労働委員会関係裁判例データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[判例一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件番号・通称事件名  東京地裁平成27年(行ウ)第137号
ゲオホールディングス不当労働行為救済命令取消請求事件 
原告  株式会社X1(「会社」) 
被告  国(処分行政庁・中央労働委員会) 
被告補助参加人  Z(「組合」) 
判決年月日  平成28年4月25日 
判決区分  棄却  
重要度   
事件概要  1 株式会社X2の大阪市内の店舗に勤務するA1が加入した組合は、X2の親会社である会社に対し、A1の労働条件等について、大阪市内で団体交渉を行いたい旨を申し入れたが、団体交渉は開催されなかったため、組合が、会社の対応は団交拒否の不当労働行為に当たるとして救済申立てをした事件である。
2 初審大阪府労委は、会社の対応は団交拒否の不当労働行為に当たるとして、会社に対して団体交渉開催場所の協議が整うまでの間の大阪市内での団体交渉応諾及び文書手交を命じた。
3 会社は、これを不服として、中央労働委員会に再審査の申立てをしたが、中労委は、会社の再審査の申立てを棄却した。
4 会社は、これを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、会社の請求を棄却した。 
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、補助参加によって生じた費用も含め、原告の負担とする。  
判決の要旨  第3 当裁判所の判断
2(1)ア 上記争いのない事実等に記載した各事実及び上記1において認定した各事実に照らして検討するに、組合は、本件申入書2から4までにおいて、一貫して大阪市内での団体交渉の開催を希望していたところ、上記団体交渉の協議事項にはA1の労働関係に係るものが含まれていたことに照らせば、A1が上記団体交渉に出席することには必要性、合理性があるというべきであるし、実際にも、組合はA1が上記団体交渉に出席することを予定していたのである。このような事情の下では、組合が、協議事項に係る労使関係が現に生じている場所である労働者の就業場所(大阪市)で団体交渉を開催することを希望することには合理性があるものというべきであるし、また、A1の当該団体交渉への出頭を容易にする観点からも、大阪市内で団体交渉を行うことには合理性があるものというべきである。
イ この点、団体交渉を大阪市内で開催する場合には、会社側が大阪市内まで出向く必要があるという点で会社に負担が生じるが、かかる負担は、会社が持株会社の形態をとり、会社の子会社の人事に関する権限を会社の人事部に所管させたことに伴って生じたものといえるし、また、会社側は団体交渉の出席者を委任等の方法を通じて代替することも可能であることや会社とA1との経済力の差に照らせば、会社側にかかる負担が生じることによって上記合理性が否定されるものではないというべきである。
ウ また、組合は、会社に対し、本件申入書4において団体交渉の開催場所を本件事務所〔組合の主たる事務所〕に限定して申入れをし、本件申入書3、4において大阪府労委への申立ての意向を示すなどしているが、それまで組合は、本件申入書1から3まででは訴外会社又は会社が希望する大阪市内の場所も開催場所に掲げていたにもかかわらず、会社からは、本件事務所以外の大阪市内における開催場所の再提案もなく、春日井市内又は名古屋市内以外での開催には応じる余地がないかのような対応がされたという経過を受けてのことであり、組合が上記限定を行ったのは会社側が組合に対して本件回答書3によって会社側が大阪市内には団体交渉ができるような施設を有していない旨を述べたことに起因するものと考えられる上、上述のとおり、団体交渉を大阪市内で開催することに必要性、合理性があるというべきことに照らせば、組合が上述のような対応をしたことにつき、それが不誠実なものであったと評価されるものではないというべきである。
(2)ア 他方、会社は、団体交渉の開催場所として、春日井市内又は名古屋市内での開催を一貫して希望していたところ、組合が申し入れた協議事項が会社の人事部が決裁権限を有するものであり、同人事部が春日井市内に所在することに照らせば、会社が上述のような希望をすることにも一応の理由はあるものということができる。
イ しかし、組合は平成25年2月19日の大阪市内での団体交渉の開催及び会社側からの当事者能力のある任意の者の出席を求めているところ、仮に、B1次長が同日に大阪市内での団体交渉に出席することに支障があったとしても、他の者に権限を委任して出席させることも可能であったものと考えられるし、また、会社側がB1次長の出席が必須であると考えており、あるいは、B1次長に代わる者があったとして、上記日程の出席に支障があったと考えていたとしても、組合に対して会社側のこのような事情を説明して日程の変更を求めるなどの対応も十分に可能であったものと考えられる。
ウ しかるに、会社は、組合に対し、上述のような事情を説明することもなく、また、組合に対し、上述の団体交渉の開催日や会社側の出席者について変更を求めることもなかったというのであり、さらには、人事部の担当者が大阪市内に出向くことのできる日程や、大阪市内で団体交渉を開催することにつき、検討もしていなかったというのである。
  かえって、会社は、組合に対し、大阪市内での団体交渉を行わない理由として、決裁権限を有する者が本件本社に常駐している旨、会社は大阪市内には団体交渉ができるような施設を有していない旨を述べているが、上述の決裁権限を有する者が本件本社に常駐している旨の説明は、会社の一般的な体制を説明するにとどまり、かかる説明のみをもって、B1次長が上記平成25年2月19日の団体交渉に出頭することが困難である理由が理解されるとはいえない。そもそも、会社が大阪市内で団体交渉を行わない真の理由が上記平成25年2月19日の団体交渉へのB1次長の出頭困難にあるのであれば、会社は組合に対してかかる真の理由を説明してしかるべきである。
エ さらに、会社は組合に有利に団体交渉が進められるなど会社に不利益になるおそれがあると考えて本件事務所で団体交渉を行うことに同意しなかったというのであるが、本件申入書1から3まででは開催場所として本件事務所に加えて訴外会社又は会社が希望する大阪市内の場所も掲げられており、会社が春日井市内に貸会議室を仮予約していたことからすれば、大阪市内においても同様の措置をとるという選択肢も容易に想起できることを踏まえると、会社には本件事務所以外の大阪市内における開催場所を組合と協議する十分な機会が与えられていたものとみることができる。
オ 上記のような事情の下で、会社は、組合に対し、本件回答書4により、会社側が組合の呼出しに応じて本件事務所での団体交渉を行わなければならない法的根拠を示すよう求めているのであって、会社のかかる申入れは、これを見る者に会社は本件事務所ひいては大阪市内での団体交渉の開催に任意に応じる意思はないことを表明したものと評価されてもやむを得ないものというべきである。
(3) かかる経緯に照らせば、組合が、本件回答書4を受け、これ以上の協議の進展が望めないと考えたことにも無理からぬところがあるというべきであり、ひいては、組合が会社に対して組合回答書を送付した上、大阪府労委に申立てを行ったことが不誠実な対応であったということはできない。
  他方、上記(2)における認定及び検討、特に、会社が組合に対して会社が大阪市内での団体交渉を行わない理由を説明せず、かえって、会社側が組合の呼出しに応じて本件事務所での団体交渉を行わなければならない法的根拠を示すよう求めたことに照らせば、会社には組合からの団体交渉を行いたい旨の申入れに真摯に対応する意思がなかったと評価されてもやむを得ないものというべきである。
(4) 以上の認定及び検討に照らせば、上述の組合からの本件申入書2から4までによる団体交渉の申入れに対する会社の一連の対応は全体的に見て不誠実なものであったというべきであり、会社は、かかる対応により、団体交渉をすることを正当な理由なくして拒んだものというべきである。
  そうすると、会社は、労組法7条2号の禁止する不当労働行為を行ったものというべきである。  
その他   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成25年(不)第4号 全部救済 平成26年1月27日
中労委平成26年(不再)第8号 棄却 平成27年1月28日
東京高裁平成28年(行コ)第215号 棄却 平成28年10月12日
最高裁平成29年(行ツ)第35号・平成29年(行ヒ)第37号 上告棄却・上告不受理 平成29年3月2日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約147KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。