概要情報
事件名 |
日本体育会 |
事件番号 |
東京地裁平成18年(行ウ)第264号 |
原告 |
学校法人日本体育会 |
被告 |
東京都(代表者兼処分行政庁 東京都労働委員会) |
被告補助参加人 |
全労協全国一般東京労働組合 |
判決年月日 |
平成19年6月14日 |
判決区分 |
全部取消 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、体育大学及び体育女子短期大学を経営するY学校法人が、個人加盟を原則としたX組合から申し入れられたウエイトリフティング部コーチ解職処分問題に関する団体交渉を拒否したことが不当労働行為であるとして争われた事件である。 東京都労委は、Y学校法人がコーチ選任問題を議題とする団体交渉に応じなかったことは労働組合法7条2号の不当労働行為に当たるとして、これに誠実に応じること等を命じた救済命令を発した。 Y学校法人はこれを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起し、同裁判所は同委員会の命令(主文1、2項)を取消し、Y学校法人の請求を認容した。 |
判決主文 |
1.東京都労働委員会が平成15年不第95号事件について平成18年3月28日付けでした命令(主文1、2項)を取り消す。 2.訴訟費用のうち、補助参加によって生じた費用は被告補助参加の負担とし、その余は被告の負担とする。 |
判決の要旨 |
争点1(X組合が申し入れた団交の交渉事項は、本件命令が命じた「組合員X1のコーチ選任問題」であったか。) Y学校法人は、本件命令はX1の「コーチ選任問題」について、X組合との団体交渉に応じるよう命じているが、X組合はX1の「コーチ解職処分問題」について団体交渉を求めていたのであるから本件命令には事実誤認があり、違法であると主張する。しかし、X組合は、協議事項を「X1組合員の処分問題」とし、X1が「部員の監督不行届き」を理由に日本ウエイトリフティング協会登録を除籍され、さらにウエイトリフティング部の女子部コーチを解職された」とし、これらの問題を協議事項として団体交渉を求めた事実が認められるところ、その表現が正確かどうかは別として、X組合はX1がコーチに選任されなかったことを問題とし、これを団体交渉事項としていることは明らかである。したがって、本件命令が団体交渉事項をコーチ職選任問題としていることに違法はないとされた例。 争点2(X1がコーチに選任されなかったことの問題に関し、Y学校法人が団体交渉に応じなかったことは、この問題が義務的団体交渉事項(労働条件その他の待遇等に関する事項であって、使用者に処分可能なもの)であるにもかかわらず交渉を拒否したものであり、労働組合法七条二号の不当労働行為に当たるか。) 学友会の規約上、ウエイトリフティング部を含むコーチについては、当該クラブの部長が選任するものと規定され、Y学校法人には選任に関して何ら権限はない。したがって、コーチの選任問題は、制度を定めた規約の明文上は、Y学校法人に処分可能なものとは認められない上、組織上も、Y学校法人とは全く別の団体である学友会に属している各クラブ内部の問題であるというほかはない。もっとも、Y学校法人が、実際の運用上は選任に関わっていたり、組織の実態として選任に影響を与えている場合など、事実上選任に関与しているとみられるときには、処分可能なものというべきである。しかしながら、Y学校法人の学長が学友会規約の定めに反して学友会のコーチ人事に介入したことを窺わせる事情は見当たらない。以上により、学友会のクラブのコーチ選任は、Y学校法人に処分可能な事項であるとは認められないから、コーチ選任が教職員の労働条件といえるかどうかを検討するまでもなく、Y学校法人とX労働組合間の義務的団体交渉事項には当たらないとされた例。 |