労働委員会関係裁判例データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[判例一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件名  大月書店 
事件番号  福岡高裁平成27年(行コ)第49号  
控訴人  福岡地区合同労働組合(「組合」) 
被控訴人  福岡県(同代表者兼処分行政庁・福岡県労働委員会) 
被控訴人補助参加人  株式会社大月書店(「会社」) 
判決年月日  平成27年12月16日 
判決区分  棄却  
重要度   
事件概要  1 組合が、福岡県労委に対し、会社が組合の申し入れた団体交渉の開催場所を東京と指定してこれに固執したことが労組法7条2号の不当労働行為に該当すると主張して救済命令の申立てをしたところ、福岡県労委は、組合員であるA1は会社との関係では労働者ではないとしてこれを棄却する旨の命令を発した。
2 組合は、これを不服として、福岡地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、福岡県労委に対する命令の義務付けを求める部分は不適法であるとして却下し、その余の請求を棄却した。
3 組合は、これを不服として、福岡高裁に控訴したが、同高裁は、組合の訴えを棄却した。 
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、補助参加によって生じた費用を含め控訴人の負担とする。 
判決の要旨  第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、A1は会社との関係で労組法7条2号にいう「労働者」には当たらず、したがって、本件団交要求に関する会社の対応が労組法7条2号所定の不当労働行為に該当しないから、本件訴えのうち、処分行政庁に対する命令の義務付けを求める部分は不適法であり、その余の請求は理由がないものと判断する。その理由は、次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の第3の1及び2に記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 原判決6頁4行目、16行目、23行目、26行目、7頁14行目、8頁12・13行目、14行目、18行目の各「編集者」をいずれも「編集担当者」に改める。
(2) 原判決6頁24行目の「ロ座名」の次に「(屋号ラディクス)」を加える。
(3) 原判決7頁16行目の「出版に関する契約が合意に至ることはなかった(甲9)。」を「出版に関して編集担当者の了解を得ることがなかったため(甲9)、」に改める。
(4) 原判決7頁25行目から8頁9行目までを次のとおり改める。
  「労組法7条2号所定の「労働者」とは、「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者をいう」(同法3条)が、同法1条の規定の趣旨・目的、同法3条の規定の文言に照らし、上記「労働者」とは、労働契約法や労働基準法上の労働契約によって労務を供給する者のほか、労働契約に類する契約により労務を供給して収入を得る者であって労組法の団体交渉の保護を及ぼすことが必要と認められる者をも含むと解される。そして、かかる意味での「労働者」に当たるかどうかは、①その者が当該企業の事業遂行に不可欠な労働力として企業組織に組み込まれているか、②契約内容が一方的に決定されているか、③報酬が労務対償の性質を有するか、④業務の発注に諾否の自由がないか、⑤業務遂行の日時、場所、方法などにつき指揮監督を受けるか等の事情を総合的に考慮して判断すべきである。
  そこで、これを本件についてみるに、前記認定の事実、証拠及び弁論の全趣旨によれば、①補助参加人会社とA1との関係は本件出版契約を通じての単発的、一回的な関係があるにすぎず(本件出版契約に係る契約書〔丙1]には、同契約が本件書籍に関するものであることが明記されており、補助参加人会社がA1にその他の書籍等の執筆を依頼する際には別途出版契約を締結することが予定されているといえる。)、さらに、継続的反復的な関係にはない上、本件出版契約上、本件書籍と明らかに類似すると認められる内容の著作物若しくは本件書籍と同一書名の著作物を除き、A1が他の出版社から出版することが禁止されていないなど、A1が補助参加人会社の事業の遂行に不可欠な労働力として、その恒常的な確保のためにその組織に組み入れられていたということはできない。また、②前記認定の本件出版契約締結に至る経緯からして、補助参加人会社が一方的にA1の報酬(翻訳印税)その他の労務供給の内容を定めていたとはいえず、③報酬は翻訳完成後に支払われ、発行部数が増えればそれに応じて報酬が支払われる等提供した労務に対する対価としての意味合いは弱く、④A1は補助参加人会社に対し本件書籍について翻訳を完成させ成果品を引き渡すべき義務を負っているのみであり、それ以外の業務の依頼に応じるべき義務を負う関係にはないことが明らかである(前記のとおり、本件出版契約は本件書籍のみに関するものであり、補助参加人会社がA1にその他の書籍等の執筆を依頼する際には別途出版契約を締結することが予定されている。)。さらに、⑤編集担当者のA1に対する翻訳についての指導、助言も、後記のとおり、A1が初めて商業出版する本件書籍の翻訳作業を行うため編集担当者による細やかなアドバイスを必要としていたことによる技術的な指導、助言に止まるものであり、A1が補助参加人会社から業務遂行に関し指揮監督を受けていたと評価し得るものではない。また、補助参加人会社がA1に対し翻訳の場所・時間を指定することはなく、もっぱら電子メールでのやり取りがなされていたなど、A1が補助参加人会社から時間的場所的拘束を受けることもなかったことに加え、A1自身、自らが事業者であるとの認識を有していたものである。」
(5) 原判決8頁18行目の「商業において出版」を「商業出版」に改める。
  なお、会社は、本件団交要求がされた当初においては、団体交渉の開催場所に固執したものの、A1の労働者性を争うような言動に及んでいなかったが、このことは、前記の認定及び判断の妨げになるものではない。その他に、控訴人は当審において縷々主張するものの、A1の労働者性については前記説示に照らし理由がなく、その余の主張は本件の結論に影響しない主張であって、いずれも前記の認定及び判断の妨げとなるものではない。
2 よって、以上の判断と同旨の原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。  
その他   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
福岡労委平成25年(不)第8号 棄却 平成26年8月8日
福岡地裁平成27年(行ウ)第5号 却下・棄却 平成27年7月29日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約88KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。