労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  福岡高裁平成27年(行コ)第40号
ファビルス不当労働行為救済命令取消、行政処分取消等請求控訴事件 
控訴人兼被控訴人補助参加人(原審第1事件原告兼第2事件被告補助参加人)  株式会社X1(「会社」) 
控訴人兼被控訴人補助参加人(原審第1事件被告補助参加人兼第2事件原告)  X2(「組合」) 
被控訴人(原審第1事件及び第2事件被告)  福岡県(同代表者兼処分行政庁・福岡県労働委員会) 
判決年月日  平成28年1月26日 
判決区分  棄却  
重要度   
事件概要  1 ①会社が平成24年度に組合との事前協議をせずに賃上げを行ったこと、②会社が、組合の平成25年度の春闘要求に対して、団体交渉開催前に具体的回答を示さず、団交事項について協議・決定する権限を有する者を団体交渉に出席させないまま、団体交渉において会社の考え方を一方的に押し付け、その後、組合との協議に一切応じなかったこと、③会社が、組合員A1の疾病について、業務上の疾病(以下「業務災害」という。)としての取扱いをしなかったことが、不当労働行為に該当するとして、申立てのあった事件である。
2 福岡県労委は、①は労組法7条3号の不当労働行為に該当するが、その余は不当労働行為に該当しないとして、組合の申立ての一部を認容し、その余を棄却する旨の本救済命令を発した。
3 これを不服として、会社が、本件救済命令のうち、組合の申立てを認容した部分の取消しを求め(第1事件)、組合が、組合の申立てを棄却した部分の取消しを求めるとともに、救済命令を発することの義務付けを求めた(第2事件)行政訴訟をそれぞれ福岡地裁に提起したところ、同地裁は、会社の請求については、棄却し、組合の請求については、義務付けを求める部分を却下し、その余の請求を棄却した。
4 これを不服として、会社及び組合が、福岡高裁にそれぞれ控訴したが、同高裁は会社及び組合のいずれの控訴も棄却した。  
判決主文  1 控訴人会社及び控訴人組合の本件各控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用 (当審における参加によって生じた費用を含む。)は、 控訴人ら各自の負担とする。  
判決の要旨  第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、 ①会社が組合と事前協議をすることなく、 平成24年度に組合員を含む正社員の賃上げを行ったことは、 労働協約違反に当たるから、 当該行為は、 労組法7条3号の不当労働行為に該当するというべきであり、 本件救済命令の時点において、 救済の利益が消滅していたということもできない、 ②組合からの平成25年度の春闘要求に対する会社の各対応は不当労働行為に該当しない、 ③会社において、 A1の疾病の原因は糖尿病であると判断し、 同人の疾病を業務災害として取り扱わなかったことは、 同人が組合の組合員であることを理由とする不利益な取扱いには当たらず、 支配介入行為ともいえないから、 処分行政庁が、 会社に対し、会社が事前協議なく平成24年度の賃上けを実施したことに関し、 組合に文書を交付するよう命じ、 その余の組合の申立てを棄却した本件救済命令に違法はないものと判断する。
  したがって、 本件救済命令の取消しを求める会社及び組合の請求はいずれも理由がないから、 これらの請求を棄却し、 本件救済命令が取り消されるべきものであることを前提とする組合の義務付けを求める訴えは訴訟要件を欠き不適法であるから、 これを却下すべきであるところ、 その理由は、 原判決第3の1及び2に記載のとおりであるから、これを引用する。
2 会社は、 当審においても、会社と組合との間で、 他の従業員と同じ基準に基づく一律給付については事前協議を不要とする合意が成立していたから、 事前協議を経ることなく平成24年度に組合員を含む従業員の賃上げを行ったことは、 労働協約に違反しないと主張するところ、 本件確認書が作成されてから平成24年度の賃上げまでの間、会社において賃上げが実施されたのは平成19年度のみであって、 その際、 組合から異議が述べられなかったことをもって、 会社と組合との間で、 一律給付につき事前協議を不要とする旨の合意が成立したと認めるに足りないことは、 原判決も説示するとおりである。
  また、 平成24年度の賃上げ当時、 本件確認書の有効性につき疑義が生じていたとしても、 会社において、 事前協議をすることなく組合員であるA1の賃金等の労働条件を変更することが本件確認書に反する可能性のある行為であることは認識し得たはずであって、 組合は、 同年3月14日ころ、 会社に対し、 組合員であるA1らの基本給及び職能給の賃上げを要求していたのであるから、 賃上げの可否やその幅等について、 組合と協議を行うことも不可能ではなかったにもかかわらず、 本件確認書の効力の有無を十分検討することもなく、 事前協議を経ないまま組合員を含む正社員の賃上げを実施したことは、 労働協約を軽視し、 これに違反する不当労働行為といわざるを得ず、 不当労働行為意思に欠けるところはないというべきである。
  さらに、 会社は、 平成24年度の賃上げの際に事前協議が行われなかった問題については、 同年7月4日、 同年8月1日及び同月22日に開催された団体交渉において、 本件確認書の有効性を確認するとともに今後賃上げの際には事前協議を行う旨を確認しているから、 組合に救済の利益はないと主張する。しかしながら、 会社は、 同日に開催された団体交渉において、 本件確認書は組合員の労働条件を不利益変更する場合にのみ適用されるという趣旨の発言もしており、 また、 当審において、 組合員の労働条件の変更のうち、 他の従業員と同じ基準に基づく一律給付については事前協議を不要とする合意が成立していると主張し、 労働協約違反の事実を争っていることは、 前記のとおりであって、 同年7月4日、 同年8月1日及び同月22日に開催された団体交渉において、 本件確認書の有効性が確認され、 今後賃上げの際には事前協議を行う旨の確認がされたことをもって、 十分な不当労働行為の解消措置がされたとはいえないから、 本件救済命令が発せられた当時、 なお救済の必要性があったことは明らかである。
3 以上によれば、 本件救済命令に違法な点は認められず、 本件救済命令の取消しを求める会社及び組合の請求はいずれも理由がないから、 これらを棄却し、 本件救済命令が取り消されるべきものであることを前提とする組合の義務付けを求める訴えは訴訟要件を欠き不適法であるから、 これを却下すべきであって、 これと同旨の原判決は相当である。
  よって、会社及び被組合の本件各控訴はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして、 主文のとおり判決する。  
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
福岡労委平成25年(不)第5号 一部救済 平成26年4月11日
福岡地裁平成26年(行ウ)第27号(第1事件)、同第46号(第2事件)  棄却・却下 平成27年5月27日
 
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