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概要情報
事件番号・通称事件名  東京地裁令和4年(行ウ)第443号
ユナイテッド・エアーラインズ再審査命令取消請求事件 
原告  X1組合、X2組合(併せて「組合」) 
被告  国(処分行政庁 中央労働委員会)  
補助参加人  Z会社(「会社」) 
判決年月日  令和6年8月7日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、組合員の解雇の撤回や復職についての団体交渉を、組合員の使用者ではないこと、これ以上の団交で合意に至る可能性がないことなどを理由として拒否したことが労組法7条2号の不当労働行為であるとして、組合より救済申立てがあった事案である。

2 初審東京都労委は、本件団交拒否は不当労働行為には当たらないとして、組合の救済申立てを棄却した。

3 組合が、これを不服として再審査を申し立てたところ、中労委は棄却した。

4 組合は、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は組合の請求を棄却した。 
判決主文  1 原告らの請求をいずれも棄却する。

2 訴訟費用は、補助参加によって生じた費用を含め、原告らの負担とする。
 
判決の要旨  1 本件団交申し入れにおける交渉事項(以下「本件交渉事項」という。)に関して合意に至る可能性がないとして団交申し入れに応じなかった会社の対応は、正当な理由のある団交拒否といえるか否かについて

(1) 組合は、平成29年4月、会社に対し、平成28年2~4月に5回にわたり行われたC1会社(以下「C1」とするが、平成29年4月に会社はC1を吸収合併した。)との団交(以下「本件C1団交」という。)終了後の平成28年5月にC1に解雇された組合員の復職を交渉事項とする本件団交申入れをした。組合が申入れの趣旨について客室乗務員(以下「FA」という。)としての復職を希望するものと会社に説明したことや、会社が、組合による上記説明を受けて、組合に対し、本件団交申入れには応じない旨のほか、FAとして復職する以外の解決策について話合いができるのであれば団交に応じる旨通知したものの、その後も、組合は、本件団交申入書と同じ文面の団交申入書により、再度、会社に団交申入れをしたにとどまり、FAとして復職する以外の解決策の提示等は何らしていないことからすれば、本件団交申入れは、本件C1団交で行き詰まりとなったため交渉が打ち切られた事項である、C1の成田ベースの閉鎖に伴うFAの雇用等につき、組合において新たな解決策ないし妥協案を示さないまま、飽くまでFAとしての雇用継続ないし復職を求めて交渉を再開するよう会社に要求するものと認めるのが相当といえる。
 そうすると、会社が本件団交申入れに応じて本件交渉事項につき改めて団交しても、組合と会社が合意に至る可能性はなかったものと認められるから、会社において本件団交申入れによる交渉再開に応じる義務があるものとは認められない。
 したがって、本件交渉事項に関して合意に至る可能性はないとして本件団交申入れに応じなかった会社の対応は、正当な理由のある団交拒否と認めるのが相当である。
(2) 組合は、本件C1団交で交渉が行き詰まりとなったのは、専らC1の不誠実な交渉態度に起因するものであるから、本件C1団交の経過を踏まえても、本件交渉事項について合意に至る可能性は否定されないなどと主張する。
 しかしながら、本件C1団交における組合とC1との交渉経過のほか、C1の組合に対する個別の団交における説明内容等からすれば、本件C1団交におけるC1の交渉態度に不誠実な点は見当たらず、C1が交渉を打ち切った時期が不相当であったとか、組合に対する説明や資料の提示が不十分だったとは認められない。
 したがって、組合の上記主張は理由がなく、本件C1団交におけるC1の交渉態度を理由に、本件交渉事項に関して合意に至る可能性が肯定されることになるものとは解されない。
(3) また組合は、本件C1団交における交渉は成田ベースのFAを解雇すべきか否かに関する交渉であったのに対し、組合が本件団交申入れによって求めたのは解雇されたFAの復職に関する交渉であるから、本件C1団交と本件団交申入れによる団交は局面を異にするものである旨や、平成29年4月に会社とC1が合併したことにより本件C1団交時点と本件団交申入れ時点では状況も異なっていた旨を指摘し、本件C1団交の経過によって、本件交渉事項に関して合意に至る可能性が否定されるものではないなどと主張する。
 しかしながら、本件C1団交における組合の要求事項と本件団交申入れにおける組合の要求事項が形式上は異なったとしても、その実質は、いずれも、C1の成田ベースのFAについてFAとしての雇用継続を求めるものと認められるから、局面を異にするものであるなどと解することはできない。また、組合は、本件団交申入れの目的や趣旨について、本件解雇に合理的な理由や目的がないことを訴えて会社に本件解雇を撤回させるとか、FAとしての復職を希望するなどと会社に説明し、新たな解決策ないし妥協案を示すこともなく、事情の変更があったことを示してもいないことからすれば、本件C1団交の経過を踏まえると、会社とC1の合併等の事情が生じたとしても、これが、本件C1団交における組合の要求事項と実質的には同一である本件交渉事項について交渉の進展が期待できる事情の変化等であるとは解し難く、かかる事情の変化を理由に会社に本件団交申入れに応じる義務があったと認めることはできない。
 したがって、組合の上記主張は理由がなく、前記⑴のとおり、本件C1団交の経過をもって、本件交渉事項に関して合意に至る可能性はなかったものと認めることは相当といえる。

2 組合のその余の主張について

⑴ 組合は、会社は本件団交拒否の理由として、本件交渉事項に関して合意に至る可能性はないこと(理由②)のほか、会社は解雇された組合員の使用者ではないこと(理由①)や、組合は会社のFAの代表ではないこと(理由③)も挙げるところ、理由①及び③がいずれも団交を拒否する正当な理由にならないことは明らかであり、かかる理由をもって本件団交申入れを拒否すること自体が不当な団交拒否として不当労働行為に当たる旨指摘し、仮に本件交渉事項に関して合意に至ることが困難であったと認められるとしても、これを理由に中労委において誠実交渉命令を発しないことは、救済命令制度の目的に反し許されないから、中労委による本件命令は取り消されるべきであるなどと主張する。

⑵ しかしながら、本件交渉事項に関して合意に至る可能性はないとして本件団交申入れに応じなかった会社の対応が正当な理由のある団交拒否と認められることは、前記1のとおりであるところ、会社が本件団交申入れに応じない理由として組合に示した各事情の中に労組法7条2号所定の正当な理由に当たらないものも含まれていたとしても、このことにより、上記判断が覆され、本件団交拒否が正当な理由のない団交拒否として不当労働行為に当たると結論づけられることとなる理由はおよそ見当たらない。

(3) したがって、組合の上記主張は理由がなく、前記1の結論が覆されるものではない。

3 小括
 以上のとおり、本件交渉事項に関して合意に至る可能性はないとして本件団交申入れに応じないとした会社の対応は、正当な理由のある団交拒否と認められるから、労組法7条2号の不当労働行為には当たらない。
4 結論
 したがって、本件団交拒否が不当労働行為に当たらないとした中労委の本件命令は適法であり、組合の請求はいずれも理由がないから、これを棄却する。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成29年(不)第32号 棄却 令和元年5月4日
中労委令和元年(不再)第31号 棄却 令和4年3月2日
 
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