概要情報
事件名 |
塩釜交通 |
事件番号 |
仙台地裁平成19年(行ウ)第23号(甲事件) |
原告 |
有限会社塩釜交通 |
被告 |
宮城県(処分行政庁:宮城県労働委員会) |
被告補助参加人 |
全国自動車交通労働組合総連合会宮城地方連合会塩釜交通労働組合 |
判決年月日 |
平成20年9月29日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
X組合は、Y会社のした、①X組合の書記長X1に対し、平成17年6月30日付け通告書により同年8月分から賃金を引き下げたこと、②同年11月30日の団体交渉において、X組合の執行委員長X2の再雇用申入れを拒否したこと、③X1の賃金引下げの撤回及びX2の再雇用申入れに関する団体交渉に誠実に応じなかったことが不当労働行為であるとして、宮城県労委に救済申立てを行った。 宮城県労委は、X1の減額がなかったものとしての取扱い及びバックペイ並びに文書手交を命じ、X組合のその余の申立てを棄却した。 本件は、Y会社が本件命令を不服として、本件命令の取消しを求めた事案である。
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判決主文 |
Y会社の請求を棄却する。
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判決の要旨 |
① 雇用契約において賃金は労働条件として重要な要素となっているのであるから、雇用契約、就業規則等において使用者が労働者の同意なく賃金を減額できる定めがあれば格別、そうでない限り、契約の一方当事者にすぎない使用者が労働者の同意なくこれを一方的に減額することは、原則として許されないというべきところ、本件賃金引下げについて、Y会社は、仕事の質が変化するとともに量も減少し、また、業界が構造的不況下にあることなどから、賃金引下げには合理的な理由があった旨主張するものの、仕事の質の変化及び量の減少については、過去に行われた賃金引下げにおいて評価されており、本件賃金引下げの合理的な理由とはならないこと、業界が構造的不況下にあるとしても、X組合のX1の賃金のみを引下げることが経営上の観点から必要であったと認めることは困難であるといったことから、Y会社の主張は採用できない。 また、本件賃金引下げに至った経緯として、X組合とY会社は、X組合結成当初から激しい対立関係にあることや、Y会社が組合員X1に対し、X組合からの脱退を働きかけ、X組合がこのことに対し抗議行動を行ったこと、Y会社はこの抗議行動からおよそ1か月半後に賃金引下げを通告し、その1か月後に実行されたことなどの各事実を合わせ考慮すると、Y会社は、X組合を嫌悪し、その構成員であるX1を脱退させようと画策したものの、これが失敗に終わったことから、本件賃金引下げを実行したと優に推認することができ、X1がX組合に加入していることを理由としてされた不利益取扱いであったと認めることができるものであるから、労働組合法第7条第1号の不当労働行為に当たるというべきであり、これと同旨の本件命令が違法であるとはいえない。 ② 本件賃金引下げに関する団体交渉について、Y会社が、最初の団体交渉に応じるに当たり、X組合側の出席者を限定し、その必要性を説明しようとしていないこと、当初予定された団体交渉の期日において、結局、団体交渉を行わず、その後も、組合に対し新たな期日を提示せず、X組合が代表取締役に掛け合ってようやく団体交渉の期日を設けたこと、本件賃金引下げに関する団体交渉において、X組合が回答を求めた事項について具体的に説明せず、口頭で説明した内容も誤ったものであったこと、団体交渉が行われていた期間に2回にわたり、X1に対し賃金減額を伴う配置転換を通告したことの各事実が認められ、さらに、上記①のとおり、本件賃金引下げがX組合に加入していることを理由とする不利益取扱いというべきことも併せ考えれば、本件賃金引下げに関する団体交渉について、Y会社は、不誠実な対応に終始したものであって、このような態度は、本件賃金引下げに関する団体交渉を正当な理由なく拒んだものとして、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当するものであり、これと同旨の本件命令が違法であるとはいえない。
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