労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京地裁平成28年(行ウ)第392号
暁星学園不当労働行為救済命令取消請求事件
原告  学校法人X(「学園」) 
被告  国(処分行政庁・中央労働委員会) 
被告補助参加人  Z組合(「組合」) 
判決年月日  平成30年1月29日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、平成24年11月27日の団交(「H24/11/27団交」)において、組合側の出席者が8名であったところ、学園は、同団交の冒頭から、組合の出席人数が7名以内でないと申入れにかかる団交議題に入らないとの態度をとり、前回の団交が組合申入れに基づいて行われたこと及び学園の理事長が出席したこと等を確認する組合の質問に回答しないまま途中退席したという学園の一連の対応について、学園が組合の質問に回答しないなどの対応をしたことが不誠実団交に当たり、また、学園の出席者が途中退席したことが正当な理由のない団交拒否に当たることから、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとして、組合から救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労働委員会は、学園の対応は、それぞれ労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるとして、学園に対し、組合が団交を申し入れたときは組合の出席者の人数が7名以内でないことを理由にこれを拒否してはならず、誠実に応じなければならないとの命令をしたところ、学園が、これを不服として、再審査を申し立てた。
3 中労委は、初審命令を維持し、学園の再審査申立てを棄却したところ、学園は、これを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起した。
判決主文  1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は、補助参加によって生じた費用を含め、原告の負担とする。
判決の要旨  1 争点1(H24/11/27団交に関し、学園側出席者の対応が原告による不誠実な団体交渉に当たるかどうか)について
 学園は,H24/11/13団交及びH24/11/27団交において,組合側出席者に対し,団体交渉への組合側出席者の人数を7名以内とするように繰り返し求め,被告補助参加人がこれに応じなければ団体交渉の議題に入らないことを繰り返し述べている。
  しかしながら,団体交渉に出席する者の人数を何名とするのか(これと密接に関連するものとして誰を出席させるのか)という事柄は,第一次的には,団体交渉に当たるそれぞれの当事者(労働組合及び使用者)においてする自主的な判断に委ねられるべき性質のものである。もとより,団体交渉のルールを当事者双方による協議によって作ることは望ましいものと考えることができるから,原告において,団体交渉の相手方である組合側出席者の人数を7名以内にするように求めることや,その協議を求めること自体は許されるとしても,組合が当該人数の制限の求めをそのまま応諾しなかったからといって,それを理由に団体交渉の議題に入らないとの態度をとることは,当該求めの内容とされる出席者の人数の制限についての客観的な必要性及び合理性を勘案し,当該求めが相当であると認められるものであるといった特段の事情のない限りは,許されないものであるというべきである。
 本件において,学園は,学園と組合の間で,団体交渉への出席者の人数を7名以内とするとの慣行が成立していた旨を主張しているが、本件全証拠を精査しても,学園が主張するような慣行が成立し,学園と組合の間の明示又は黙示の合意の内容になっていたということを認めるに足りる証拠はない。
 また,学園は,組合側出席者の人数が増えるとその語気が強くなり,人数と暴言の増加には因果関係がある旨や,組合側出席者の人数が増えている状況において組合側出席者が学園側出席者の発言を遮ることがあり,かつ,B2理事長に対する誹謗中傷やその人格を否定する言動も悪化した旨を主張している。
  しかしながら,本件全証拠を精査しても,出席者の人数の増加によって,組合側出席者の発言の語気が強まったり,組合側出席者による暴言が増加したり,組合側出席者が学園側出席者の発言を遮るようになったり,又はB2理事長に対する誹謗中傷や言動が悪化したといった有意な因果関係を認めるに足りる的確な証拠はない。
 さらに,学園は,組合側出席者の人数が8名以上となると,学園側出席者が組合側出席者にコの字型に囲まれる状態となり,威圧感が生ずる旨を主張しているが、団体交渉が行われた部屋の状況に照らすと,組合側出席者の人数が7名を超えたとしても,少なくとも10名程度までであれば,学園側出席者が組合側出席者によって囲まれた状態となるとまではいうことができないし,それ自体によって学園側出席者に対して不当な威圧感を生じさせるようなこともないものと認めることができる。
 以上に加え,本件全証拠を精査しても,上記において説示した出席者の人数を7名以内にすることの客観的な必要性及び合理性を基礎付ける事情を認めるに足りるものがないことを併せて考えると,本件において,当該必要性及び合理性を是認することは困難であり,したがって,学園が求める上記の人数の制限が相当なものであるといった特段の事情を認めることはできない。
 そして,H24/11/27団交において,組合が,学園に対して、組合側出席者の人数の制限を求める理由を尋ねるべく,前回の団交が組合からの申入れに基づいて行われたものであり,B2理事長が出席していたことを確認する旨の質問をしたにもかかわらず,学園は,団体交渉の場を退席するまでの間に,当該質問に対する明確な回答をしなかったものである。
 このように,組合側出席者の人数が多いことを理由として議題に入ることができないとの態度をとり,組合の当該質問に明確な回答をせず,その場を退席した学園側の対応は,誠実交渉義務に違反する不誠実なものであったというほかない。
 また,この点に関し,学園は,H24/11/13団交において,出席者の人数を制限する理由として,組合側出席者が多いことによって感情的な対応がとられがちであるから,そのような状況を避け,秩序を持った団体交渉を効果的に行うとの合理的な理由を説明している旨を主張するとともに,学園と組合の間の出席者の人数の制約についての協議がH22/11/30団交に9名の組合側出席者が出席したとき以降,いわば平行線であった旨を主張している。しかしながら,学園が主張する理由の内容は抽象的なものにとどまっており,そして上記において説示したとおり,組合側出席者の人数が増加することによって組合側出席者の暴言が増加したり,学園側出席者の発言を遮るようになったり,B2理事長に対する誹謗中傷等が悪化したというような事情を認めることができないことに鑑みれば,学園が出席者の人数に関する求めについての理由等を説明し尽くしていたということはできない。
 以上により,H24/11/27団交における学園側出席者の本件対応は,学園による不誠実な団体交渉に当たるものであり,労働組合法第7条第2号の規定に違反する不当労働行為を行ったものというべきである。
2 争点2(H24/11/27団交に関し,学園側出席者がその場を退席したことが原告による正当な理由のない団体交渉の拒否に当たるかどうか)について
 H24/11/27団交において,組合側出席者の言動には,その語気ないし気勢,行為の態様等がそれまでの団交における言動と比べても,団体交渉におけるものとしてより適切さを欠くものと評すべきものが含まれていたことを認めることができる。
  しかしながら,上記のとおり,学園側出席者は,H24/11/27団交において,その冒頭から,客観的な必要性や合理性を肯定することができない出席者の人数に関する条件に固執し,当該条件に従わない限り団体交渉の議題に入らないとの態度を示し,これを継続したものであり,組合側出席者の言動は,このような学園側出席者の態度に抗議するために行われたものであると認められ,また,組合側出席者の当該言動が,それ自体として,団体交渉の継続を不可能にさせるほどの気勢や声量をもって続けられたものとはいうことはできない。
 このように,H24/11/27団交において,学園は,組合側出席者の人数の制限という客観的な必要性や合理性を認めることのできない条件に固執し,これに対して組合側出席者が抗議の念から感情的な言動をするようになる中で,組合として当該条件に応じないことが明らかになると,組合側出席者の言動が改められないことを確認した上で,当該条件のとおりにその場を退席したものというべきである。このような学園の対応は,正当な理由なくH24/11/27団交を拒否したものというほかない。
 また,学園は,①出席者の人数を7名以内とするようあらかじめ求めたにもかかわらず,組合がH24/11/27団交に必要もないのにあえて8名を出席させたこと②組合が専らB2理事長を個人攻撃する旨の不当な動機に基づいて団体交渉を行っていたことを主張している。
①の主張については,そもそも,上記1において説示したように,団体交渉の出席者の人数を何名とするかという事柄は,第一次的には,団体交渉に当たるそれぞれの当事者の自主的な判断に委ねられるべき性質のものであるし,8名との人数は,学園が求めていた7名以内との人数を1名上回るものにすぎないものであるから,学園の主張は,上記の判断に影響を及ぼすものではない。
 ②の主張については,組合側出席者の言動がB2理事長に対するものとしてされたものがほとんどであると認めることができるものの,当該言動は,団体交渉における学園側出席者の主要な発言者がB2理事長であったからにすぎないものであり,組合が学園の主張するような不当な動機を有していたことを認めるに足りる証拠はなく,この主張も,採用することができない。
 以上により,H24/11/27団交において学園側出席者がその場を退席したことは,学園による正当な理由のない団体交渉の拒否に当たり,労働組合法第7条第2号に違反する不当労働行為に当たるというべきである。
3 結論
 以上によれば,原告の請求は,いずれも理由がないことから,原告の請求をいずれも棄却することとする。
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成24年不第103号 全部救済 平成26年7月1日
中労委平成26年(不再)第39号 棄却 平成28年6月15日
 
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