概要情報
事件名 |
西日本旅客鉄道(西労金沢) |
事件番号 |
東京地裁平成18年(行ウ)第358号 |
原告 |
西日本旅客鉄道株式会社 |
被告 |
国(裁決行政庁 中央労働委員会) |
被告補助参加人 |
ジェーアール西日本労働組合 |
被告補助参加人 |
ジェーアール西日本労働組合関西地域本部 |
判決年月日 |
平成20年2月6日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、①Y会社のY1助役らがX組合員の組合員14名に対し、職制を利用し組合からの脱退を慫慂したこと、②組合掲示板に貼付された掲示板の撤去を所長等が養成したことが不当労働行為であるとして、申立てがあった事件である。 石川地労委は、申立てを棄却したところ、これを不服としてX組合から再審査の申立てがなされ、中労委は、組合員2名に対する脱退慫慂は不当労働行為であるとして、初審命令の一部を変更し、その余の本件救済申立てを棄却した。 Y会社はこれを不服として東京地裁に行政訴訟を提起した。 |
判決主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は、補助参加によって生じた費用を含め、原告の負担とする。 |
判決の要旨 |
争点1(Y1、Y2両科長が組合員X1に対してしたX組合からの脱退の働きかけが、労組法7条第3号所定の支配介入に当たるか否かについて) ① Y会社のY1、Y2両科長の組合員X1に対する言動が、同組合員にX組合からの脱退を働きかけるものであったことは明らかであるところ、労組法2条1号所定の使用者の利益代表者に近接する職制上の地位にある者が使用者の意を体して労働組合に対する支配介入を行った場合には、使用者との間で具体的な意思の連絡がなくとも、当該支配介入をもって使用者の不当労働行為と評価することができると解するのが相当である(最高裁平成18年12月8日第2小法廷判決・裁判所時報1425号4頁) ② 上記の判例を本件につきみると、運転所長は、現実の支社における配置、勤怠評価などを含めた現実の人事作用につき、その重要な部分の一端を担っていたと評価すべきであり、運転所においては、各科の総括責任者である科長は、このような役割を担う運転所長の直下に位置付けられる職制であり、また、Y2科長の前任者、後任者はいずれも主事以上の資格を有する非組合員であったというのであるから、少なくとも運転科長という職制には、利益代表者である非組合員が充てられ得る職制であったということができる。加えて、運転所の組織状況及び規模等からすると、運転所長が、所属社員すべての能力、適性及び勤務状況等を単独で把握することは現実問題としては困難であったと考えられるから、その把握は科長を含めた助役に求めざるを得なかったものと推認される。してみると、各科の統括責任者である科長は、運転所長が支社側へ提供する人事情報の相当程度の与えるものであったとみるのが相当であり、科長は使用者の利益代表者に近接する職制上の地位にあるというべきである。 ③ 利益代表者に近接する職制上の地位にある否かの判断に際して重視されるべき点は、実際の人事作用における役割、そしてこれを基礎とする影響力であって、科長が、このような影響力を有することは上記判示したとおりであって、科長は運転所長の補佐・代理として人事作用に携わることがあったとしても、参考情報の提供のレベルのものでないから、利益代表者に近接する職制上の地位と評価することができないとするY会社の主張は採用できない。
① X組合は、平成4年以降、数次にわたりストライキを行い、その結果、Y会社の列車運行に少なからぬ支障を与えていたことなどの事情の下においては、Y1、Y2両科長によるX組合員の組合員X1に対しする働きかけは、訴外組合の組合員としての行動であることが明らかであるなどの特段の事情のない限り、Y会社経営陣が志向する労使協調型の一企業一労働組合という方針を体現するもの、すなわち、使用者の利益代表者に近接する職制上の地位にある者が使用者の意を体してX組合に対する支配介入を行ったものとみるのが相当である。(本件は特段の事情を裏付ける事実も認められない。)
争点2(Y2科長が組合員X2に対してX組合からの脱退を働きかけたか否か。また、この行為が、労組法7条第3号所定の支配介入に当たるか否かについて) ⑤ Y2科長が組合員X2に対して、「意識改革してくれんか」「君も60歳までこの職場で働きたいやろ」などと述べたことについて、Y会社はこのような発言をしたことはないと主張するが、Y2科長は初審命令手続において証人として出頭することを求められたにもかかわらず、これに応じていないことを勘案すると、この発言の認定の根拠となった証拠の信用性は否定しようがないというほかはない。 ⑥ 認定した事実からして、Y2科長の発言は組合員X2に対して、X組合からの脱退を示唆する趣旨のものであったとみるのが相当である。そして、Y2科長の発言もまた、使用者の利益代表者に近接する職制上の地位にある者が使用者の意を体してされたものとみることができ、Y会社の支配介入行為と評するのが相当である。
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