概要情報
事件番号・通称事件名 |
大阪高裁令和5年(行コ)第117号
不当労働行為救済命令取消請求控訴事件 |
控訴人 |
兵庫県(「県」) |
被控訴人 |
大阪府(代表者兼処分行政庁 大阪府労働委員会) |
補助参加人 |
Z1組合、Z2支部(「組合ら」) |
判決年月日 |
令和6年3月28日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件については、組合らが、県病院局長及び県立B病院長に対し、地方公務員法の改正により令和2年4月から会計年度任用職員制度が導入されることによる非常勤職員等の労働条件の変更に関して、非常勤職員の任用の在り方の変更や条例化の際には団体交渉を行うこと、現行の賃金や勤務条件の切下げを行わないこと、制度切替えによる雇止めを行わないこと、正規職員との均等待遇を行うこと等、看護補助職員の令和2年4月以降の勤務条件に関する要望(以下「本件要求事項」という。)を記載した要求書を提出し、団体交渉を行うことを要求した。
しかし、県病院局長及びB病院長らが、①職員に対する説明会において組合らとの協議で交付した書面以上の内容が記載された資料により説明を行ったこと、②令和元年9月4日の協議において、交渉ではなく説明の場であるとして対応し、組合らと誠実に協議を行わなかったこと、③その後、令和元年10月1日以降、本件要求事項を協議事項とする団体交渉を開始しなかったこと、④本件要求事項に関して、別組合とは団体交渉で合意するなどしたことがそれぞれ不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案である。
2 大阪府労委は、B病院に対する申立てに関し、同病院は不当労働行為命令の名宛人たる法律上独立した権利義務の帰属主体と認めることはできないとして却下した上で、県に対する申立てに関し、②及び③について労組法7条2号に該当する不当労働行為であると判断し、県に対し、文書の速やかな交付を命じ、その余の申立てを棄却した。
3 県は、これを不服として、大阪地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、県の請求を棄却した。
4 県は、これを不服として、大阪高裁に控訴したところ、同高裁は、県の控訴を棄却した。 |
判決主文 |
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用(各補助参加によって生じた費用を含む。)は、控訴人の負担とする。 |
判決の要旨 |
1 当裁判所も、県の請求は理由がないものと判断する。その理由は、次項のとおり当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほか、原判決「事実及び理由」欄の第3の1項から3項までのとおりであるから、これを引用する。
2 当審における県の主張に対する判断
⑴ 県は、①本件要求事項は義務的団体交渉事項には該当しない、②9月4日協議における県の対応が正当な理由のない団体交渉拒否に当たるとはいえない、すなわち、組合らが県の雇用する労働者の代表であるとはいえないから、9月4日協議は労働組合法上の団体交渉とはいえず、県には誠実交渉義務違反はない、③令和元年10月1日以降の県の対応が正当な理由のない団体交渉拒否であるとはいえない、すなわち、県が最終決定前の段階で検討状況を具体的に説明することは困難であるとともに、一定の方向性を示すような説明も不可能であったことから、2か月以上にわたって「いろいろ調査検討中」との説明をすることしかできなかったもので、そのような状況下でも、協議日程の一定の目安を示すなどして、可能な範囲の対応をしていたこと、9月4日協議及び9月30日協議において、参加者の発言が組合員の発言なのかどうかも県側は把握できておらず、一定の人数制限を設けることでこうした状況を回避して組合らとの交渉を正常化したいとの県の対応には必要性及び合理性があったことから、令和元年10月1日以降、県が団体交渉を拒否したとはいえない、と主張する。
⑵ そこで判断すると、①については、原判決を引用して認定説示したとおりであり、県も本件病院の看護補助職員も、特別職非常勤職員から会計年度任用職員に制度が移行しても実態は変わらず雇用が継続することを前提に議論していたことは明らかであり、本件要求事項が義務的団交事項に当たるとみるのが相当である。
②については、団体交渉を求める組合が法適合組合であること(使用者が雇用する労働者の代表者であること)について、使用者には法適合性や従業員の加入を裏付ける資料の提出を当該組合に対して要求する権利はなく、当該組合においても上記資料を使用者に示さないことで団体交渉を拒否されれば労働委員会による判定と救済命令を求めるしかないが、使用者が組合員の人数や氏名を把握していない場合において、組合員の人数、氏名が明らかでないことを問題にしたときは、当該組合も団体交渉の遂行に必要な限りでこれらの事項を明らかにすることを要することになると解される。ところが、本件では、本件分会が法適合組合であることについて、県は交渉段階では問題にしていなかった上、組合らが本件救済命令を求めるに当たって府労委による資格審査による法適合組合との認定を受けたことについては原判決を引用して認定したとおりであり、その認定が不合理であるとはいえない。
③については、原判決を引用して認定説示したとおりであり、県側が組合らに対して何らの説明もすることができなかったとは考えられず、人数調整についても本件病院側から15名の参加があった協議でも交渉の場が紛糾したような事情は見当たらないのであって、県が主張する必要性及び相当性を認めるに足りない。
したがって、県の主張はいずれも理由がない。
3 よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却する。 |
その他 |
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