概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委令和3年(不再)第46号
不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
X組合(「組合」) |
再審査被申立人 |
Y1会社、Y2会社、Y3会社 |
命令年月日 |
令和6年9月18日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、Y1会社及びY2会社(併せて「本件2社」)が、①加入する協同組合の行った組合との決別宣言に賛成したこと及びC社との間の製品運送契約を解除したことが労働組合法(「労組法」)第7条第3号に該当する不当労働行為であるとして、また、その結果、②C社が組合員(「本件組合員4名」)を解雇等したことが、C社を支配する本件2社及びY3会社(本件2社と併せて「本件3社」)による同条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であるとして、組合が大阪府労働委員会に救済を申し立てた事案である。
2 大阪府労働委員会は、本件3社は、いずれも本件組合員4名の労組法上の使用者には当たらないとして、組合の救済申立てを棄却したところ、組合はこれを不服として再審査を申し立てた。 |
命令主文 |
本件各再審査申立てをいずれも棄却する。 |
判断の要旨 |
本件3社は、本件組合員4名の使用者に当たるか(争点)
(1) 本件3社とC社の関係性について
C社は、組合と本件2社らとの争議をめぐる和解により、本件2社の生コンの輸送を目的とする会社として設立されたものであり、本件2社及びY3会社の関連会社等がC社の設立に関与していた。
(2) 本件2社の使用者性について
ア C社は、設立に際して本件2社の従業員であった組合員らを雇用し、専ら本件2社の製造する生コンの輸送業務を行い、他方で、本件2社はC社の株式を保有するなど、C社と本件2社は経営上密接な関係にあり、本件2社はC社の経営に一定の影響力を有していたといえる。
しかしながら、C社の従業員の基本的労働条件等は、組合とC社の協議で決定されていたし、本件2社がC社の従業員の雇用の管理に関与していたことも認められない。また、C社は独自の賃金制度を採用し、C社の従業員の勤怠管理や賃金計算事務等の労務管理及び就業場所の決定等もC社が行っていたのであり、本件2社がこれらの制度の創設や事務等に関与していたとは認められない。
イ なお、組合は、C社に法人格否認の法理が適用されるから、本件2社には使用者性が認められる旨主張する。
しかしながら、上記アからすると、C社が本件2社から独立して企業活動を行っていたことは明白であり、他に、C社の法人格が形骸化していること又はC社が法人格の濫用目的で設立されたことを認めるに足りる証拠はない。
ウ 以上のとおりであるから、本件2社はいずれも、本件組合員4名の基本的な労働条件等について、雇用主であるC社と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったということはできない。したがって、本件2社は、いずれも本件組合員4名の労組法上の使用者に当たらない。
(3) Y3会社の使用者性について
ア C社の親会社であるY3会社は、資本関係及び役員等の派遣を通じてC社の経営に関与し、これに一定の影響力を有していた。
しかしながら、C社の従業員の基本的労働条件等は、組合とC社の協議で決定されていたし、Y3会社が、C社に派遣した管理職等以外の従業員の雇用の管理に具体的に関与していたとは認められない。また、C社は独自の賃金制度を採用し、C社の従業員の勤怠管理や賃金計算事務等の労務管理及び就業場所の決定等もC社が行っていたのであり、Y3会社がこれらの制度の創設や事務等に関与していたとは認められない。
イ なお、組合は、C社には法人格否認の法理が適用されるから、Y3会社には使用者性が認められる旨主張するが、上記アのとおり、C社はY3会社から独立して企業活動を行っていたことに照らしても、C社の法人格が形骸化しているとか、C社が法人格の濫用目的で設立されたなどということはできない。
ウ 以上のとおりであるから、Y3会社のC社への関与は、親会社が子会社に対して行う管理、監督の範囲を超えるものではなく、Y3会社が、本件組合員4名の基本的な労働条件等について、雇用主であるC社と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったということはできない。したがって、Y3会社は、本件組合員4名の労組法上の使用者には当たらない。
(4) 以上のとおり、本件3社はいずれも本件組合員4名の労組法上の使用者には当たらないから、その余の争点について判断するまでもなく、本件3社に係る本件申立てはいずれも理由がない。 |
掲載文献 |
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