概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委令和6年(不再)第8号
中央コンクリート不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
Y会社(「会社」) |
再審査被申立人 |
X組合(「組合」) |
命令年月日 |
令和7年5月21日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、会社が、組合の組合員Aに対する休職命令の撤回等を議題とする令和4年6月20日付けの団体交渉申入れ(「本件団交申入れ」)に応じなかったことは労働組合法(「労組法」)第7条第2号の不当労働行為に該当するとして、大阪府労委に救済申立てがあった事案である。
なお、会社は、令和4年6月6日、組合員Aに対し、「休職命令通知書」を送付し、休職を命令した(「4.6.6休職命令」)。
2 初審大阪府労委は、会社が本件団交申入れに応じなかったことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するとして、団交応諾及び文書交付を命じたところ、会社は、これを不服として、再審査を申し立てた。 |
命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
○ 争点(会社が本件団交申入れに応じなかったことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。)について
ア 本件団交申入れにおいて組合が申し入れた団交事項は、組合員の労働条件その他の待遇に関する事項又は組合と会社との間の団体的労使関係の運営に関する事項であって、会社が処分可能なものであるから、義務的団交事項に当たる。
イ そこで、会社が本件団交申入れに応じなかったことに正当な理由があるか否かについて検討する。
(ア) この点について、会社は、C協同組合からの本件指示に従って本件団交申入れに応じなかったものであるが、組合との交渉窓口をC協同組合に一本化するとのC協同組合の方針には合理性があり、会社はそれに従わざるを得ない立場にあるから、会社が本件指示に従って本件団交申入れに応じなかったことには正当な理由がある旨主張する。
a しかしながら、上記アのとおり、本件団交申入れに係る議題は義務的団交事項であるから、仮に本件指示に関して会社の主張するような事情があったとしても、会社の団交応諾義務が免除されるものではないから、C協同組合から本件指示を受けていたことは、会社が本件団交申入れに応じないことの正当な理由となるものではない。
b 上記の点をおくとしても、会社が本件団交申入れの核心的要求と考えていたという組合員Aに対する休職命令の撤回に関する議題は、組合員Aが通勤途上に交通事故に遭い、会社で就労することができなくなったことを理由に発せられた4.6.6休職命令に関するものであり、しかも、当時、組合員Aは組合を脱退していた。そうすると、上記議題は、本件ゼネストとは全く関係のない、会社と組合員Aとの個別の労使問題にすぎないところ、本件指示が本件ゼネストを契機として発せられたことや本件指示に係る文書の内容に照らすと、本件指示が上記のような本件ゼネストとは全く関係のない個別の労使問題を議題とする団交まで禁止しているとは解されない。
また、会社は、本件団交申入れは、組合員Aの復職自体が目的というよりも、C協同組合との対立抗争のための組合の拠点確保が目的であると考えざるを得ないから、C協同組合の方針等から離れて独自に対応することはリスクが大きいとも主張する。しかしながら、本件団交申入れの目的がC協同組合との対立抗争のための組合の拠点確保であることを認めるに足りる証拠はない上、上記のとおり、組合員Aに対する休職命令の撤回に関する団交に応じることが本件指示によって禁止されていたということはできないから、会社がC協同組合の方針等から離れて独自に対応することのリスクが大きいなどとして本件団交申入れを拒否することは許されないというべきである。
c これらの事情に加え、会社が組合に対して本件団交申入れに応じない理由を説明した形跡がないことをも考慮すれば、いずれにせよ、会社が本件指示に従って本件団交申入れに応じなかったことは、正当な理由に基づく団交の拒否とはならないというべきであるから、会社の上記主張を採用することはできない。
(イ) 会社は、組合員Aに対する休職命令の撤回に関する議題について、会社としては上記休職命令を撤回することは困難であり、仮に団交を開催しても譲歩・合意の余地はないから、団交を行うこと自体無意味であると考えた旨主張する。
しかるに、組合員Aに対する4.6.6休職命令及びこれに基づく同組合員の退職に係る手続は会社の就業規則に則って行われたものと認められる。しかしながら、会社が上記休職命令を撤回することは困難であり、団交を開催しても上記休職命令の撤回に関する議題について譲歩の余地はなく、合意の成立する見込みがないと会社が考えたとしても、会社には、団交の場で、組合に対し自らの見解を明らかにし、これに関する組合からの質問があれば回答するなどして協議を行うべき義務があると解するのが相当である。
なお、会社は、団交において組合員Aに対する休職命令について譲歩の余地がないことを説明すること自体、会社にとってリスクがある旨主張するが、かかる事情が本件団交申入れを拒む正当な理由にならないことは、上記(ア)のとおりである。
以上のとおり、組合員Aに対する4.6.6休職命令の撤回に関する議題について、団交を開催しても会社に譲歩の余地がなく、合意の成立する見込みがないと会社が考えたことは、本件団交申入れを拒否する正当な理由とはならないというべきであるから、会社の上記主張を採用することはできない。
ウ したがって、会社が本件団交申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団交拒否であり、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。 |
掲載文献 |
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