労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  日本工業新聞社  
事件番号  東京高裁平成22年(行コ)第340号  
控訴人   労働組合・反リストラ・マスコミ労働者会議・産経委員会  
被控訴人   国(処分行政庁:中央労働委員会)  
被控訴人補助参加人   株式会社日本工業新聞社(原審口頭弁論終結後に、新設分割により設立され、株式会社日本工業新聞新社の権利義務を承継。)  
判決年月日   平成24年10月25日  
判決区分   棄却  
重要度  重要命令に係る判決  
事件概要  1 会社が、東京本社に所属していたX1に対して、平成6年2月1日付け千葉支局長への配転を内示したところ、①同年1月28日、X1は、会社に対し、X組合の結成を通知するとともに、団体交渉を申し入れたが、会社はこれに応じなかった。②同年2月1日、会社は、X1に対して配転を発令した。これに対し、③X組合は、配転を議題とする団体交渉を申し入れたが、会社はこれに応じなかった。④X1ら3名が、会社内で組合機関紙を配布したところ、会社はX組合機関紙を回収した。⑤X組合は、配転やX1の千葉支局での業務等を議題として団体交渉を申し入れたが、会社はこれに応じなかった。⑥会社は、X1が業務指示に従わないことについて、同人を賞罰委員会に付議する旨通知したところ、X組合は、当該付議する件を議題として、団体交渉を申し入れたが、会社はこれに応じなかった。⑦会社は、同年9月22日付けでX1を懲戒解雇した。
 このため、上記①、③、⑤及び⑥が労組法第7条2号・3号の、②が同条1号・3号の、④が同条3号の、⑦が同条1号・3号・4号の不当労働行為に当たるとして、X組合から東京都労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労委は、X組合の申立てをいずれも棄却した。X組合は、これを不服として、再審査を申し立てたが、中労委はこれを棄却した。
 X組合は、これを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、X組合の請求を棄却した。
 本件は、同地裁判決を不服として、X組合が東京高裁に控訴した事件であるが、同高裁は、控訴を棄却した。
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用(参加によって生じた費用を含む。)は控訴人の負担とする。  
判決の要旨  1 当裁判所も、控訴人の請求には理由がないと判断する。その理由は、原判決を以下のとおり改め〔抄録〕、2において、当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは、原判決「事実及び理由」欄の「第3 争点に対する判断」の1及び2に記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 〔原判決の第3の2の(2)のイ「懲戒解雇事由の有無について」の(ウ)「原告の主張の検討」の第2段落の〕次に改行して、以下の説示を加える〔要旨〕。
 「X1は、1本の原稿を執筆した以外は一切の支局長業務の遂行を拒否し、その中には、使用者の利益代表者でないことが明らかな者であっても、部下を持つ上司であれば当然に行うべきことも含まれている上、X1の有給休暇の取得や出退勤等の勤務態度も考慮すれば、X1の行為・態度は、利益代表者を肯定することになりかねないと危惧される業務のみを拒否したと見ることはできず、一従業員としてすべきことを含む業務全体を怠った。」
(2) 〔原判決の第3の2の(3)のエ「平成6年9月8日~同月15日の団体交渉申入れに対する会社の対応について」の(ア)の第1段落の〕「原告は、」の前に「会社が団体交渉を拒否したことには正当な理由があると認められる以上、団体交渉拒否が支配介入に当たるともいえない。また、」を加える〔要旨〕。
2 当審における控訴人の主張に対する判断
(1) 原判決が最高裁判例に反することについて
 X組合の挙げる日産自動車事件のように、少数組合の存在が使用者に認識されており、使用者が、これを嫌悪する余り、その組織の弱体化を生ぜしめんとの意図に基づく対応をしたと認められる事案と、本件のように、X組合の労働組合結成が会社にとって十分に認識されていない時期の会社の行為が問題となる事案とを同列に論ずることはできない。
 会社の行為がX組合を嫌悪する意図が決定的動機といえるためには、X組合結成が会社に認識される必要があり、この認識がない以上、X組合を嫌悪する意図が決定的動機と認めることはできない。そして、配転、組合機関紙回収及び団体交渉拒否の時点では、会社にこの認識が十分になかったから、これらをX組合を嫌悪しての不当労働行為と認めることができない。また、その後の会社の対応にも、会社の意図に変化があったと認めるべき事情は見いだせない。
 次に、会社がX1個人のZ組合組合員時代の活動に対する嫌悪を配転等の時点でも、強く維持し続けており、その嫌悪の意図が決定的動機になって配転等が行われたと認められるかどうかが問題となる。原判決の判示するとおり、X1は、配転の2年前、平成4年2月に論説委員になったため、非組合員となり、その後はZ組合の活動には関わっておらず、平成5年6月段階では、論説委員にとどまりたい希望を述べていたなどから、Z組合時代のX1の活動に対する嫌悪が残っていたとしても、これが配転以降の会社の行為の決定的動機になったと認めることは困難であり、これを認めるに足りる証拠はない。
(2) 会社による団体交渉拒否の不当労働行為性について
 ア 平成6年1月28日~同年2月3日の団体交渉拒否について
 会社がX1について、使用者の利益を代表する者に当たるのではないかとの疑念を抱いていたこと、そのことから、X1が結成した労働組合についても法適合性に疑問を抱いていたことは認められるものの、他にもいくつかの疑点があったとされ、このことを主たる理由として団体交渉を拒否したとは認めることができない。
 また、労組法7条2号の労働委員会の命令は、使用者の悪質な行為を制裁するものでないことは、X組合の指摘するとおりであるが、団体交渉拒否に「正当な理由」がないことが不当労働行為の成立要件である以上、会社がX組合の組合としての法適合性に疑義を抱いたことが不合理とはいえないから、その疑義が払拭されるまでのわずかな期間、直ちに団体交渉に応じなかったことは、やむを得なかったとした原審の判断は、不当とはいえない。
 イ 平成6年2月8日~同月14日の団体交渉拒否について
 常務の審問調書及び常務とX1とのやりとりを録音したテープの反訳書によれば、X1は、議事録に労使双方の代表者が押印することを求めたと認定した原審の認定には、誤りはない。
 また、反訳書の発言に照らせば、電話での常務とX1の会話は、正式な団体交渉について交わされていることが認められる。そして、X1は、常務がX組合の示した2条件〔注;①団体交渉の開催場所を会社内とすること、②議事録を作成して労使双方の代表者が署名押印すること〕について会社側にも提案があると述べたのに対し、「決裂だ」と述べており、X1が2条件を会社が受け入れない限り団体交渉をしない姿勢を示したというべきである。
 ウ 平成6年3月3日~同年8月29日の団体交渉拒否について
 団体交渉を開催できなかったのは、X組合が上記2条件に固執したためと認められる。
 会社が、団体交渉拒否について、法適合性に疑義がある旨を述べていたことはX組合の主張するとおりであるが、他方、会社がこれを理由として団体交渉を拒否したものではないことは上記のとおりであって、原審の判断は、会社が明示的に述べた団体交渉拒否の理由を無視するものとはいえない。
 そして、会社は、団体交渉が開けない以上、解決は都労委での審理に委ねざるを得ない旨を表明したにすぎないと認められ、都労委で係争中であることを主たる理由として団体交渉を拒否したとは認められない。
 エ 平成6年9月8日~同月15日の団体交渉拒否について
 〔平成6年〕9月15日付け団体交渉申入書には、「場所は、貴社役員応接室とする。団体交渉議事録を取りながら開催すること。」と記載され、この申入れにおいても、それまでと同様、開催場所を会社内とし、正規の議事録を作成することを団体交渉の条件としていることが明らかであり、提案にとどまると認めることはできない。
 また、X組合が都労委に提出した組合規約には施行年月日が記載されていず、会社としては、疑義が完全に解消されたとはいえない。
 オ 団体交渉拒否による支配介入の主張について
 団体交渉を拒否したことが労組法7条2号の不当労働行為に当たらない以上、これが同条3号の不当労働行為に当たるという余地はない。
 また、団体交渉手続は、労使間の合意によって決めるべきで、X組合と会社間では、合意形成のための交渉が、X組合の前記2事項を絶対的な条件とする態度を貫いたことにより、決裂したままとなっていたから、その結果、合意が形成され労働協約が締結されているZ組合との間に団体交渉手続に差異が生じたことは、やむを得ない。
(3) 懲戒解雇の不当労働行為性について
 ア 答弁書についての検討の欠落について
 X組合は、原審が、答弁書における会社の主張を踏まえ、X1が千葉支局長の業務を行うためには、団体交渉において、支局長業務を行っても利益代表者性の根拠とはしないという確約を会社からとる必要が生まれたという趣旨の主張を欠落させたことが誤りであり、その結果、懲戒解雇の不当労働行為性の判断を誤ったと主張する。
 この主張及び判断を欠落させたことが懲戒解雇の不当労働行為性の有無の判断を誤らせる原因となるものではない。
 イ 平成6年2月8日時点での事実に関する判断の誤りについて
 X組合は、X1が、平成6年2月8日に、配転に異議を唱えつつ千葉支局長として赴任した趣旨を、X1の承諾は、懲戒解雇を恐れてされたもので、「当面は記者職しかできません。」と述べて、千葉支局長発令の撤回を求め、異議を唱えながらのもので、千葉支局長の業務遂行を確約したものではないから、配転の適法性を争う権利を留保することを明示しつつ、千葉支局長としての業務を担うことを了承したと原審が認定したことは誤りと主張する。
 原審は、X1が常務から「異議を唱えつつの赴任であっても発令に従って支局長として赴任するから、支局長としての職務は十分に遂行してもらいたい。」と言われたのに対し、「うん。」、「それはいいですよ。」と答えた事実を認定した上で、X1が千葉支局長としての業務を行うことを了知したにもかかわらずこれを行わなかったという認定をした。X1の「当面、記者職しかできません。」という発言は、販売・開発局長から勤務日時に異議がないかを問われたのに対する答えの中で、厳密に勤務日時に関する規定に従わなければならないとまで言われるのは困るという理由として述べられたにすぎず、その後改めて常務の上記確認に対し、X1が上記のように答えたから、原審の認定に誤りはない。
 ウ X1が原稿を執筆しなかったことについての正当な理由について
 X組合は、原審が、X1の業務怠慢の1つとして、連載記事と夏季特別版の各原稿を執筆しなかったことを挙げたことが誤りと主張し、X1の取材によれば執筆予定の内容が事実と異なっていたので、テーマの再検討等を求めたが、拒否されたため、記者としての信念に基づき書くべきではないと判断せざるを得なかったと主張する。
 しかし、内容が事実と異なるものとして予定されていたことを認めるに足りる証拠はなく、むしろ、テーマが示されただけで、内容まで指示されていないなど、また、仮に会社が考えていた内容がX1の取材結果と相違しているとしても、X1としては、上記テーマの下で、事実の沿った記事を執筆できたとみられ、X組合の上記主張は、採用できない。
 エ 千葉支局長業務の重要性についての過大評価について
 X組合は、原審が、千葉支局長の業務は重要なもので、代替性のあるものとはいえないとしたことが誤りとして、その認定根拠は薄弱と主張する。
 しかし、原審の挙げる業務の多くは、千葉支局の長として当然に担うべき業務であり、かつ、長以外が担うことの想定し難い業務と認められ、原審の認定及び判断は不当ではない。
 オ 比例原則違反について
 原判決が認定するように、X1は、発令以降約7か月間、1本の記事を執筆したのみで、それ以外には千葉支局長としての業務を全く遂行しなかったのであり、懲戒解雇が裁量権の範囲内にあることは明らかで、相当性を欠き、比例原則に違反するとはいえない。
 カ 賞罰委員会の手続違反について
 X組合は、原審が、X組合の、賞罰委員会に関して数多くの手続違反があるとの主張を排斥したことが誤りと主張する。
 しかし、同主張も、原審における主張の繰り返しであり、理由がないことは、原判決の説示するとおりであり、それらを総合的に判断しても、変わるものではない。
 キ 当初申立てに対する報復の意図について
 当初申立て直後の会社の回答書から報復の意図を読み取ることは困難である。賞罰委員会の手続違反については上記カのとおりである。また、救済命令申立てに対する審理が行われている最中に申立て組合の委員長を懲戒解雇することが、直ちに労組法7条4号の不当労働行為に当たるものではないし、報復的意図も推認されない。
 ク S新聞社の関与について
 X組合は、懲戒解雇は、S新聞社が、X1及びX組合を嫌悪し、方針を決定し、会社に行わせたものであり、不当労働行為意思によると主張する。
 しかし、S新聞社の意向が会社の意思決定に影響していたことは、うかがわれるところであるが、これが不当労働行為意思によることを認めることまではできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
(4) 配転の不当労働行為性について
 ア 配転の本質について
 X組合は、配転について、原審の認定した会社の改革、特に千葉支局を独立させて新しく専任支局長を置くことは、会社のリストラ計画の根幹である諸経費削減に逆行するもので、必要性はなかったこと、配転は、会社が、経営危機における組織改革という状況を利用して、X1を排除する目的の下に行ったもので、X1の組合活動、ひいてはX組合に対する嫌悪が決定的動機と主張する。
 しかし、同主張は、原審における主張の繰り返しであるところ、経営危機の打開のための方策は、会社の経営判断にかかるものであって、千葉支局長を新設する必要性はなかったといえない。
 イ 人選の合理性について
 X組合は、原審の認定した、X1を千葉支局長に選定した理由が誤っているとして、X1の提出したレポートにおける提言が常務の示唆によるものであってX1自身の見解ではなかったと主張するとともに、仮にX1を配転するなら横浜支局が適任であったなど主張する。
 しかし、X1が総・支局体制に関する中間レポートを提出した当時は、X1はZ組合の組合員であり、当時、X1はZ組合の主流派及び会社と厳しい対立関係にあったから、中間レポートの内容に会社の意向が反映されているとしても、これがX1の意に反するものであったとは認め難い。すると、作成提出したレポートも、X1の意に反するということは困難である。そして、配転の約半年前の定期人事異動では、会社は、X1に対して、千葉支局長のほか、浜松支局長、横浜支局長などのポストを示して転勤の意向を打診したことが認められ、千葉支局長への異動に固執していたわけではなかったことが認められるから、レポートの内容について、常務が千葉を明示するよう示唆したことは、上記判断を左右しない。
 ウ 不当労働行為意思の推認について
 X組合は、原審が、配転時に、会社がX1を疎ましく思ったり、X1に対する報復の意図をもって配転をしたとは考え難い上、この点を認めるに足りる証拠もないとしたことが誤りであるとして、原審の判断は、20年間の積み重ねにより形成された会社のX1に対する嫌悪意思が、わずか2年間、X1がZ組合の活動に関われなくなったことをもって消滅したと認定するに等しいと主張する。
 しかし、会社のZ組合時代のX1の活動に対する嫌悪が残っていたとしても、これが配転の決定的動機と認められないことは、既に判示したとおりである。
 エ X組合の結成、準備の事実と会社の認識について
 X1がX組合の結成準備会を開催した事実、組合結成準備会ニュース1号を時事通信社の記者がファクシミリで送信した事実などから、会社がX組合の結成準備ないし結成の事実を察知していたと推認できない。むしろ、X1らは、X組合の結成を正式な通告までは秘密にすることを申し合わせていたと認められ、このことは、結成が会社に知られているとは考えていなかったことをうかがわせる。
 オ 不当労働行為意思の存在について
 X組合は、X組合の主張する事情を考慮すれば、配転は不当労働行為意思に基づくというべきであり、これに反する原審の判断は誤りと主張する。
 しかし、そのような判断をできないことは既に述べたとおりである。
(5) 組合機関紙回収について
 ア 原審の事実認定の誤りについて
  (ア) 組合機関紙配布の態様について
 X組合は、原審が、組合機関紙配布の態様について、「床に落ちているものもあった。」と認定したことが誤りと主張する。
 しかし、都労委の審問における常務の証言は、曖昧ではなく、特に「床に落ちているものもあった。」と証言している点は推測ではないから、信用性に問題があるとはいえず、他にこれを覆すに足りる証拠も見当たらない。
  (イ) 組合機関紙配布当時の従業員の勤務状況について
 X組合は、原審が、X1ら3名が組合機関紙配布を開始した午後6時頃は、多数の従業員が就業する忙しい状況にあったと認定したことが誤りと主張する。
 しかし、常務の都労委における審問調書によれば、会社における降版時刻は午後9時20分頃であり、午後6時頃は、支局からの原稿を受け取る部門では当然に仕事が残っている時間帯であり、その他の業務部門でも残務整理をしている者が残っているなど、これを覆すに足りる証拠はなく、原審の認定に誤りがあるとはいえない。
 イ 原審の判断の誤りについて
 X組合は、機関紙配布行為は、実質的に企業実施に直接の影響を及ぼすわけではなく、物的施設管理権を根拠に労働組合の活動に対する制約を認めること自体が誤りであり、仮に、ある程度の制約は認めざるを得ないとしても、原審は、労働組合の団結権、表現の自由が、憲法上の保障に基づく重要な権利であることについてほとんど触れず、他方で、会社側の事情ばかりを考慮要素として挙げ、不当と主張する。
 しかし、企業施設内における機関紙配布行為は、企業施設の管理権の合理的な行使によって制約を受けると解することが、憲法21条、28条に反するといえないことは、原判決の説示するとおりである。
 ウ X組合の主張に対する検討の誤りについて
  (ア) X組合は、原審が、会社施設内での文書配布についてのみ事前許可を求める就業規則は、検閲又はそれに準ずるような規制を内容とするものとは解されず、同規定が、憲法の上記各規定との関係で無効と解することはできないと判断したことが誤りと主張する。
 しかし、会社施設内での文書配布につき事前許可を求めることは、施設管理権の合理的行使の範囲内にあり、X組合にとってその配布の利益が大きいからといって、これを無視し得るものではない。
  (イ) X組合は、Z組合には労働協約で組合機関紙の自由な配布を許しながら、X組合の組合機関紙配布について許可制を適用するのは、中立保持義務違反、組合差別に当たり、労働協約は労組法17条によりX組合にも適用されるから、原審の挙げる理由は差別的取扱いをする理由とはならないと主張する。
 しかし、同規定により拡張適用される労働協約の範囲は、労働条件及び労働者の待遇について定めた規範的部分に限られると解すべきであり、組合の配布物に関する規定はこれに当たらないから、労働協約のこの部分の効力は、Z組合の組合員でないX1ら3名には及ばないと解される。また、少数組合であるX組合に対しても、労働協約の効力は及ばないと解すべきである。そして、原審の認定した事実関係の下では、会社の行為がX組合の結成に対する支配介入に当たるとはいえない。
  (ウ) X組合は、原審が、組合機関紙配布は会社内の秩序を乱すおそれがあったとしたことが誤りと主張する。
 しかし、多数の従業員が就業している中で行われたこと、配布された組合機関紙が床に落ちていたものもあったことは、認定の根拠を欠くとはいえない。また、X1ら3名は、就業中の従業員がいる他社を含む職場に立ち入っており、従業員の業務遂行が妨げられないとはいえない。
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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成6年(不)第9号 棄却 平成18年10月3日
中労委平成18年(不再)第72号 棄却 平成20年4月16日
東京地裁平成20年(行ウ)第681号 棄却 平成22年9月30日
最高裁平成25年(行ツ)第64号・平成25年(行ヒ)第82号 上告棄却・上告不受理 平成25年10月15日
 
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