労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  マイスターエンジニアリング
事件番号  東京地裁平成19(行ウ)134号
原告 株式会社マイスターエンジニアリング
被告 国(処分行政庁 中央労働委員会)
被告補助参加人 全日本港湾労働組合関西地方建設支部
判決年月日  平成19年11月29日
判決区分  棄却
重要度   
事件概要   会社が、営業課長をして組合員に対し、組合から脱退しないと仕事がしにくくなる等の発言をしたことが不当労働行為であるとして争われた事件で、初審大阪府労委は、会社に対し、文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。
 会社は、これを不服として再審査を申し立てたが、中労委は、本件再審査申立てを棄却した。会社は、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は会社の請求を棄却した。
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用(参加費用を含む。)は原告の負担とする。
判決要旨   争点(Y課長は組合員Xに対して、組合からの脱退を勧奨する発言を行ったか否か、その脱退を勧奨する発言は会社の意を対したもので、支配介入といえるか。)
① 会社のY課長は、組合員Xに対して、仕事の打合せがあると言って、職場近くの喫茶店へ呼び出し、そこで、自分が組合を脱退した旨を伝え、「組合活動をがんばったところで何にもならへんぞ」、「会社は絶対組合を認めへんねん」、「とりあえずやめてやり直そうや、新しい組合を作るし」と述べ、組合を脱退するよう返事を求め、「今ならぎりぎり昇給も間に合うから今日返事くれ」等の本件発言をしたことが認められる。本件発言に関する組合員Xの陳述内容が特段不自然なものとは解されず、Y課長自身の証言や陳述書はなく、他に本件発言について、上記認定を覆すに足りる証拠はない。
② Y課長は、職制として課長職にあり、組合員Xの直属の上司ではないとしても、Y課長は仕事についての指示を与える関係にあったものである。Y課長の本件発言は、就業時間中に、「仕事の打合せがある」として組合員Xを呼び出した上でなされたものであるばかりか、その発言内容も、会社が組合を敵視していることを強調した上で、組合員Xの昇給と関連した話をするものであり、それ自体、Y課長の全くの個人的な行動とは考えにくいものである。
③ また、本件発言がなされた時期は、組合の分会が結成されたことを受け、会社が役職者の組合員の組合活動を就業時間外についても一部制限したりするなど、会社が組合の活動を過度に警戒する中で行われたものである。会社と各子会社との従業員を会員とし、会員相互の親睦と互助を目的とする青雲会の会則改定や役員選挙に関しては、青雲会が急に役員から従業員の過半数代表者としての性質を奪う等の会則改定を行うこととし、その会則改定の承認のための投票と同時に、しかもその会則改定後の規定を適用して青雲会の役員選挙を行い、改定前の会則に従い推薦者を集めた組合員Xを立候補者とすら扱わなかったことが認められる。これらの事実に会社の取締役が、青雲会の役員選挙に関して、組合の組合員の青雲会役員選挙活動を抑制抑圧することを意図したような全社向け通達を出すなどして、組合の青雲会役員選挙活動を妨害していること、及びその後に行われた過半数代表者の選出についての会社の対応を考え併せれば、会社が、一貫して、労働条件の決定に組合が過半数代表者等として関与することを回避しようとしていたことが認められる。Y課長の本件発言は、このような時期に行われたものである。
④ さらに、組合は、この時期に、Y課長を始めとして14名の組合員が相次いで脱退したことを受け、会社に、管理職が脱退慫慂を行っていることにつき調査等を行うよう申し入れているが、会社が適切な対応をしたと認めるに足りる証拠はない。本件発言に対する会社の対応も不十分であると認めざるを得ない。上記①から③の事情を含め、総合的に考慮すれば、本件発言は、組合の組合活動を警戒し、規制を強める状況の下で、会社の意を体して行われたものと認めることが相当であり、労働組合法7条3号に該当する不当労働行為というべきである。

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
大阪府労委平成16年(不)第50号 一部救済 平成17年12月22日
中労委平成18年(不再)第1号 棄却 平成18年12月6日
 
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