労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名 日本体育会
事件番号 東京高裁平成19(行コ)第232号
控訴人 控訴人補助参加人 東京都(処分行政庁:東京都労働委員会)、全労協全国一般東京労働組合
被控訴人 学校法人日本体育会
判決年月日 平成20年1月31日
判決区分 全部取消
重要度  
事件概要 本件は、Y大学がX組合との団体交渉に応じないのは、不当労働行為に当たるとして、これに誠実に応じることを命じた東京都労委の救済命令について、Y大学がその取消しを求めた事案である。
 原審は、Y大学の請求を容認したので、東京都労委が控訴した。
判決主文 1 原判決を取り消す。
2 被控訴人の請求を棄却する。
3 訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は,第1,2審を
通じて被控訴人の負担とする。
判決の要旨 争点1(組合が求めた団体交渉事項について)
① 当裁判所も、本件命令が団体交渉事項をコーチ職選任問題としていることに違法はないと判断する。
   大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする学校であり、こうした大学における目的からすると、体育サークル活動といった学生の課外活動が果たす教育上の意義は大きいものであり、学生の課外活動を推進する事業を行う学友会等の組織について、大学は、その事業が円滑に、かつ、効果的に行われるように指導、監督、支援する権限を有するとともに、その責務を負っているものである。
②  Y大学においても、学友会は教職員と学生により組織され、本部を大学内に置き、学友会会長は大学学長が就任し、各クラブの部長は学長たる会長が選任することになっていることからすれば、学友会はあくまでも学内団体であり、大学から独立した団体ということはできず、Y大学は、学友会の事業が円滑かつ効果的に行われるように指導、監督、支援するべき立場にあり、学長が学友会の会長に就任する仕組みとなっているのも、Y大学が上記の権限を行使し、その責務を果たしていくためであると理解すべきである。
③ 学友会は、Y大学の建学の主旨に基づき、教養と技術の向上に切磋琢磨することを目的とする組織であるから、その他の一般大学と学生の課外活動との関係より密接な関係を有しており、それだけY大学等の学友会に対する指導、監督、支援の程度もより強いものがあると考えられる。
④ 認定事実によれば、学友会運動部指導講師を採用する場合は当該クラブの部長の推薦により学長が委嘱することとされ、大学スポーツ局において運動部指導のためスポーツ専門職を採用することがあり、運動部指導講師及びスポーツ専門職の報酬はY大学等を設置するY学校法人から払われること、運動部での競技力向上指導実習等一定の科目では、部長が単位の認定及び成績評価を行うなど運動部の活動がY大学のカリキュラムの一翼を担っていること、教職員の評価項目にもクラブ等の指導実績が挙げられていること、学友会スケート部の不祥事の際には、スケート部の部長や監督の解任等につき学長から大学教授会に報告されていること等が認められるが、このことは、Y大学において、学友会運動部の活動が、全体として大学(具体的には大学学長)の指導・監督の下に行われていることの証左ということができる。
⑤ Y大学と学友会の上記のような関係からすれば、学友会運動部のクラブのコーチ・スタッフの選任等の人事面においても、クラブの運営が不正常になった場合、Y大学が学友会の会長の地位を有する学長を通じて適切な指導、監督を行うことが予定されているものと解するのが相当である。そうすると、学友会のコーチの選任に関して指導、監督する立場にあるから、その限度において、コーチ選任問題はY学校法人に処分可能な事項であるというべきである。
争点2(コーチ選任が教職員の労働条件といえるか)
  本件組合員Xのような学友会運動部の指導に当たっている Y大学の教員にとって、ウエイトリフティング部のコーチに選任されるか否かは、Y大学の教員としての評価に繋がる重要な事柄であったということができる。
   また、Y大学においては、学友会でのクラブ活動における教職員の指導が大学での教職員の職務に準じて取り扱われているような制度上の仕組みが存在していることが認められ、こうしたY大学の実情をも考え併せると、Y大学の教職員及びY大学当局の双方において、学友会運動部の指導に従事することは、教職員の職務の一環をなすとの共通の認識があるものと考えられる。したがって、少なくとも学友会運動部の指導に当たっている教職員にとって、当該運動部のコーチ選任問題は労働条件に関する事項であるとみるのが相当である。



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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成15年(不)第95号 一部救済 平成18年3月28日
東京地裁平成18年(行ウ)第264号 全部取消 平成19年6月14日
 
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