概要情報
事件名 |
太陽自動車 |
事件番号 |
東京高裁平成22年(行コ)第262号
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控訴人 |
太陽自動車株式会社 |
被控訴人 |
国(処分行政庁:中央労働委員会) |
被控訴人補助参加人 |
太陽自動車労働組合 |
判決年月日 |
平成22年12月1日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
重要命令に係る判決 |
事件概要 | 1 会社が、①組合への便宜供与(組合費のチェックオフ、組合事務所の賃料負担等)を廃止したこと及びその再開を拒否したこと、②組合との団体交渉において、上記①の便宜供与の再開問題に関し誠実に対応しなかったこと、③組合員に対する賃率(営業収入額に対する賃金の支給率)の引上げを行わなかったことが、不当労働行為に当たるとして、東京都労委に救済申立てがあった事件である。 2 東京都労委は、団体交渉における便宜供与の再開問題に関する会社の対応は不当労働行為であるとして、会社に対し、①組合が申し入れた便宜供与の再開に向けての団体交渉に誠意をもって応ずること、②文書掲示、③履行報告を命じ、その余の申立てを棄却ないし却下した。
会社及び組合は、これを不服としてそれぞれ再審査を申し立てたところ、中労委は各再審査申立てをいずれも棄却した。
これに対し、会社は東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は会社の請求を棄却した。
本件は、同地裁判決を不服として、会社が東京高裁に控訴した事件であるが、同高裁は控訴を棄却した。 |
判決主文 |
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。 |
判決の要旨 |
1 当裁判所も、本件命令は適法であり、控訴人の本件請求には理由がないと判断する。その理由は、2のとおり当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほか、原判決「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。 2 当審における控訴人の主張に対する判断
(1) 本件予備的申立てについて
控訴人は、労働委員会が審査の計画を定めた本件審査手続において、本件予備的申立てを認めることは労組法27条2項、27条の6の趣旨を没却することになり、不適法である旨主張する。
この点についての当裁判所の判断は、原判決「第3 当裁判所の判断」の1に記載のとおりであり、原判決の判断に誤りはない。 同法27条2項は、「労働委員会は、前項の申立てが、行為の日(継続する行為にあってはその終了した日)から1年を経過した事件に係るものであるときは、これを受けることができない。」と規定しており、「事件」の内容については、救済申立書記載の「不当労働行為を構成する具体的事実」(労働委員会規則32条2項3号)によってその範囲が画されるものと解される。
組合の不当労働行為救済申立書には、「7項目合意を無視する不誠実団交」として、本件予備的申立てにかかる不当労働行為を構成する事実が具体的に記載されているから、初審の審査手続中に当該不当労働行為に対する救済申立てを追加した本件予備的申立てを都労委が審理し判断したことが同法27条2項の趣旨を没却する違法なものであるとはいえない。 また、審査の計画の規定(同法27条の6)は、証拠調べ等を適正迅速化するための規定であると解されるところ、審査計画が定められた場合に、審理の動向により争点及び証拠調べの追加変更をすることを禁ずるものではないと解され、審査計画の運用は労働委員会の裁量にゆだねられていると解される(同条3項、4項参照)。
都労委が本件予備的申立てを認めて審理判断したことが同法27条の6の趣旨を没却するものとはいえない。 (2) 誠実交渉義務違反について
控訴人は、訴訟の場で互いの主張理由の根拠を説明し尽くしているのであるから、団体交渉で具体的な説明をしないことが不誠実とまで断ずることはできないと主張する。
しかしながら、①使用者が労働者の代表者と直接交渉する団体交渉と法的な論争の場である訴訟とはその制度自体が異なるのであり、訴訟における主張をもって、団体交渉における説明等に代えることはおよそできないと考えられる。更に②控訴人の不当労働行為として都労委に認定されたのは、平成14年11月21日以降の団体交渉に誠意をもって応じなかった行為であるところ、組合らが控訴人らに対して7項目合意の実施を意図的に遅らせたこと等が不法行為に該当するとして損害賠償訴訟を提起したのは、平成15年12月15日であるから、訴訟における主張によって、この間の誠実交渉義務が尽くされることはあり得ない。 |
その他 |
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