概要情報
| 事件番号・通称事件名 |
東京地裁令和7年(行ウ)第311号
中央コンクリート不当労働行為救済命令取消請求事件 |
| 原告 |
X会社(「会社」)
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| 被告 |
国(処分行政庁 中央労働委員会(「中労委」)
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| 被告補助参加人 |
Z組合(「組合」) |
| 判決年月日 |
令和8年3月11日 |
| 判決区分 |
棄却 |
| 重要度 |
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| 事件概要 |
1 本件は、会社が、組合の組合員A1に対する休職命令の撤回等を議題とする令和4年6月20日付けの団体交渉申入れ(「本件団交申入れ」)に応じなかったことは労組法7条2号の不当労働行為に該当するとして、救済申立て(「本件救済申立て」)があった事案である。
なお、A1は、令和3年8月2日、通勤途中で交通事故に遭い、同日以降、会社において就労していない。会社は、令和4年6月6日、A1に対し、「休職命令通知書」を送付し、休職を命令した。
2 初審大阪府労委は、会社が本件団交申入れに応じなかったことは、労組法7条2号の不当労働行為に該当するとして、団交応諾及び文書交付を命じたところ、会社は、これを不服として、再審査を申し立てた。
3 中労委は、会社の申立てを棄却したところ、会社は、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起した。
4 同地裁は会社の請求を棄却した。 |
| 判決主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用(補助参加によって生じた費用も含む。)は原告の負担とする。
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| 判決要旨 |
1 争点1(会社が団体交渉に応じなかったことについて労組法7条2号の「正当な理由」がないといえるか)について
(1) 会社は、生コンクリート(「生コン」)の製造販売等を主たる業務とし、中小企業等協同組合法に基づき設立されたC1協同組合(「C1協」)に加入していた。
組合は、平成29年12月12日から数日間、セメント輸送等の運賃引上げとC1協の民主化を要求事項に掲げ、複数の生コン製造会社等に対してゼネラル・ストライキ(「本件ゼネスト」)を行った。
C1協は、本件ゼネストを受けて、平成30年1月23日付けで、組合員企業に対し、「必要な交渉等については、当協同組合顧問弁護団の協力を得て、当協同組合として対応致しますので、組合との個別の接触・交渉等は厳にお控えください。なお、決議の趣旨に反した場合には、厳正な対処を行うことといたしますので、ご留意下さい。」などとする指示をした(「本件指示」)。
会社は、本件団交申入れに応じなかった正当な理由として、本件団交申入れはA1の復職よりも組合の拠点確保を目的とするものであって、本件指示等のC1協の方針等から離れた独自の対応はできないため、本件団交申入れの核心的要求である本件休職命令の撤回について譲歩の余地がないことを主張する。
(2) しかし、C1協が、本件ゼネストを受けて本件指示を行ったという経緯を踏まえれば、本件指示が、本件ゼネスト及び今後の対応に関する問題のみならず、本件ゼネストと全く関係なく組合員企業と従業員との間の個別の労使問題まで一律に団体交渉等を禁止する趣旨であると直ちに解することはできない。
そして、本件団交申入れの要求事項のうち、A1に対する社長による暴言、パワハラ等について協議し、謝罪すること、A1の労災終了後の職場復帰に伴う労働条件問題について協議し、労災前と同じ就労体系にすること、本件休職命令を撤回し、協議の中で説明すること等は、会社と従業員のA1との間の個別の労使問題であって、本件ゼネストとは無関係のものである。
そうすると、本件団交申入れに応じることが本件指示やC1協の方針等に反するものであるとは認められない。さらに、会社は、譲歩の余地がないと考えたとしても、団体交渉の場で自己の見解を明らかにし、組合に対し説明を尽くすべきである。したがって、本件団交申入れに応じないことについて正当な理由があるとは認められない。
⑶ 会社は、本件指示の対象を本件ゼネストとの関連性を有する議題に限定すべきでないと主張する。
しかし、本件指示においては、「必要な交渉等については、当協同組合顧問弁護団の協力を得て、当協同組合として対応」する旨言及されているところ、会社がC1協に対し本件団交申入れについて問合せや対応の依頼をしたといった事実は見受けられない。
したがって、仮に本件指示が本件ゼネストとの関連性を有する議題に限定されず、個別の労使問題の団体交渉等も禁止する趣旨であったとしても、会社による本件団交申入れの対応は、本件指示に沿った行動であったとはいえないから、やはり正当な理由があるとはいえない。
⑷ また、会社は、A1が退職扱いの撤回を求めていないことや、本件救済申立ての救済事項に休職命令の撤回が含まれていないこと、他社に就職していること等から、A1に復職の意思はなく、本件団交申入れの目的は組合の拠点確保にあると主張する。
しかし、退職の効力を争う一方で生活の維持のために他社に就職することは何ら不自然ではないから、当該就職の事実から退職の効力を争っていないとは認められない。
さらに、A1は、会社から休職命令を受けた令和4年6月6日から2週間後の同月20日、組合等を通じ、職場復帰に伴う労働条件問題の協議や本件休職命令の撤回等を要求事項に掲げて本件団交申入れをし、その後も職場復帰のための診断書の取得を試みるとともに従来どおり運転の業務を行いたい旨を表明し、同年7月8日付けで会社から退職と扱う旨の通知を受けた3日後には、組合が大阪府労委に対するあっせん申請も行い、同申請を取り下げた約2か月後に本件救済申立てを行い、会社と組合との間において、本件団交申入れを巡り、現在まで係争状態にあることが認められる。
そうすると、A1の加入した組合は、A1の意を受け、会社による退職扱いの前提となる本件休職命令の撤回を求め、団体交渉の申入れや本件救済申立て等を行ってきたものといえるから、A1がこれまでに退職扱い自体の撤回を求めておらず、本件救済申立てにおいて休職命令の撤回を求めていないとしても、そのことから直ちにA1が退職の効力を争う意思を有していないとは認められない。
したがって、上記会社の主張は、A1に復職の意思はないとする前提を欠き、本件団交申入れの目的が組合の拠点確保にあることを認めるに足りる証拠はないから、採用できない。
⑸ したがって、会社が本件団交申入れに応じなかったことについて、労組法7条2号の「正当な理由」があるとは認められない。
2 争点2(会社に対し団体交渉の応諾を命じるまでの救済の必要性があるか)について
会社は、A1が他社に就職していること等を根拠として、退職の効力を争っていないことを前提に、組合との団体交渉に応じる旨の救済命令の必要性がないと主張する。
しかし、A1が退職の効力を争う意思を有していないとは認められないことは前記1⑷のとおりである。また、本件団交申入れの要求事項には、A1の労災終了後の職場復帰に伴う労働条件問題についての協議や本件休職命令の撤回等以外の義務的団交事項も含まれている。
そして、本件団交申入れの要求事項について、会社と組合との間で交渉は行われておらず、団体交渉を行う必要性は失われていないから、会社に対して団体交渉の応諾を命じる必要性が認められる。
3 結論
よって、本件命令は適法というべきであり、会社の請求は理由がないから、これを棄却する。 |
| その他 |
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