概要情報
| 事件番号・通称事件名 |
名古屋高裁令和7年(行コ)第57号
不当労働行為救済命令取消請求控訴事件
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| 控訴人 |
X組合(「組合」)
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| 被控訴人 |
愛知県(処分行政庁 愛知県労働委員会(「愛知県労委」))
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| 被控訴人補助参加人 |
Z会社 |
| 判決年月日 |
令和8年3月18日 |
| 判決区分 |
棄却 |
| 重要度 |
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| 事件概要 |
1 本件は、①令和4年12月8日の団体交渉(「4年12月8日団交」)におけるZ会社及びC1会社の代表取締役並びにC3会社の監査役でもあるB1社長の言動、②組合が令和5年3月1日付けで行った団体交渉申入れ(「5年3月1日付け団交申入れ」)について、B1社長が開催場所を特定の場所に指定したこと等により、当該団交が開催されなかったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
2 愛知県労委は、C1会社及びC3会社に関し、上記1①について、労働組合法(「労組法」)7条2号及び3号、同②について、開催場所を特定の場所に指定し、開催場所の再協議に係る回答を行わなかったことが同条2号に該当する不当労働行為であると判断し、両会社に対しそれぞれ、(ⅰ)団体交渉において、合意形成に向けて誠実に応じなければならないこと、(ⅱ)団体交渉の申入れがあったときは、組合と誠実に協議して開催場所を決定しなければならないこと、(ⅲ)文書交付を命じるとともに、Z会社に対する申立てを棄却した(「本件命令」)。
3 組合は、これを不服として、名古屋地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、組合の請求を棄却した。
4 組合は、これを不服として名古屋高裁に控訴したところ、同高裁は、組合の控訴を棄却した。 |
| 判決主文 |
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
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| 判決の要旨 |
1 争点①(4年12月8日団交に関しZ会社に労組法7条2号及び3号の違反があったか否か)について
⑴ 労組法7条2号について
4年12月8日団交は、組合から令和4年11月1日付けでされた団体交渉の申入れを受けて実施されたものであるが、同申入れは、C1会社及びC3会社のみを相手方として行われたものであり、Z会社は同申入れの相手方となっていなかったことが認められる。
労組法7条2号は、使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由なく拒むことを禁じているが、これは、団体交渉を求める者の主張において使用者に当たるとされる者に対し団体交渉の申入れがあったことを、適用の前提とするものと解される。ところが、本件においては、上記のとおり、組合の主張において使用者に当たるとされるZ会社に対する団体交渉の申入れがあったとは認められないことから、同号の適用の前提を欠くというほかない。
組合は、Z会社には労組法上の使用者性がある旨を主張するが、仮にZ会社が使用者としてその雇用する労働者の代表者と団体交渉をすべき立場にあるというのであれば、Z会社に対して団体交渉の申入れをすべきところ、組合はそれをしていないのであるから、同号の適用の前提を欠くという上記結論が左右されるものではない。
また、組合は、かつては、Z会社に対しても団体交渉の申入れをしていたところ、その後の経過を踏まえて紛争を回避する意図から、Z会社を外して団体交渉の申入れをしたと主張するが、仮に組合にそのような意図があったとしても、Z会社に対して団体交渉の申入れをしていない以上、同号の適用の前提を欠くという上記結論が左右されるものではない。
したがって、4年12月8日団交に関し、Z会社について、同号の不当労働行為があったと認めることはできない。
⑵ 労組法7条3号について
Z会社が組合からの団体交渉の申入れの相手方となっていなかったことは上記⑴のとおりである。加えて、同申入れを受けて実施された4年12月8日団交においてはC1会社及びC3会社の代表取締役を含む役員及び従業員が出席していることに照らしても、B1社長は、同日の団交において、C1会社又はC3会社の代表者又は関係者という立場で出席し、発言していたとみるのが自然であって、Z会社の代表者という立場で出席し、発言していたとみることはできない。
なお、B1社長の発言内容及びC3会社における立場、C3会社における賞与に関する交渉権限の在り様等に照らすと、4年12月8日団交におけるB1社長の発言は、実質においても、C1会社及びC3会社の行為とみるべきであることは、原判決「事実及び理由」の第3の2⑴の2段落目において説示するとおりであるから、これを引用する。
これに対し、組合は、B1社長が、一旦は4年12月8日団交において、Z会社の社長として出席した旨を述べている旨を主張するが、B1社長はその直後に発言を訂正しているのであって、控訴理由に係る組合のその他の主張を併せ考慮しても、B1社長が同日の団体交渉の場でZ会社の代表者として発言していたと認めることはできない。
組合は、Z会社がC1会社及びC3会社に対して全面的に経営決定権を握っている旨主張し、Z会社らの資本関係や従業員の業務が混然としていることをも指摘するが、組合の主張が判断を左右するものでないことは、原判決「事実及び理由」の第3の2⑴の3段落目において説示するとおりであるから、これを引用する。
したがって、Z会社が、4年12月8日団交において、労組法7条3号に掲げる行為をしたと認めることはできない。
2 争点②(5年3月1日付け団交申入れに関しZ会社に労組法7条2号の違反があったか否か)について
5年3月1日付け団交申入れは、C1会社及びC3会社のみを相手方として行われたものであり、Z会社は同申入れの相手方となっていなかったことが認められる。
そうすると、上記1⑴で説示したのと同様に、組合の主張において使用者に当たるとされるZ会社に対する団体交渉の申入れがあったとは認められないことから、労組法7条2号の適用の前提を欠くというほかない。
組合は、Z会社には労組法上の使用者性がある旨を主張するが、上記1⑴で説示したのと同様に、同号の適用の前提を欠くという上記結論が左右されるものではない。
また、組合は、今回も紛争を回避する意図から、Z会社を外して団体交渉の申入れをしたと主張するが、上記1⑴で説示したのと同様に、同号の適用の前提を欠くという上記結論が左右されるものではない。
したがって、5年3月1日付け団交申入れに関し、Z会社に労組法7条2号の違反があったと認めることはできない。
3 以上によれば、本件命令が取り消されるベきものであるということはできない。
なお、組合は、同命令には、Z会社の労組法7条の使用者性を争点に整理しながら同争点について全く判断していない点で著しい行政上の瑕疵がある旨も主張するが、これまでに説示してきたところに照らし、採用の限りでない。
4 結論
組合の請求を棄却した原判決は正当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却する。 |
| その他 |
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