労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  太陽自動車 
事件番号  東京地裁平成21年(行ウ)第364号 
原告  太陽自動車株式会社 
被告  国(処分行政庁:中央労働委員会) 
被告補助参加人  太陽自動車労働組合 
判決年月日  平成22年7月22日 
判決区分  棄却 
重要度  重要命令に係る判決 
事件概要  1 会社が、①組合への便宜供与(組合費のチェックオフ、組合事務所の賃料負担等)を廃止したこと及びその再開を拒否したこと、②組合との団体交渉において、上記①の便宜供与の再開問題に関し誠実に対応しなかったこと、③組合員に対する賃率(営業収入額に対する賃金の支給率)の引上げを行わなかったことが、不当労働行為に当たるとして、東京都労委に救済申立てがあった事件である。
2 東京都労委は、団体交渉における便宜供与の再開問題に関する会社の対応は不当労働行為であるとして、会社に対し、①組合が申し入れた便宜供与の再開に向けての団体交渉に誠意をもって応ずること、②文書掲示、③履行報告を命じ、その余の申立てを棄却ないし却下した。
 会社及び組合は、これを不服として再審査を申し立てたところ、中労委は棄却した。
 本件は、これを不服として会社が東京地裁に行政訴訟を提起した事件であるが、同地裁は会社の請求を棄却した。
判決主文  1 原告の請求を棄却する。(中労委命令を支持)
2 訴訟費用は、補助参加によって生じた費用も含め、原告の負担とする。
判決の要旨  1 争点(1):本件予備的申立てが申立期間を徒過したものとして不適法か
 労働組合法27条2項が、請求期間の起算点を行為の日としていることも併せ考慮すれば、不当労働行為事件の申立てに係る請求期間の徒過の有無については、申立人が不当労働行為を構成するとして主張した不当労働行為を構成する具体的事実(同規則32条2項3号)として申立書に記載された事実のあった日から1年を経過しているか否かによって判断すべきである。そしてこのような判断枠組みに基づいて請求期間を徒過していないと判断し得る場合、その後、申立人が同一の不当労働行為を構成する具体的事実に基づいて請求する救済の内容を追加・変更したとしても、不当労働行為事件としては同一のものとして取り扱われるべきであり、請求期間徒過の問題は生じないものと解すべきである。
 組合が不誠実な団体交渉と主張する事実のうち、平成14年10月29日以降の部分については、請求期間を徒過しておらず、本件予備的救済の申立て(原告がチェックオフ、組合事務所の賃料負担、会議室及び施設利用等の便宜供与を廃止したこと並びにその再開を拒否したことに関する団体交渉において、原告が誠実な対応をしなかったことが、不当労働行為に該当するとして、本件便宜供与の回復に向けての団体交渉に誠意を持って応じること及びポストノーティスを求めて、当初の請求内容を予備的に変更した救済命令の申立て)も、請求期間徒過の問題を生じない。
2 争点(2):本件便宜供与の再開に係る団体交渉での原告の対応が不誠実な団体交渉に当たるか 
 使用者には、団体交渉義務(労働組合法7条2号)の内容として、組合に対して誠実な対応を通じて合意達成の可能性を模索する誠実交渉義務があり、使用者は、単に労働者の代表者との団体交渉に応ずれば足りるのではなく、その要求や主張に対し、その具体性や追求の程度に応じた回答や主張をし、必要に応じて当該回答や主張の論拠を示したり、資料を提示する義務がある。
 本件便宜供与再開に係る団体交渉での原告の態度は、①平成14年11月21日及び同年12月16日開催の02秋季団交で、原告は具体的な回答をせず、②平成15年4月14日開催の第2回03春季団交で、原告はその理由や根拠を十分に説明していない等、これらの団体交渉での原告の一連の発言や態度は、本件便宜供与再開を求める組合の要求や主張に対し、単に否定的な結論のみを述べたり、当該結論に付加して若干の形式的な理由を述べるにすぎず、当該結論の論拠や資料を示す等して説明を尽くしたり、十分な協議をしたものとはいえないことから、原告は組合に対して誠実な対応を通じて合意達成の可能性を模索する努力を怠ったものというべきである。よって、本件団交は、原告が誠実交渉義務に違反した不誠実な団交であった。
 また、誠実交渉義務違反の有無は、各団体交渉事項ごとに問題になり得るものであって、団体交渉事項の一部について合意が得られたからといって、他の事項についての誠実交渉義務を免れる理由はない。
業種・規模   
掲載文献   
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成15年(不)第98号 一部救済 平成19年11月20日
中労委平成19年(不再)第70号・第74号 棄却 平成21年6月17日
東京高裁平成22年(行コ)第262号 棄却 平成22年12月1日
 
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