない。

キ よって、組合の主張はいずれも採用することができない。

⑷ したがって、Z3会社は、労組法上の「使用者」に該当しない

3 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、組合の請求は理由がない。
 よって、本件命令は適法であり、組合の請求は理由がないから、これを棄却する。

 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委令和2年(不)第7号 棄却 令和3年11月26日
中労委令和3年(不再)第46号 棄却 令和6年9月18日
 
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