労働委員会関係裁判例データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[判例一覧に戻る] [顛末情報]
概要情報
事件名  関西宇部 
事件番号  東京地裁平成22年(行ウ)第761号 
原告  全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部 
被告  国(処分行政庁:中央労働委員会) 
被告補助参加人  株式会社関西宇部 
判決年月日  平成23年10月31日 
判決区分  棄却 
重要度  重要命令に係る判決 
事件概要  1 組合が会社に申し入れた団体交渉要求事項のうち、①会社が加盟し団体交渉を委任する経営者会と、組合を含む5労組との間で締結した平成20年度春闘協定における運賃履行問題、②会社・組合間の平成20年1月29日付け協定書の人員補充問題について、会社が団体交渉を拒否したことが、不当労働行為に当たるとして、大阪府労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審大阪府労委は申立てを棄却した。
 組合は、これを不服として再審査を申し立てたが、中労委は再審査申立てを棄却した。
 本件は、これを不服として、組合が東京地裁に行政訴訟を提起した事件であるが、同地裁は組合の請求を棄却した。
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。  
判決の要旨  1 運賃履行問題に関する団体交渉拒否の不当労働行為該当性について(争点1)
(1)ア 労組法の目的が「労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続を助成すること」であること(同法1条1項)に照らすと、使用者が同法によって団体交渉をすることを義務づけられる、いわゆる義務的団交事項は、団体交渉を申し入れた団体の構成員であり、かつ、当該使用者が雇用する労働者の労働条件その他の待遇や当該団体的労使関係の運営に関する事項であって、使用者が決定することができるものに限られ、当該団体の構成員であっても、当該使用者が雇用しない労働者の労働条件その他の待遇は、原則として義務的団交事項の対象とはならないと解するのが相当である。
 本件の運賃履行問題は、生コン製造会社である会社がその取引先である生コン輸送会社に対して支払う運賃の値上げに係る事項であるから、組合の構成員であり、かつ、会社が雇用する労働者の労働条件その他の待遇や当該団体的労使関係の運営に関する事項には当たらない。
 イ 組合は、産業別労働組合として、生コン産業全体の労働条件向上のために組合活動を行っており、現に、関連5労組と経営者会及びその会員企業との間で地域における産業別労働条件形成のための集団的交渉が続けられてきたと主張する。
 しかし、使用者が任意に団体交渉の対象とした事項が、直ちに労組法によって義務的団交事項になるものではあり得ない。
 また、組合は、会社が生コン輸送会社の雇用する労働者に係る労働条件についても団体交渉を義務づけられると主張する。
 しかし、上述の労組法の目的に関する規定の文理に照らしても根拠を欠く主張である。
(2) 組合は、運賃履行問題は、会社の雇用する労働者の労働条件にも影響を及ぼす旨主張する。
 しかし、およそ企業活動は、財務状況に影響を与えることによって、その雇用する労働者の労働条件に間接的な影響を与えるのであり、労組法がそのような間接的な影響を及ぼすだけの企業活動のすべてを義務的団交事項にしたと解することはできない。運賃履行問題は、直接には会社が雇用する労働者の労働条件に影響を及ばさないから、義務的団交事項と解することはできない。
(3) 組合は、春闘協定書で、運賃履行問題を団体交渉の対象とする旨合意したとして、義務的団交事項の根拠とするかのごとく主張する。
 しかし、義務的団交事項に該当しない事項を団体交渉の対象とするとの合意違反行為が、直ちに不当労働行為を構成するか自体に問題がある。仮にその点を措くとしても、春闘協定書は、経営者会と関連5労組との間での合意内容を記載したものであるが、輸送運賃に係る記載は「燃料高騰、NOX対策、賃上げ等の要因による運賃引き上げについての指針を出す」との文言にとどまるから、経営者会会員企業が輸送運賃を引き上げることに努めるべきことを合意した以上のことは合意していないと解すべきであり、他に、組合が主張する合意を認定するだけの証拠は存しない。この意味においても、運賃履行問題が、労組法上の義務的団交事項に該当するとの組合の主張には理由がない。
(4) 以上によれば、会社が、20年7月18日付け回答書によって、義務的団交事項に該当しない運賃履行問題についての団体交渉を拒否したことは、労組法7条2号の不当労働行為に当たらない。
2 人員補充問題に関する団体交渉拒否の不当労働行為該当性について(争点2)
 組合・会社間では、20年1月29日団交の段階で直ちに人員補充を実現することは不可能との共通認識となっており、会社は、一貫して人員補充の阻害要因を説明し、組合の求めに応じ資料を示して、具体的説明を行うなどし、その後、双方とも人員補充問題に関する具体的な打開策を打ち出せないで議論は平行線を辿り、これ以上交渉を重ねても進展する見込みがない段階に至ったものと認められる。
 したがって、会社が、20年7月18日付け回答書によって、人員補充問題についての団体交渉を拒否したことには、正当な理由があり、労組法7条2号の不当労働行為に当たらない。
その他   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成20年(不)第49号 棄却 平成21年12月8日
中労委平成21年(不再)第53号 棄却 平成22年9月15日
東京高裁平成23年(行コ)第376号 棄却 平成24年3月14日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約216KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。