労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委令和5年(不)第16号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y会社(会社) 
命令年月日  令和6年2月9日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、組合が、会社に対し、組合員A2に対する休職命令通知等についての団体交渉を申し入れたところ、会社が回答せず、団体交渉にも応じないことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
 大阪府労働委員会は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると判断し、会社に対し、団体交渉応諾及び文書交付を命じた。 
命令主文  1 会社は、組合が令和4年6月20日付けで申し入れた団体交渉に応じなければならない。

2 会社は、組合に対し、下記の文書を速やかに交付しなければならない。
 年 月 日
X組合
 執行委員長 A1様
Y会社        
代表取締役 B
 当社が、貴組合から令和4年6月20日付けで申入れのあった団体交渉に応じなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 
判断の要旨  ○争点
 令和4年6月20日付けの団体交渉申入れ(以下「本件団体交渉申入れ」)に対する会社の対応は、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか

1 本件団体交渉申入れに対し、本件申立て〔令和5年3月29日〕に至るまでの間、団体交渉が開催されていないことについて、当事者間で争いはない。

2 そこで、まず、本件団体交渉申入れにおける要求事項が義務的団体交渉事項に当たるかについてみる。
 団体交渉申入書による要求事項は、①労働関係諸法律の遵守、②分会事務所と掲示板の貸与など組合活動に必要な会社施設の利用、③組合員A2に対する社長による暴言、パワハラ等についての組合との協議や謝罪、④A2が入社した時点の組合との協定に基づく一時金の支払、⑤A2の労災終了後の職場復帰に伴う労働条件問題についての組合との協議等、⑥就業時間の時間帯、⑦令和4年6月6日のA2に対する休職命令通知書〔注〕を撤回した上での協議の中での説明、等であったことが認められる。
 これらのことからすると、本件団体交渉申入れの要求事項は、組合員の労働条件に関する事項や団体的労使関係の運営に関する事項を含んでいるから、いずれも使用者に処分可能なものであるので、義務的団体交渉事項に当たる。
 そうすると、会社が正当な理由なく、本件団体交渉申入れに応じなければ、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為となる。

〔注〕令和3年8月2日、A2は通勤途上の交通事故にあい、同日以降、就労していない。
 なお、休職命令通知書には、「就業規則の規定に基づき、30日間の休職を命じる」旨のほか、「休職期間満了までに休職事由が消滅しない場合は、就業規則の規定により、休職期間満了の令和4年7月6日をもって一般退職となる」旨などが記載されていた。

3 次に、会社が本件団体交渉申入れに応じないことに正当な理由があるかについてみる。

(1)会社は、「本件団体交渉申入れの核心的事項である令和4年6月6日のA2に対する休職命令(以下「4.6.6休職命令」)は、A2の組合加入前に発令されており、事後的に組合に加入したと言われても、休職命令及びこれに基づく退職扱いの有効性には疑いはなく、譲歩の余地はない」旨主張する。
 しかし、本件団体交渉申入れの要求事項は義務的団体交渉事項であるから、A2が組合に加入した旨の通知や本件団体交渉申入れが4.6.6休職命令の後に行われたものだとしても、本件団体交渉申入れの有効性には何ら問題はない。また、たとえ、会社が、4.6.6休職命令及びこれに基づく退職扱いの有効性に疑いはなく、譲歩の余地はないと考えたとしても、会社は、団体交渉の場で、組合に対し自らの見解を明らかにし、これに関する組合からの質問があれば回答するなどして協議を行うべき立場にあるといえる。
 したがって、会社の主張は、本件団体交渉申入れに応じない正当な理由には当たらない。

(2)また、会社は、「C協同組合から加入各個社に対して、組合との個別の接触・交渉等を控えるよう指示がなされているところ、本件は、唯ーの分会員であるA2が組合に加入する以前に発令された4.6.6休職命令について、撤回を求めるものであり、会社としては、このようなケースで個社の判断により休職命令を撤回することは事実上困難というほかなく、仮に団体交渉を開催しても譲歩・合意の余地はないことが明らかである」旨主張する。
 しかし、仮に、C協同組合から、組合との個別の接触・交渉等を控えるよう指示がなされていたとしても、同指示に従ったからといって不当労働行為責任が免ぜられるわけではない。加えて、会社が団体交渉を開催しても譲歩・合意の余地はないと考えたとしても、会社は団体交渉の場で協議を行うべき立場にある。
 したがって、会社の主張は、本件団体交渉申入れに応じない正当な理由には当たらない。

4 なお、会社は、4.6.6休職命令は、A2の労働組合加入前に発令されたもので、4.6.6休職命令等が不当労働行為に該当し無効となる余地はない旨も主張するが、本件団体交渉申入れの要求事項の一つである4.6.6休職命令が不当労働行為に当たるか否かが、上記判断を左右するものではない。

5 以上のとおりであるから、本件団体交渉申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団体交渉拒否であり、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。 

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