労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  札幌地裁平成29年行(ウ)第31号
不当労働行為救済命令取消請求事件
原告  X労働組合(「本件組合」) 
被告  北海道(処分行政庁・北海道労働委員会) 
被告補助参加人  Z株式会社(「会社」) 
判決年月日  平成30年12月14日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要   会社は、経営悪化を理由に、従前の賃金協定(以下「旧協定」という。)に代わりオール歩合制への変更、賞与の廃止等を内容とする賃金協定(以下「新協定」という。)を提案し、その後、その内容を就業規則化し、全乗務員に適用したが、新協定に調印した乗務員と調印しない乗務員が混在する期間において、新協定に調印しない乗務員の協定外残業、公休出勤、シフト変更を認めなかった。
 本件は、会社が、新協定に調印しない本件組合の組合員に対し、平成27年7月21日から同年11月20日までの間、協定外残業, 公休出勤、シフト変更を認めない各取扱い(「本件取扱い」)をしたことが労働組合法第7条の不当労働行為であるとする申立てに係る事件で、北海道労働委員会は、申立てを棄却した。
 本件組合は、これを不服として札幌地裁に訴訟を提起したところ、同地裁は組合の請求を棄却した。 
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 
判決の要旨  1 争点(1) (本件取扱いの不当労働行為(労働組合法7条1号)該当性)について
(1) 会社は,新協定に係る新賃金体系の適用者を拡大すべく,本件組合に所属する組合員のみならず新協定の非適用者全員,すなわち旧協定に係る旧賃金体系の適用者全員に本件取扱いをすることとし,その旨を予告した上でこれを実施しており、加えて,本件組合との間の団体交渉及び事務折衝の場においては,他の組合と同様に,第1次改定案から第3次改定案まで具体的な提案をし,会社の決算書類を示してその経営状況を説明した上,賃金体系の変更の必要性があることを説明したことが認められる。
(2)また、会社は,本件組合との間で,乗務員にとって受入れが容易でない本件各改定案を提示しながらも,経営状況に照らしそれが必要であり,やむを得ない旨を説明し続けてきたのであり,会社が,労働基準法その他の賃金規制に反することを認識しながら敢えて新賃金体系を提案し,本件組合をして新協定の締結を拒まざるを得ない状況を作出したとみることはできず,もとより,本件各改定案は組合にとってたやすく受け入れることが困難であっても不可能なものとまではいえず,会社が形式的に本件組合との交渉を行ってきたとも認められない。
(3) 以上によれば,会社は,旧賃金規定の適用者であることに着目して本件取扱いを行うことを意図し,これを実行したものであり,本件各改定案の内容や会社の交渉態様からすれば,本件組合に対し,その組合員が旧賃金規定の適用者になるような状況を作出したということはできない。
  したがって,会社が,組合員に対し,新賃金体系に同意しない本件組合に所属する組合員であることを理由として不利益な取扱いをする意図の下で本件取扱いをしたものでなく,本件取扱いの実施は,労働組合法7条1号の不当労働行為に該当しないというべきである。
2 争点(2)(本件取扱いの不当労働行為(労働組合法7条3号)該当性)について
  前記1において判断したとおり,会社が協定外残業その他の本件取扱いの対象としたのは,新賃金規定に同意せず旧賃金体系が適用になる者であり,労働組合に加入している者であるか否かに着目したものでない。
  したがって,会社が,本件取扱いの実施によって労働組合である本件組合の組合員が組合を結成又は運営することを支配し又はこれに介入したと認めることはできない。
3 結論
  以上によれば,本件取扱いが不当労働行為に当たらないとした本件命令は適法である。
  よって,組合の請求は理由がないからこれを棄却することとする。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
道委平成27年(不)第14号 棄却 平成29年5月29日
札幌高裁平成31年(行コ)第3号 棄却 令和元年8月2日
 
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