労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  大月書店 
事件番号  福岡地裁平成27年(行ウ)第5号  
原告  福岡地区合同労働組合(「組合」) 
被告  福岡県(処分行政庁・福岡県労働委員会) 
補助参加人  株式会社大月書店(「会社) 
判決年月日  平成27年7月29日 
判決区分  却下・棄却 
重要度   
事件概要  1 組合が、福岡県労委に対し、会社が組合の申し入れた団体交渉の開催場所を東京と指定してこれに固執したことが労組法7条2号の不当労働行為に該当すると主張して救済命令の申立てをしたところ、福岡県労委は、組合員であるA1ことA2(以下「A2」という。)は会社との関係では労働者ではないとしてこれを棄却する旨の命令を発した。
2 本件は、組合が、同命令の取消しを求めるとともに、救済命令を発することの義務付けを求め、福岡地裁に提起した事案である。  
判決主文  1 本件訴えのうち、処分行政庁に対する命令の義務付けを求める部分を却下する。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は、原告の負担とする。 
判決の要旨  第3 当裁判所の判断
2 争点に対する判断
(1) 本件団交要求に対する会社の対応が労組法7条2号所定の不当労働行為に該当するというためには、本件団交要求について組合が「労働者の代表者」(労組法7条2号)に当たる必要があり、そのためには、A2が会社との関係で労組法7条2号所定の「労働者」に当たる必要がある。
 そこで検討すると、A2と会社との間で締結された本件出版契約は、A2の著作物である本件書籍1冊について会社に出版権を設定し、これに対して会社が出版物の定価、出版部数及び印税率を乗じて計算される著作権の使用料(印税)を支払うというもので、労務提供の対価として賃金を提供するという労働契約とはその本質において異なるものである。そして、前記1認定に係る本件出版契約締結の経緯、本件出版契約の契約書の記載等、本件出版契約に関連する事実を全体として見ても、本件出版契約についてA2が諾否の自由を有しておらず、本件出版契約の内容を会社が一方的に決定したとか、A2が会社の組織に組み入れられていたなどといった、A2が会社との関係で労働者に該当することを基礎付けるに足りる事実は認められない。
 そうすると、A2が会社との関係で労組法7条2号所定の「労働者」に当たるということはできない。
 この点について組合は、本件原著の翻訳作業について会社の編集者から細かい指示があったことを指摘する。確かに、証拠によれば、会社の編集者が、A2に対し、A2の提示した翻訳の案に対して様々なアドバイスをしたことが認められる。しかしながら、このようなアドバイスは会社による指揮監督を直ちに裏付けるものとはいえない。これに加えて、A2自身原稿の添削を望んでいたことや、A2が初めて商業において出版する書籍の翻訳作業を行うため、編集者による細やかなアドバイスを必要としていたことをも併せ総合すれば、組合指摘の事情によって直ちにA2と会社との間に指揮命令関係があったと認めることはできない。
 また組合は、本件出版契約以外の契約が締結されるか、契約締結を期待し得る状況にあったと主張するがこれを認めるに足りる証拠はなく、当事者間に保証部数の印税のみが支払われることが十分予想できたとも主張するが、この事情が認められたとしても本件出版契約における報酬の合意が著作権使用料の対価であることに影響はなく、前記労働者性に関する判断を左右しない。
 以上のとおり、組合の主張はいずれも採用することができず、A2を会社との関係で「労働者」(労組法7条2号)と認めることはできないから、本件団交要求に対する会社の対応が労組法7条2号所定の不当労働行為に該当するということはできず、本件命令は適法である。
 よって、組合の本件命令の取消しを求める請求には理由がない。
(2) 組合の義務付けの訴えについて
 本件訴えのうち、処分行政庁に対する命令の義務付けを求める部分は、行政事件訴訟法3条6項2号所定の義務付けの訴えであって、この訴えは、処分行政庁の命令が取り消されるべきものであり、又は無効若しくは不存在であるときに限り提起することができるとされているところ(同法37条の3第1項2号)、前記(1)のとおり、本件命令は適法であって取り消されるべきものではなく、また、無効若しくは不存在であるともいえない。
 したがって、本件訴えのうち、処分行政庁に対する命令の義務付けを求める部分は、訴訟要件を欠く不適法なものであるから、これを却下すべきである。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
福岡労委平成25年(不)第8号 棄却 平成26年8月8日
福岡高裁平成27年(行コ)第49号  棄却 平成27年12月16日
 
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