労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  日本ブリタニカ 
事件番号  東京高裁平成22年(行コ)第8号 
控訴人  ユニオン東京合同 
被控訴人  国(処分行政庁:中央労働委員会) 
被控訴人補助参加人  日本ブリタニカ株式会社 
判決年月日  平成22年7月29日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 Y会社が事業閉鎖に伴いX1を含む全従業員を解雇した後、X1はX組合に加入し、X組合がY会社に対し、X1の解雇撤回及び原職又は原職相当職への復帰等を議題とする団体交渉を申し入れ、10回の団体交渉が実施されたが、本件解雇及び本件団体交渉におけるY会社の対応が、不当労働行為に当たるとして東京都労委に救済申立てがあった事件である。
2 東京都労委は、解雇に係る申立てを却下し、その余の申立てを棄却した。
 X組合は、これを不服として、再審査を申し立てたところ、中労委は、これを棄却した。
 これに対し、X組合はこれを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁はX組合の請求を棄却した。
 本件は、同地裁判決を不服として、X組合が東京高裁に控訴した事件であるが、同高裁は、控訴を棄却した。
判決主文  1 本件控訴を棄却する。(中労委命令を支持)
2 控訴費用は、補助参加によって生じた費用を含め、控訴人の負担とする。
判決の要旨  1 当裁判所も、本件中労委命令は適法であり、控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は、2のとおり付加するほか、原判決の「事実及び理由」欄の第3に記載のとおりであるから、これを引用する。
2 当審における控訴人の主張に対する判断
(1) 解雇問題と団体交渉における会社側交渉員の組合に対する対応を、切り離して扱ったことにより、謝った結論を導き出したと控訴人は主張する。しかし、本件解雇が不当労働行為に当たるか否かという問題(X1の組合活動等を嫌悪して解雇したものか否か)と、本件団体交渉が不当労働行為に当たるか否かという問題は、別個の問題である。
(2) 本件団体交渉においてY会社が決算書やシカゴ(本社)から事業閉鎖を通告された際のメールや文書等の具体的資料を提示せず、また、本件解雇回避のための努力として、事業存続のためのシミュレーションをしたり、パートナー探しをしたと回答したが、具体的な内容は説明していないから、誠実に団体交渉を行ったとはいえない旨控訴人は主張する。しかし、①Y1交渉員は、Y会社は決算を公開していないことなど決算書を提出できない理由を説明しており、決算内容は必要に応じ説明すると回答し、約80億円の繰越欠損金を説明しており、資料を提出しないからといって、不誠実な対応であるということはできない。そして、Y会社が決算内容の詳細等についての回答を拒否した事実はない。
 ②また、事業存続のためのシミュレーションやパートナー探しの具体的内容について、控訴人から質問があったことを認めるに足りる証拠はないから、Y会社が質問に対する回答を拒んだという事実もないのであって、Y1交渉員が具体的な内容を説明しなかったからといって、不誠実な対応であるとはいえない。
 ③事業閉鎖の通告の真相についても、交渉担当者がY1交渉員であってY2社長でなかったために、解明し得なかったことが具体的に存在するとは認められず、控訴人がY2社長の出席にこだわり続けたために、それ以上踏み込んだ質疑に発展しなかったものとみるべきである。
(3) 本件団体交渉において、Y1交渉員があたかも積極的に説明し、控訴人の理解を求めたかのような事実認定は誤りであると控訴人は主張する。しかし、原審は、団体交渉において、使用者側から積極的に発言しない場合には不誠実な対応に該当するとの前提に立つものではないし、Y1交渉員が、労働者側の質問を受ける前に積極的に発言したと認定したものでもない。労働者側の質問に答える方法であったからといって、不誠実な対応であるということはできない。
(4) Y2社長が本件団体交渉に出席しなかったことにつき、Y1交渉員に交渉権限があったとして、不当労働行為に当たらないとした判断が不当であり、また、そもそも、EBHSA(親会社)の決定の真偽も不明であると控訴人は主張する。しかし、Y1交渉員が、事業閉鎖、本件解雇に関する知識を持ち合わせていなかったということはできない。Y会社は、EBHSAの完全子会社であり、EBHSAの経営判断に従わざるを得ない立場であるところ、Y1交渉員は説明しており、Y2社長でなければ説明することができなかったことがあったと認めるべき根拠は見い出せない。
(5) 原審が、Y2社長の証人尋問を行わなかったことにつき、根本的な誤りであると控訴人は主張する。しかし、本件の争点につき判断するのに、Y2社長の証人尋問は必要ではない。
業種・規模   
掲載文献   
評釈等情報   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成15年(不)第17号 却下、棄却 平成18年6月20日
中労委平成18年(不再)第54号 棄却 平成20年7月2日
東京地裁平成21年(行ウ)第39号 棄却 平成21年12月7日
最高裁平成22年(行ツ)第404号・平成22年(行ヒ)第432号 上告棄却、上告不受理 平成23年6月28日
 
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