労働委員会関係裁判例データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[判例一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件名  四国牛乳輸送 
事件番号  徳島地裁平成21年(行ウ)第15号 
原告  四国牛乳輸送株式会社 
被告  徳島県(処分行政庁:徳島県労働委員会) 
被告補助参加人  全日本建設交運一般労働組合関西支部
個人8名 
判決年月日  平成22年9月17日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 X組合の組合員8名が労働基準監督署に労働基準法違反を申告して以降、①Y会社が同組合員8名のみには、休日の配車を行わず、賃金の減少をもたらしたこと、②X組合とY会社の間であっせんが行われ、配車問題について労使で誠意をもって協議するとの協定を締結したが、それを受けて行われた団体交渉において、会社が現状の配車を続けるとの回答に終始し不調に終わったこと、③同組合員8名を長期間経済的に不利益を伴う状態に置くことにより組織の動揺や弱体化を図ろうとしたことが、不当労働行為に当たるとして徳島県労委に救済申立てがあった事件である。
2 徳島県労委は、①組合員8名に対する休日の配送業務について、申立人ら以外の乗務員と公平に取り扱うこと、及び②休日の配送業務に従事していたなら得られたであろう賃金相当額と既支払賃金額との差額を支払うことを命じ、③その余の申立てを棄却した。
 本件は、これを不服として、Y会社が徳島地裁に行政訴訟を提起した事件であるが、同地裁はY会社の請求を棄却した。
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
判決の要旨  1 争点(1):Y会社が組合員8名に対して休日配送の指示をしなかったことは不当労働行為にあたるか
(1) 休日配送の指示と支配介入
 休日配送は、時間外労働であり、一般的にいえば従業員に時間外労働を命ずることが会社の義務であるわけではない。しかし、残業手当が従業員の賃金に対して相当の比率を占めているという労働事情のもとでは、長期間継続して残業を命ぜられないことは従業員にとって経済的に大きな打撃となるものであるから、同一部門における併存組合のいずれの組合員に対しても残業を命ずることができる場合において、一方の組合員に対しては一切残業を命じないという取扱上の差異を設けるについては、合理的な理由が肯定されない限り、差別的不利益取扱いであり、同時に、同組合員を経済的に圧迫することにより組合内部の動揺や組合員の脱退等による組織の弱体化を図るものとして、その所属組合に対する支配介入を構成する。
 もっとも、各組合は、それぞれ独自に使用者との間で労働条件等について団体交渉を行い、労働協約を締結し、あるいはその締結を拒否する権利を有するのであるから、時間外労働に関し、取扱いに差異を生じることになったとしても、それは、各組合が異なる方針ないし状況判断に基づいて選択した結果によるものである。
 したがって、使用者が、団体交渉において、労働組合の団結権の否認ないし弱体化を主な意図とする主張に終始し、右団体交渉が形式的に行われたにすぎないものと認められる特段の事情のない限り、使用者が、団体交渉の結果により、時間外労働について、併存する組合の組合員間に取扱上の差異を生ずるような措置を採ったとしても、原則として、不当労働行為の問題は生じないと解するべきである。
(2) 本件休日配車における差異が団体交渉の結果であると認められるか
 ①Y会社はZ組合との間では、平成20年3月20日に所定休日日数以内の休日取得は有給休暇としての取扱いはしない旨の確認書を、同年5月20日には協定書を締結しているにもかかわらず、X組合に対して、同年6月11日の団体交渉終了時まで確認書及び協定書の内容について説明するなどし、Y会社がX組合に対してZ組合と締結した確認書あるいは協定書の締結に応じれば休日配車を再開する旨の提案をすることもなかったのであるから、Y会社がX組合に対し、休日配車についての団体交渉を申し入れたとは認められない。
 そして、②X組合が徳島県労委にあっせんの申し入れをし、実現した同日の団体交渉の場においても、Y会社代表者は、休日出勤については労働基準監督署の指示には従うが、配車は会社の裁量に属するとの考えを述べ、20分足らずで協議が終了するなど、実質的に団体交渉が行われたとは認められない。また、③6月11日の団体交渉終了後に、Y会社はX組合に協定書を手渡したが、何ら説明などをしなかったのであるから、X組合が、協定締結を拒否したとの事実も認定できない。
 以上からすると、本件休日配車についての取扱いの差異が、X組合とY会社との間の団体交渉の結果であるとは認められない。
(3) 本件休日配車における差異に合理的理由があるといえるか
 ①Y会社とX組合との間に、所定休日数以内の休日取得は有給休暇としての取扱いはしないとの労使合意については、平成11年3月30日のX組合との協定書には明示されておらず、X組合の組合員らも十分認識しないままであったこと等から、そのような労使合意が存在していたとは認められないこと、②労働基準監督署への申告については、不適法とまではいえないことから、当該申告した対応をもって、協定拒否が明白であるとは認められないこと等の事情によれば、本件休日配車に係る差異に合理的理由があるとは認められない。
(4) 組合員8名を休日配車から外す意図について
 ①Y会社は平成20年3月19日の労働基準監督署による立入調査を事前に知らなかったこと、②Y会社とZ組合との合意の締結が翌日の同月20日であることからすると、組合員8名を休日配車から外す意図があったとまでは認定しがたい。
 しかし、仮にこの事実が認められないとしても、①本件休日配車に係る差異が、団体交渉の結果であるとは認められないこと、②本件休日配車に係る差異について合理的理由が認められないことからすると、Y会社が組合員8名に対し休日配車を取りやめ、その後長期間休日配送の指示を行わなかったことは、不利益取扱い及び組合に対する支配介入であると認められ、これと同趣旨の本件命令には違法性は認められない。
2 争点(2):本件主文2項(バックペイ)が平成19年の賃金額平均を基準としていることの合理性
 ①Y会社が組合員8名に対し、休日配送の指示を行わなかったのは、平成20年3月20日からであり、それ以前は、正常な配車が行われていたから、配車差別が行われる以前でそれに最も近接した正常な配車が行われている時期である平成19年度の個々人の平均賃金を基準としたことに何ら裁量権の逸脱・濫用は認められない。
 また、②労働基準法26条が、使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当てを支払わなければならない旨規定しており、解雇が不当労働行為として認定された場合、解雇直近の3か月ないし12か月の平均賃金を基準として賃金相当額の支払命令が行われること、③Y会社の主張する賃金相当額の基準についての根拠についてY会社が何ら主張していないことからしても、徳島県労委の認定した賃金相当額の基準に何ら裁量権の逸脱・濫用はない。
その他   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
徳島県労委平成20年(不)第1号 一部救済 平成21年9月10日
徳島地裁平成21年(行ク)第1号 緊急命令申立ての認容 平成21年12月28日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約214KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。