労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  関西宇部 
事件番号  東京高裁平成23年(行コ)第376号 
控訴人  全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部 
被控訴人  国(処分行政庁:中央労働委員会) 
被控訴人補助参加人  株式会社関西宇部 
判決年月日  平成24年3月14日 
判決区分  棄却 
重要度  重要命令に係る判決 
事件概要  1 組合が会社に申し入れた団体交渉要求事項のうち、①会社が加盟し団体交渉を委任する経営者会と、組合を含む5労組との間で締結した平成20年度春闘協定における運賃履行問題、②会社・組合間の平成20年1月29日付け協定書の人員補充問題について、会社が団体交渉を拒否したことが、不当労働行為に当たるとして、大阪府労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審大阪府労委は、申立てを棄却した。
 組合は、これを不服として、再審査を申し立てたが、中労委は、再審査申立てを棄却した。
 これに対し、組合は、これを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、組合の請求を棄却した。
 本件は、これを不服として、組合が東京高裁に控訴した事件であるが、同高裁は、控訴を棄却した。
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。  
判決の要旨  1 当裁判所も、本件命令は適法であり、控訴人の本件請求には理由がないと判断する。その理由は、2のとおり当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほか、原判決「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。
2 当審における控訴人の主張に対する判断
(1) 運賃履行問題について
 ア 組合は、運賃履行問題が義務的団交事項に該当する根拠として、組合が産業別労働組合として、生コン輸送企業で働く労働者を含む様々な形態で就労する労働者を組織し、労働組合の団結目的達成のために必要な事項であれば広く義務的団交事項に含まれると解すべきで、輸送運賃は、産業別労働者の賃金に重要な影響を与え、会社に雇用される組合員の労働条件に重大な影響を及ぼす事項と主張する。
 しかし、一企業である会社が義務的団交事項として団体交渉義務を負うのは、原判決が説示するように、当該使用者が雇用する労働者の労働条件その他の待遇や当該団体的労使関係の運営に関する事項で、使用者が決定できるものに限られると解され、組合が産業別労働組合として生コン輸送企業で働く労働者等様々な形態の労働者を組織しているからといって、会社の義務的団交事項を、会社の雇用していない労働者の労働条件に関する事項にまで拡張する理由があるとはいえない。
 なお、組合は生コン輸送企業の労働条件が悪化すれば、必然的に、生コン製造企業の労働条件も悪化する関係にあると主張する。
 しかし、前者の労働条件が後者のそれに影響を及ぼすことがあるとしても間接的で不確定なものにとどまると考えられるので、その影響をもって会社の義務的団交事項とすべき理由とはならない。
 イ 組合は、平成20年度春闘協定(輸送運賃)の履行問題についての合意が、経営者会加盟のA会員である生コン製造企業に値上げを義務付けることを前提として、当事者労働組合である組合が会社に対し、履行を求め、或いは履行状況の報告を求めることができる地位にあると主張する。
 経営者会加盟のA会員は、経営者会に組合を含む関連5労組との交渉権・妥結権を委任していることが認められるが、前記春闘協定の輸送運賃について成立した合意は、運賃履行問題について、「燃料高騰、NOX対策、賃上げ等の要因による運賃引き上げについての指針を出す」というもので、経営者会加盟会員に個別的団体交渉を義務付けるものとは解されない。そして、これを受けて経営者会により作成された指針が、加盟会員に輸送運賃の値上げを要請するものであるとしても、加盟会員の経営状況に差異があり得る以上、値上げを義務付けるものと解するには疑問がある。
 そして、組合が前記春闘協定の交渉当事者である経営者会に対して、指針の履行状況の報告を求めることができるとしても、加盟会員である会社に対して、直接その義務として履行状況の報告を求めたり、義務的団交事項とすることを要求できるとまで解すべき理由はない。
 ウ 組合は、刑事事件判決が、会社は、組合に対し、妥結した輸送運賃の値上げ金額及び実施時期を回答する義務を負っていたことを認めていると主張する。
 しかし、刑事事件第1審判決での会社の回答義務についての説示は、当該事件の被告人らの行為の正当性の判断をする上でのものに過ぎず、会社の不当労働行為について判断したものでないから、同判決の説示をもって、会社の団体交渉義務の根拠とすることは相当でない。
 エ 組合は、仮に原判決のいうように「輸送運賃を引き上げることに努めることを合意した」のみの合意であるとしても、5労組と協定を締結したから、会社は組合の質問に対して履行状況を回答すべき責任があると主張するが、法律的な根拠が不十分で、採用できない。
(2) 人員補充に関して
 組合は、会社が、人員補充をするための「具体的な策」を全く示すことなく、誠実に交渉していたとは到底言えず、平成20年5月9日の折衝で、会社が事実関係について組合に確認を求め、組合が確認すると返答して会談が終わっているから、交渉決裂ということはできないと主張する。
 しかし、組合と会社との交渉経過等を踏まえると前記事務折衝までに人員補充問題に関する議論は、それ以上交渉を重ねても進展する見込みがない段階に至ったことは、原判決が説示するとおりで、組合の主張を採用できない。
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成20年(不)第49号 棄却 平成21年12月8日
中労委平成21年(不再)第53号 棄却 平成22年9月15日
東京地裁平成22年(行ウ)第761号 棄却 平成23年10月31日
 
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