労働委員会裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪高裁令和元年(行コ)第170号
サンプラザ不当労働行為救済命令取消請求控訴事件 
控訴人  株式会社X(「会社」) 
被控訴人  大阪府(同代表者兼処分行政庁 大阪府労働委員会) 
被控訴人補助参加人  Z労働組合(「組合」) 
判決年月日  令和2年5月28日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、組合員Aについて、①従前の例よりも低い労働条件(本件再雇用条件)で定年後再雇用したこと、②残業を禁止する指示(本件残業禁止指示)を行ったこと、③平成28年夏期賞与として他の再雇用社員より低い金額を支給したこと(本件賞与減額支給)が、それぞれ不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事件である。
2 大阪府労働委員会は、いずれも不当労働行為に当たるとして、会社に対し、当該組合員の再雇用後の職務、基本給等を定年退職時の職能資格等級が同等であった者と均衡を失しないよう決定すること、賃金及び時間外勤務手当の差額支給並びに文書の手交及び掲示を命じた(本件救済命令)。
3 会社は、これを不服として、大阪地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、会社の請求を棄却した。
4 会社は、これを不服として、大阪高裁に控訴したが、同高裁は、会社の控訴を棄却した。 
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は控訴人の負担とする。 
判決の要旨  1 争点1(本件再雇用条件の不当労働行為該当性)について
 次のとおり補正するほか、原判決「事実及び理由」第3の2記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) (略)
(2)原判決21頁18行目の次に改行して、次のとおり加える。
 「会社は、当審において、Aの定年退職まで、人事評価が低くシニア嘱託社員としての採用を避けたい従業員がおらず、Aの再雇用に当たって具体的な対策が必要となったと主張する。しかしながら、定年退職直近の平成27年12月の直属の上司によるAの人事評価においては、人事管理面についてコミュニケーション不足が指摘されているものの、店長休日のクレーム処理、売場作り管理については評価され、担当範囲は、従来担当していた精肉部門に酒とたばこも加えられて広げられているのであって、Aは上司から相応の勤務能力を有する者と評価されていたと認められ、会社の上記主張は前提を欠くものであって採用できない。」
(3)原判決22頁10行目ないし23頁8行目を次のとおり改める。
 「Aは相応の勤務能力を有する者と評価されていたと認められるのであり、定年退職までのAに対する人事評価の評点は高いものではなかったとしても、Aの再雇用において、多岐にわたる商品を扱うグロッサリー部門の極一部しか担当させないことについて合理性があるとはいえない。」
(4)原判決23頁9行目ないし同最終行を次のとおり改める。
「ウ 労組法7条1号に当たること
  Aは、結成当時から組合の副執行委員長等の役職を務め、組合による救済命令申立事件において証人として証言をするなど組合の中心的な役割を担っていた。他方、会社は、組合結成当初から、組合に対する誹謗中傷などの不当労働行為を繰り返してきた。そうすると、Aに対する合理的理由のない不利益取扱いは、Aが組合員であることを理由とするものとみるほかない。」
(5)原判決24頁5行目ないし9行目を次のとおり改める。
 「会社は、当審において、組合の役員の中には昇給している者がいると主張するが、会社の組合への対応からすれば、組合員の中で優遇される者とそうでないものとの間を分断する目的でされたとみることもでき、組合役員の中には昇給している者がいるとしても、そのことから直ちにAに対する会社の評価が公正なものであったとは認め難い。」
(6)(略)
2 争点2(本件残業禁止指示の不当労働行為該当性)について
 原判決「事実及び理由」第3の3記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、原判決26頁1行目の次に改行して、次のとおり加える。
 「会社は、当審において、応援の必要性すなわち人手不足があったとしても、残業には賃金コスト等が発生するのであり、残業を指示してそれを現実に補うか否かは、会社の経営判断に委ねられたものであって、残業を指示しないことが不合理とはいえないと主張する。しかしながら、本件残業禁止指示がされるまでは、会社の店舗における残業指示の運用は、店長の書面による事前承認制度が徹底されておらず、業務状況に応じて従業員が残業を行い、承認権限者がそれを黙示的又は事後的に承認するというものであったのであり、Aに対してのみ事前かつ包括的に一切の残業を禁止することに合理性はない。」
3 争点3(本件賞与支給の不当労働行為該当性)について
 次のとおり補正するほか、原判決「事実及び理由」第3の4記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 原判決27頁15行目の次に改行して、次のとおり加える。
 「会社は、当審において、シニア就業規則に「賞与は原則として支給しない」と規定されていることをもって、シニア嘱託社員に対する賞与は賃金に当たらないと主張するが、シニア嘱託社員に対する賞与も、人事評価に基づき年に2回支給されるものであって、労働の対価として支給されるものとみるほかない。」
(2) 原判決27頁25行目ないし28頁20行目を次のとおり改める。
 「会社は、当審において、賞与額の決定には使用者の裁量が尊重されるべきであり、その裁量は社会通念上著しく不合理であるといった特段の事情がない限り、合理性が否定されることはないと主張するが、Aに対する平成28年夏期賞与は不当労働行為に該当する本件再雇用条件によるAの業務遂行を基礎にして定められたものであるから、社会通念上著しく不合理であり、会社の主張は採用できない。」
4 争点4(本件救済命令の内容が裁量権を逸脱・濫用するものか)について
(1) 本件救済命令主文第1項について
 本件救済命令主文第1項にいう「平成28年4月15日前に再雇用されたシニア嘱託社員のうち、定年退職時に、職能資格等級がAと同等の5等級であった者」に該当する者は2名いるところ、同項は、会社に対し、Aの再雇用後の職務、基本給等について、上記2名の者との均衡を失しないよう決定を命じるものであって、同項がAを上記2名と同じ処遇にせよと命じるもので不合理であるとの会社の主張は前提を欠くものである。
(2) 本件救済命令主文第2項について
 本件救済命令主文第2項のうち時間外勤務手当に関する部分は、会社に対し、職能資格等級がAと同等の5等級であった者の同年6月16日以降の、時間外勤務手当の平均額(ただし、月40時間相当額を上回らない額)と既支払額との差額の支払を命じるものであって、その内容に不明確な点はない。会社は、上記(1)の2名のシニア嘱託社員に対して時間外勤務手当が支給されていないと主張するが、上記2名が上記期間に所定時間外の労働を全く行っていないのであれば、上記主文第2項の「時間外勤務手当の平均額」は0円とみるほかないし、他方、上記2名が上記期間に所定時間外の労働を行っており、職務手当が時間外勤務手当に相当する又は含むものとして支給されていて、時間外勤務手当という名目での支給がされていないにすぎないのであれば、時間外勤務手当に相当する部分の平均額が上記の「時間外勤務手当の平均額」となるのであって、いずれにせよ不明確な点はなく、この点に関する会社の主張も採用できない。
5 よって、会社の請求は棄却すべきものであり、これと同旨の原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから棄却する。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成28年(不)第39号 全部救済 平成30年11月9日
大阪地裁平成30年(行ウ)第194号 棄却 令和元年10月30日
 
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