概要情報
事件名 |
塩釜交通 |
事件番号 |
仙台高裁平成20年(行コ)第27号 |
控訴人 |
有限会社塩釜交通 |
被控訴人 |
宮城県(代表者兼処分行政庁 宮城県労働委員会) |
被控訴人補助参加人 |
全国自動車交通労働組合総連合会宮城地方連合会塩釜交通労働組合 |
判決年月日 |
平成21年5月27日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
X組合は、Y会社が①X組合の書記長X1に対し、平成17年6月30日付け通告書により、同年8月分から24万円から21万5千円に賃金を引き下げたこと、②同年11月30日の団体交渉において、X組合の執行委員長X2の再雇用申入れを拒否したこと、③X1の賃金引下げの撤回及びX2の再雇用申入れに関する団体交渉に誠実に応じなかったことが不当労働行為であるとして争われた事件である。
宮城県労委は、X1の減額がなかったものとしての取扱い及びバックペイ並びに文書手交を命じ、X組合のその余の申立てを棄却した(以下「本件命令」という。)。
Y会社は、本件命令を不服として提訴したが、原審は本件命令に違法はないと判断し、Y会社の請求を棄却した。
Y会社は、これを不服として控訴したところ、仙台高裁は、Y会社の控訴を棄却した。
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判決主文 |
Y会社の控訴を棄却する。 |
判決要旨 |
1 タクシー業界が構造的に不況下にあるとしても、ひとりX1のみの賃金を引き下げることが経営上の観点から必要であるとのY会社の種々の主張は採用することはできない。また、本件賃金引下げが、Y会社において、X1をX組合から脱退させようと働きかけたが失敗したために実行されたものであって、X1がX組合の組合員であることを理由としてされた不利益取扱いであり、労働組合法7条1号の不当労働行為に該当することは極めて明白であるというべきである。
2 Y会社は、X組合との団体交渉に関して、X1の賃金引下げは組合に加入していることを理由とするものではないから、原判決がこの件に関する団体交渉を理由なく拒んだものとして労働組合法7条2号に該当するという前提に欠けると主張するが、前記のとおりX1に対する不利益取扱は明らかであるからこの主張は採用することはできない。
また、Y会社は団体交渉に出席したX組合の組合員らは、不況下にあって一般的に賃金引き下げがなされていると認識していながら、構造的な不況にあることの証明を迫るなど、Y会社を不当に糾弾するために団体交渉を求めていたと主張するが、それを認めるに足りる証拠はなく、またX組合の組合員らが経営状況の観点からの本件賃下げの合理性の説明における最初の段階として、Y会社の具体的な財務内容及びその推移を明らかにするよう求める趣旨で、過去5年分の決算書の公開をY会社に求めたとしても、Y会社を不当に糾弾することには当たらない。
そして、原判決が説示する各事実を総合すれば、Y会社は本件賃金引下げに関する団交について、Y会社は終始不誠実な交渉態度で臨んだというほかはなく、このような態度は、本件賃金引き下げに関する団体交渉を正当な理由なく拒んだものとして、労働組合法7条2号の不当労働行為に該当するものというべきである。
3 本件命令のうち、本件賃金引下げ及びこれに関する団交について不当労働行為があったとの結論に基づき、Y会社に対しX1に対する差額賃金の支払及び参加人組合に対する以後同様の行為を繰り返さない旨の謝罪文書の交付を命じた部分に控訴人主張の違法はなく、その他、本件命令の該当部分が違法であると認めるべき事由は見当たらない。
よって、本件控訴は理由がなく、Y会社の請求を棄却する。
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