労働委員会裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  札幌高裁平成31年(行コ)第3号
札幌交通不当労働行為救済命令取消請求控訴事件 
控訴人  X1総連X2労働組合(「組合」) 
被控訴人  北海道(同代表者兼処分行政庁 北海道労働委員会) 
被控訴人補助参加人  Z1株式会社(「会社」) 
判決年月日  令和元年8月2日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 会社は、経営悪化を理由に、従前の賃金協定に代わりオール歩合制への変更、賞与の廃止等を内容とする賃金協定(以下「新協定」という。)を提案し、その後、その内容を就業規則化し、全乗務員に適用したが、新協定に調印した乗務員と調印しない乗務員が混在する期間において、新協定に調印しない乗務員の協定外残業、公休出勤、シフト変更を認めなかった。
 本件は、会社が、新協定に調印しない組合の組合員に対し、一定期間、協定外残業,公休出勤、シフト変更を認めない各取扱い(以下「本件取扱い」という。)をしたことが、不当労働行為に当たるとして救済申立てのあった事件である。
2 北海道労委は、会社の本件取扱いは不当労働行為であるとはいえないとして、組合の申立てを棄却した。
3 組合は、これを不服として札幌地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、組合の請求を棄却した。
4 組合は、これを不服として札幌高裁に控訴したところ、同高裁は、組合の控訴を棄却した。 
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。 
判決の要旨  1 当裁判所も,組合の救済命令の申立ては棄却すべきであると判断する。その理由は,以下のとおり補正するほかは[編注:補正部分(略)],原判決書の事実及び理由欄の第3の1ないし3に記載のとおりであるから,これを引用する。

2 控訴理由について
(1)会社が乗務員に対して新協定に係る賃金体系(以下「新賃金体系」という。)に協力しない者には交番変更等は受けられない旨の告知をした時点では,組合を始め誰が新賃金体系を受け入れるかいなかは不明であった。会社は本件取扱いを実施する前に3回にわたって組合と団体交渉等を行っていることに鑑みれば,会社は,旧賃金規定の適用者であることに着目して本件取扱いをすることを意図して本件取扱いを実施したものであり,かつ,組合の組合員が旧賃金規定の適用者になるような状況を作出したということはできない。以上によれば,会社が本件取扱いを実施するに至る経緯の中で組合が新賃金体系に対して否定的な対応をとることを予想等したとしても,それで会社が当初から組合の組合員に対して同人が組合の組合員であることの故をもって本件取扱いをしたということはできない。
(2)仮に新賃金体系に労働基準法に違反する点が含まれていたとしても,そのことが直ちに会社が不当労働行為意思を有していたことを推認させるものとはいえず,他の三労組等が新賃金体系を受け入れたことに照らせば,組合が受け入れる可能性は客観的にはあった。また,組合が会社に新賃金体系の改善に向けた協議を申し入れたにもかかわらず,会社がこれを殊更に無視し,一方的に本件取扱いに及んだなどの事情もうかがわれないので,組合が新賃金体系を拒まざるを得ない状況を殊更に作出したと認めることもできない。
(3)本件取扱いに至る経緯において, 経営資料の更なる開示がされること等が望ましいとしても,一定の資料の開示がされていることを勘案すれば,会社が上述の措置をとらなかったことの一事をもって,直ちに会社に不当労働行為意思があったなどとはできない。
(4)本件取扱いの事前告示時期の当否それ自体から会社が組合の組合員であることを原因として本件取扱いを行うこととしたとはいえないこと,本件取扱いの予告の時点において他の三労組においても新協定の調印が未了であったことに照らすと組合において意思決定を行うのが困難な時期であることを会社が認識して上記予告を行ったと認めることはできない。
(5)新賃金体系の導入には会社の経営状況の改善という客観的必要性があったことや,非組合員の中にも本件取扱いを受けた者と受けなかった者とが生じたこと等からすると,会社に不当労働行為意思があったこと等を推認させるものとはいえない。

3 結論
 以上によれば,本件控訴は理由がないから棄却する。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
道委平成27年(不)第14号 棄却 平成29年5月29日
札幌地裁平成29年行(ウ)第31号 棄却 平成30年12月14日
 
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