労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名 東日本旅客鉄道(千葉動労組合掲示板)
事件番号 東京高裁平成20年(行コ)第369号
控訴人 国鉄千葉動力車労働組合
被控訴人 国(処分行政庁 中央労働委員会)
被控訴人補助参加人 東日本旅客鉄道株式会社
判決年月日 平成21年7月22日
判決区分 棄却
重要度  
事件概要  Y会社が、X組合に対し従前行っていた掲示板の貸与、団体交渉出席のためのY会社の施設の一時使用等の便宜供与を一方的に拒否し、以後同便宜供与を行わないことが不当労働行為であるとして争われた事件である。
 初審千葉地労委は、X組合の申立てを認め、Y会社に従前どおり便宜供与を行うこと等を命じる決定をしたところ、Y会社はこれを不服として中労委に再審査を申立てた。
 中労委は、Y会社からの再審査申立てに、理由があるとして千葉地労委の救済命令を取り消しX組合の救済申立てを棄却(以下「本件命令」という。)した。
 X組合は、これを不服とし、東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、X組合の請求を棄却した。これに対し、X組合は、東京高裁に控訴したが、同高裁は控訴を棄却した。
判決主文 1 X組合の控訴を棄却する。
2 控訴費用は、X組合(控訴人)の負担とする。
判決要旨 ① 当裁判所は、次のとおり改めるほかは、原判決の事実及び理由の「第3 当裁判所の判断」1及び2(原判決25頁9行目から67頁5行目まで)に 記載のとおりであるから、これを引用する。
② 2ア 中立保持義務違反について
  Y会社がX組合に対する不当労働行為を行ったと認定された事例が複数存在し、Y会社の幹部が国鉄の分割民営化に反対する労働組合に対する敵対感や嫌悪感を表明したとみられる例も存在する。しかし、原判決が認定して事実によると、便宜供与を含む労働協約については、その当初から有効期限を抑えて新たにこれを締結する必要が生ずる都度、Y会社からX組合に提案がされ、これに対するX組合の意見や対案の提案がされ、X組合とY組合との団体交渉が持たれ、その中でX組合の意見や対案についてはY会社が回答することが繰り返し行われており、それら双方の提案や意見のいずれもがそれなりの根拠と理由を持ったものというべきである。X組合は、Y会社が提案した労働協約案はストライキ権を徹底的に規制し、労使の対等性を認めない内容と主張するところ、労使協調路線に反対する立場にあるX組合において容易に受け容れることができないものが認められるものの、Y会社の事業の性質を考えた場合、Y会社が提案した労働協約の条項の内容が違法、不当とまではいえないことは、原判決が認定するとおりである。
  本件において、労働協約が締結されなかったことから、X組合が掲示板の使用や団体交渉における勤務解放などの便宜供与を受けられず、労働協約を締結した他の組合との間に差が生じる結果になっているが、上記のとおり、労働協約の内容に違法、不当な条項が含まれていたとはいえず、Y会社がX組合に対する団結権の否認ないし同組合に対する嫌悪の意図が決定的動機となって行われた行為があり、各労働協約の締結をめぐる団体交渉がそのような既成事実を維持するために形式的に行われていたものと認められるような特段の事情も認められないから、上記のような労働協約を締結した他の組合との差異が生じたのはX組合の選択の結果と評価するほかないものである。
  したがって、X組合について掲示板の貸与がされず、その組合員について団体交渉における勤務解放がされていないことが、不当労働行為に当たると解することはできない。
 ③ 会社施設の一時使用について
   Y会社は、昭和62年10月1日付けで労働関係事務取扱規程を改正し、労働協約を締結していない組合においても、Y会社の業務の支障又はそのおそれがない場合には、Y会社の施設の一時使用ができるものとし、その改正のみを社報に掲載して各職場に備えおいたことは原判決が認定するとおりである。
   確かにY会社は、X組合に上記の事実を直接知らせることはなく、社報の内容だけでは、上記改正内容を理解することは困難であって、改正前の規程あるいは改正後の規程を参照することが必要であるが、そのような参照が困難であった事情は窺えず、X組合の組合員において関心を抱けば、さほどの困難なく上記改正内容を知ることができたものと認められる。このような状況に照らせば、Y会社が団体交渉の場で上記改正に沿った説明をしなかったとしても、その内容をX組合に隠蔽したなどと評価することはできない。
  また、X組合の組合員が組合の用途のために会社施設の一時使用を申し込んだ際に、箇所長がその使用目的が労働組合活動であること、あるいは労働協約が未締結であることを理由として使用を認めないとする不適切な例があったことは認めれるが、そのような例は昭和62年10月、12月に2回認めれるのみであって、その余の例は適式の申し込みではないこと、あるいは業務の支障が理由とされている。他方、本件命令前においても、X組合による会社施設の使用が許可されている例も少なくないから、組合活動や労働協約が未締結であることを理由とする使用拒否の例があったとしてもそれだけで直ちに会社施設の一時使用に関して組合差別があってと認めることは困難である。

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
千葉地労委平成2年(不)第2号 一部救済 平成9年2月12日
中労委平成9年(不再)第9号 一部変更 平成17年12月7日
東京地裁平成18年(行ウ)第359号 棄却 平成20年9月17日
 
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