労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  平成タクシー(緊急命令申立) 
事件番号  広島地裁平成24年(行ク)第18号  
申立人  広島県(処分行政庁:広島県労働委員会)  
被申立人  有限会社平成タクシー  
決定年月日  平成25年9月4日 
決定区分  緊急命令申立の一部認容  
重要度   
事件概要  1 ①商業施設内でのビラ配布を理由として懲戒処分を行ったこと、②組合員を異動させ、乗務する車種を変更したこと、③Y2部長が分会組合員9名と話し合い、「不当労働行為の救済申し立てを取り下げてもらえませんか?」などと書かれた文書を示し、また発言したこと、④Y1社長が、出勤してきた副分会長X1を乗務させなかったこと、⑤同日、X1が客から直接依頼を受けたこと等を理由に処分を行ったこと及び乗務させない状態が続いていること、⑥X3を乗務させない状態が続いていること、⑦ Y1社長が団体交渉に出席せず、また、団体交渉の合意事項を文書化せず、履行していないことが、不当労働行為に当たるとして、会社に救済があった事件である。
2 広島県労委は、会社に対し、①組合員7人に対する懲戒処分の取り消し及び不利益相当分の給与相当額等の支払、②組合員であること等を理由とする不利益取扱や正当な組合活動の妨害などの支配介入の禁止、③X1及びX3に対する乗務拒否による同人らの不利益相当分の給与相当額等、また本件命令交付の翌日からX3が乗務できるまでについては、同人が受け取るはずであった給与相当額の支払い、④文書の交付・掲示を命じ、その余の申立てを棄却した。
 これを不服として、会社が広島地裁に行政訴訟を提起したため、広島県労委が緊急命令の申立を行ったのが本件である。  
決定主文   被申立人は、被申立人を原告とし、広島県を被告とする当庁平成24年(行ウ)第20号不当労働行為救済命令一部取消請求事件の判決確定に至るまで、申立人が、広労委平成23年(不)第1号事件について、平成24年4月3日付けでした命令のうち、下記の部分に従わなければならない。
 被申立人は、X1及びX3に対する乗務拒否によって、同人らが被った不利益相当分の給与額(X1は平成23年1月15日から同年5月11日まで、X3は平成23年1月4日から同年5月11日までの金額)及びこれに対する給与支払期限から命令交付日まで年6分の割合による金員を支払わなければならない。
2 本件緊急命令申立てのうち、被申立人は、被申立人を原告とし、広島県を被告とする当庁平成24年(行ウ)第20号不当労働行為救済命令一部取消請求事件の判決確定に至るまで、申立人が、広労委平成23年(不)第1号事件について、平成24年4月3日付けでした命令のうち、申立ての趣旨1(1)の部分に従わなければならないことを求める申立て部分を却下する。
3 申立費用は、これを2分し、その1を申立人の、その余を会社の負担とする。  
決定の要旨  1 本件緊急命令申立ての趣旨及び理由は、〔本件決定書〕別紙の緊急命令申立書記載のとおりである。
2 本件救済命令主文第3項のうち、会社は、X1及びX3に対する乗務拒否によって、同人らが被った不利益相当分の給与額(X1は平成23年1月15日から同年5月11日まで、X3は平成23年1月4日から同年5月11日までの金額)及びこれに対する給与支払期限から同命令交付日まで年6分の割合による金員を支払わなければならないとする部分に係る命令は、その認定及び判断において正当であり、適法であると認められる。
 そして、会社は、本件救済命令の命令書写しを受領した後も、今日に至るまで、上記部分を履行しておらず、本案事件の判決が確定するまで不履行の状態が継続した場合、組合の団結権の侵害は著しく進行し、回復困難な損害が生ずるおそれがあると認められるから、緊急命令の必要性があるというべきである。
3 一方、申立ての趣旨1(1)〔X1及びX3の懲戒処分の取消、同処分による不利益相当額及びその利息相当額の支払い〕に係る部分に従うことを求める緊急命令申立ては、以下の理由により却下すべきである。
 X1及びX3は、既に会社を退職していることが認められる。両名に対する懲戒処分の取消しを命じるべき緊急命令の必要性があるとはいえないから、同部分に係る緊急命令の申立ては却下されるべきである。
 申立ての趣旨1(1)で支払を命じられた債務の法的性質は、会社とX1及びX3との間の別件訴訟である広島高等裁判所平成24年(ネ)第472号、平成25年(ネ)第25号事件の確定判決をもって会社に支払が命じられた債務と同旨のものであるが、金額的には、これを一部超えるものである。
 本件救済命令のうち、上記の債務の支払を命じる部分のうち、実体法上確定した債務額以上の債務の支払を命じる部分は、労働委員会に与えられた裁量権を逸脱するもので違法であるからその限度で取り消されるべきものである。また、上記確定判決で支払を命じられた債務については、その全額が既に弁済されていることが認められる。
 したがって、申立ての趣旨1(1)に係る金員の支払を命じる緊急命令は相当ではないから、同部分に係る緊急命令申立ては却下されるべきである。  
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
広島県労委平成23年(不)第1号 一部救済 平成24年4月3日
広島地裁平成24年(行ウ)第20号 一部取消・却下・棄却 平成25年9月4日
広島高裁平成25年(行コ)第26号 原判決一部取消 平成26年9月10日
広島高裁平成26年(行サ)10号 上告却下 平成26年11月28日
 
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