概要情報
事件名 |
東陽印刷 |
事件番号 |
東京地裁平成20年(行ウ)第31号 |
原告 |
東陽印刷労働組合 |
被告 |
国(裁決行政庁:中央労働委員会) |
判決年月日 |
平成20年9月10日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
|
事件概要 |
Y1会社が①組合排除をするために計画的に廃業及び破産手続開始の申立てを行い組合員を解雇したこと、②廃業及び破産手続開始の申立てについて組合と事前協議しなかったこと、③廃業及び解雇をめぐる組合との4回の団体交渉において不誠実対応をし、その後団体交渉に応じなかったことは、いずれも不当労働行為に当たるとして、Y1会社及びY2管財人を被申立人として、群馬県労委に救済を申し立てた。X組合が求めた救済内容は、①平成17年6月30日付けでされた会社の廃業の撤回、②同日付けでされた組合員の解雇撤回、③謝罪文の掲示である。群馬県労委は会社に対する申立ては、現実に会社を代表して行為を行うものがいない以上、救済命令を実行するのことが事実上不可能であるとしてこれを棄却した。 X組合はこれを不服として、中労委に再審査の申立てをした。 中労委は、X組合の再審査申立てについては、Y1会社に対する申立ては棄却し、Y2破産管財人に対する申立ては初審命令を取り消した上、救済申立てを却下した。(以下「本件命令」という。) 本件は、X組合が本件命令を不服としてその取消を求めた事案である。
|
判決主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
判決の要旨 |
争点1(会社の廃業の撤回及び組合員の解雇撤回)について 株式会社は、破産手続開始決定により解散するが、破産手続による清算の目的の範囲内において、破産手続が存続するものとみなされる。そして、異時破産手続廃止決定がされると、同決定の確定により、破産手続は終了するが、開始決定による解散の効果は継続するため、破産手続終了後も、清算事務を要する場合には、清算会社として、清算の目的の範囲内において、清算が終了するまで存続するものとみなされる。 Y1会社は、破産手続開始決定の効果により清算会社として存続しているにすぎないのであるから、その権利能力は決算の目的の範囲内に限定されるのであって、解散前に行っていた事業を再開し遂行することは、清算の目的の範囲を逸脱するものであって、法律上不可能である。 争点2(謝罪文の掲示)について Y1会社の代表取締役であるY3は破産手続開始決定を受けていることから、平成17年法律第87号による改正前の商法254条の2第2号の取締役の欠格事由に該当することにより、当然代表取締役の地位を喪失したものと認められるところ、その後会社において改めて代表取締役が選任されたことを窺わせる事情は認められない。したがって、X組合の求める救済は、現実に救済命令を実行すべき代表取締役が存在しない以上、事実上実現することが不可能であることが明らかというべきである。 また、Y2破産管財人による謝罪文の掲示を求める部分についてみると、会社についての破産手続は終了し、Y2破産管財人の任務は既に終了したものであって、同人が会社の破産管財人としての立場で謝罪文を掲示することは、法律上実現することが不可能であることが明らかである。
|