労働委員会裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪地裁平成31年(行ウ)第28号
不当労働行為救済命令取消請求事件 
原告  大阪市(市) 
被告  大阪府(同代表者兼処分行政庁)大阪府労働委員会 
被告補助参加人  Z労働組合(「組合」) 
判決年月日  令和3年7月29日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、組合が市に対し、組合事務所の供与等を求めて団体交渉を申し入れたところ、市が、管理運営事項に当たる等として、これに応じなかったことが不当労働行為であるとして救済申立てがあった事件で、大阪府労働委員会は、市に対し、団交応諾及び文書手交を命じた。
 市は、これを不服として、大阪地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、市の請求を棄却した。 
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は、原告の負担とする。 
判決の要旨  1 争点1(組合に本件救済命令の申立人適格が認められるか)について
 地公法適用職員と労組法適用職員の双方によって構成されるいわゆる混合組合については、その構成員に対し適用される法律の区別に従い、地公法上の職員団体と労組法上の労働組合の複合的な性格を有しており、労組法適用職員に関する事項に関しては労組法上の労働組合に該当するものと解することが相当であり、その限りにおいて、混合組合は不当労働行為救済命令の申立人適格を有する。
 本件は、組合事務所スペースの供与等に関する団体交渉申入れに係るものであるが、組合事務所は、労働組合活動の基盤となるものであり、組合に本件救済命令の申立人適格が認められる。
2 争点2(団体交渉拒否の有無)及び争点3(団交交渉拒否に関する正当な理由の有無)について
 市は、本件申入れがされて以降、組合関係者と本件申入れに関してやり取りないし面談をする機会があったものの、管理運営事項そのものではなく、団体交渉の対象となし得る可能性のある事項を具体的に挙げて確認するなどの方法を取ることなく面談が終了した。その後、本件回答書において、本件申入事項に関し、管理運営事項に該当しない事項が含まれているか否かについて確認することが必要となる等としたまま、それ以降、交渉スケジュール等には何ら言及せず、本件申入れに係る団体交渉に応じていない。
 市の上記対応は、管理運営事項に該当せず、団体交渉に応ずべき事項につき具体的に確認すべき立場に市があるにも関わらず、その点について十分に確認することのないまま、団体交渉に応じないものというほかなく、正当な理由のない団体交渉の拒否に当たる。
 したがって、原告は正当な理由なく、団体交渉を拒否したものと認められ、労組法7条2号に該当する事由がある。
3 争点4(支配介入の有無)について
 本件申入事項には、管理運営事項そのものではなく、団体交渉の対象となし得る可能性のある事項が含まれていると解されること、市の対応は、誠実な交渉態度といえないのみならず、客観的にみて労働組合を軽視し、これを弱体化させる行為といい得ること等本件に現れた諸事情を総合勘案すると、市の上記対応は、労組法7条3号にいう労働組合を運営することを支配し、若しくはこれに介入すること(支配介入)に該当すると認められる。

4 争点5(救済方法の選択に関する違法の有無等)について
 組合の構成員である労組法適用職員については、労組法の適用があるところ、本件申入れに対する市の対応につき、団体交渉拒否及び支配介入に該当する事由があると判断されることは既に認定説示したとおりである。
 市が、管理運営事項ではない事項か否かを適時(団体交渉時を含む。)かつ適切な方法で確認しつつ、管理運営事項ではない事項について団体交渉をすることは、特段不可能を強いるものとは解されず(団体交渉中に管理運営事項そのものを問題としていることが判明した時点で、それを交渉対象から除外することも可能である。)、また、そのように対応することは、地公法55条3項をはじめとする法令に反するものではない。
 本件の事情の下において、管理運営事項に当たらず交渉事項となり得るものの有無・内容を確認することなく、団体交渉を拒否してはならないとしなかったとしても救済方法の選択に関する裁量の範囲を逸脱またはこれを濫用したものということはできない。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成29年(不)第38号 全部救済 平成31年1月28日
大阪高裁令和3年(行コ)第103号 棄却 令和4年2月4日
 
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