労働委員会裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京高裁令和4年(行コ)第184号
セブンイレブン-ジャパン再審査命令取消請求事件
 
控訴人  Xユニオン(「組合」) 
被控訴人  国(処分行政庁 中央労働委員会) 
被控訴人参加人  株式会社Z(「会社」) 
判決年月日  令和4年12月21日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社とフランチャイズ契約を締結する加盟者らが加入する組合が、「団体交渉のルール作り他」を議題とする団体交渉を申し入れたところ、会社がこれに応じなかったことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審岡山県労委は、会社に対し、団体交渉を行うこと等を命じた。
3 会社は、これを不服として、再審査を申し立てたところ、中労委は、X組合加盟者は、労働組合法上の労働者には当たらないとして、初審命令を取消し、本件救済申立てを棄却した。
4 組合は、これを不服として、再審査命令の取消しを求めて東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、組合の請求を棄却した。
5 組合は、これを不服として、原判決の取消し等を求めて東京高裁に控訴したところ、同高裁は、組合の控訴を棄却した。
 
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、控訴人の負担とする。
 
判決の要旨   当裁判所も、組合の請求は理由がないと判断する。その理由は、次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」に説示するとおりであるから、これを引用する(注:ここでは、本判決における補正がない部分も反映したものを掲載)。

1 判断枠組み
 労組法の適用を受ける労働者は、労働契約によって労務を供給する者に加え、その他の契約によって労務を供給して収入を得る者で、使用者との交渉上の対等性を確保するために労組法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められる者をも含むと解するのが相当である。
 そして、加盟者が労組法上の労働者に該当するか否かを判断するに当たっては、①加盟者が相手方の事業遂行に不可欠ないし枢要な労働力として組織に組み入れられているか、②契約の締結の態様から、加盟者の労働条件や労務の内容を相手方が一方的・定型的に決定しているか、③加盟者の報酬が労務供給に対する対価又はそれに類するものとしての性格を有するか、④加盟者が、相手方からの個々の業務の依頼に対して、基本的に応ずべき関係があるか、⑤加盟者が、一定の時間的、場所的拘束を受け、会社の指揮命令の下において労務を提供していたか、⑥加盟者が独立した事業者としての実態を備えているかといった事情を総合的に考慮して、使用者との交渉上の対等性を確保するために労組法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められるかという観点から判断するのが相当である。

2 事業組織への組入れ、業務の依頼に応ずべき関係
(1)本件フランチャイズ契約において、①会社は、加盟者に対し、Z・システムによる加盟店を経営することを許諾し、本部として、継続的に経営の指導や技術援助、各種サービスを行うことを約し、他方、加盟者は、会社の許諾の下に加盟店の経営を行い、これについて会社に一定の対価を支払うことを約束した旨のほか、②会社と加盟者はフランチャイズ関係においては、ともに独立した事業者であり、加盟店の経営は、加盟者の独自の責任と手腕により行われ、その判断で必要な従業員を雇用する等、使用主として全ての権利を有し、義務を負う旨などが規定されているから、本件フランチャイズ契約上、加盟者は独立した事業者として位置付けられており、会社の事業の遂行に不可欠な労働力として会社の事業組織に組み入れられていないことは明らかである。

(2) 実態としても、加盟者は、会社と独立した立場で、従業員の採否・労働条件等を決定し、他人労働力を使用するとともに、商品の販売・サービスの提供について独立の事業者と評価するに相応しい裁量を有し、店舗の立地・契約種別・共同フランチャイジー・複数出店の選択についても自ら判断・決定している。さらに、加盟者は、自身が担当する店舗運営業務の内容や程度についても、加盟者自身の判断により決定している。

(3) したがって、加盟者は、会社から個別具体的な労務の提供を依頼され、事実上これに応じなければならないという関係に立つものでもなく、会社の事業の遂行に不可欠な労働力として組織に組み入れられていると認めることもできない。

3 報酬の労務対価性
(1)加盟者は、オープンアカウントを通じて会社から月次引出金等の支払を受けるところ、これは、加盟者が加盟店における商品の販売やサービスの提供の対価として顧客から得た収益を獲得しているものであって、加盟者が本件フランチャイズ契約上の何らかの義務の履行をしたことに対する報酬であると評価することはできない。

(2)なお、仮に加盟者が加盟店において店舗運営業務に従事していることをもって、会社に対する労務の提供を行っているとみるとしても、①月次引出金等の金額は、加盟者本人の加盟店における店舗運営業務の多寡やその成果のみに連動するものではなく、会社に対する労務の提供とはおよそ評価し難い経営判断業務や、他の従業員による労務を含む、総体としての加盟店の運営の結果を反映したものであること、②法人を共同フランチャイジーとする場合、加盟者は、会社からではなく、当該法人から報酬の支払を受けることからすれば、月次引出金等について、加盟者が労務の提供をしたことに対し、会社から支払われる対価であると評価することもできない。

(3)したがって、報酬の労務対価性を認めることはできない。

4 契約内容の一方的・定型的決定
 本件フランチャイズ契約は、会社が統一的な内容を定型化したものであり、加盟希望者がその内容を決定することはできず、会社との個別交渉や加盟者の個別事情等により契約内容が変更されることもないから、一方的・定型的に定められたものということができる。
 しかしながら、本件フランチャイズ契約は、加盟店の事業活動について規定したものであり、その経営の在り方に一定の制約を課すものということはできるものの、加盟者が、加盟店の経営を、自己の労働力と他人の労働力のそれぞれを、どのような割合で、どのような態様で供給することによって行うかや、加盟者自身の具体的な労務提供の内容については、加盟者の判断に委ねられている。
 したがって、本件フランチャイズ契約において、加盟者の労務提供の在り方が一方的・定型的に定められているものと評価することはできない。

5 時間的場所的拘束、指揮命令関係
(1)時間的拘束
 加盟者は、営業日・営業時間の選択という点において、加盟店の事業活動に一定の制約を受けているということができる。
 しかしながら、前記2、4と同様、かかる制約は、加盟店の事業活動に関するものであって、加盟者が、自身が担当する店舗運営業務の内容や程度について、自身の判断により決定している以上、加盟店の営業日・営業時間に制約があるからといって、加盟者の労務提供が時間的に拘束されているとはいえない。

(2)場所的拘束
 加盟者は、加盟店の立地を自ら選択しているから、加盟者が何らかの場所的拘束を受けていると評価することはできない。

(3)指揮命令関係
 加盟者は、自身が担当する店舗運営業務の内容や程度について、加盟者自身の判断により決定しているのであって、会社の指揮命令を受けて労務提供をしているものではない。

6 小括
 以上のとおり、加盟者は、会社から個別具体的な労務の提供の依頼に事実上応じなければならない関係にはなく、会社の事業の遂行に不可欠な労働力として組織に組み入れられているともいえない。また、加盟者は、会社から労務提供の対価としての金員の支払を受けているとはいえず、労務提供の在り方が一方的・定型的に定められているものでもなく、時間的場所的拘束の下、会社の指揮命令を受けて労務を提供しているともいえない。
 そうすると、加盟者が独立した事業者としての実態を備えているかについて検討するまでもなく、会社との本件フランチャイズ契約を締結する加盟者は、会社との交渉上の対等性を確保するために労組法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められるかという観点からみて、労組法上の労働者に該当しないというべきである。

7 独立した事業者としての実態
(1)加盟者は、店舗の立地・契約種別・共同フランチャイジーの採否・複数出店の有無について自ら決定した上で、加盟店の経営による損益の帰属主体として、会社とは独立した立場で平均して20ないし30名もの従業員を雇用して、加盟店を経営している。また、加盟者は、商品の提供・サービスの提供についても、一定の制約を受けているものの、独立した事業者と評価するに相応しい裁量を有している。
 したがって、加盟者は、独立した事業者としての実態を備えているというべきである。

(2)加盟者は、営業日・営業時間の選択という点において、加盟店の経営に一定の制約を受けているほか、看板や標章を含め、Z・イメージに基づく統一的な内外装を備えており、従業員もZの商標が表示された加盟店共通のユニフォームを着用することが義務付けられているものの、これらの制約は、独立した事業者としての実態を失わせるほどに重大な制約であると評価することはできない。

8 まとめ
 以上のとおり、会社と本件フランチャイズ契約を締結する加盟者は、会社との交渉上の対等性を確保するために労組法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められるかという観点からみて、労組法上の労働者に当たるとは認められない。
 そして、いずれも店舗の収益状況等に応じて、自ら判断して多数のアルバイト従業員を恒常的に雇用して店舗運営業務を割り当てていることなどに鑑みると、判断枠組み及び組合の主張についての認定・判断は、組合の組合員にもあてはまるものと認められる。したがって、会社と本件フランチャイズ契約を締結した加盟者である組合の組合員は、労組法上の労働者に当たるとは認められない。

9 結論
 以上によれば、組合の請求は理由がないから棄却すべきであり、これと同旨の原判決は相当である。
 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
セブン-イレブン・ジャパン 全部救済 平成26年3月13日
中労委平成26年(不再)第21号 取消、棄却 平成31年2月6日
東京地裁令和元年(行ウ)第460号 棄却 令和4年6月6日
最高裁令和5年(行ヒ)第115号 上告不受理 令和5年7月12日
 
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