労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  東日本旅客鉄道事件(千葉動労幕張電車区配転)
事件番号  東京地裁平成18年(行ウ)20号
原告 国鉄千葉動力車労働組合
被告 国(裁決行政庁 中央労働委員会)
被告補助参加人 東日本旅客鉄道株式会社
判決年月日  平成19年9月12日
判決区分  棄却
重要度   
事件概要   会社が、組合員2名を、幕張電車区から京葉電車区又は習志野電車区に配置転換したことが不当労働行為であるとして争われた事件で、申立てを棄却した初審命令について、再審査申立てを棄却した。
 組合は、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は組合の請求を棄却した。
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、参加によって生じた費用を含め、原告の負担とする。
判決要旨  争点1(本件配転は原告の組合員であるX1及びX2に対する不利益取扱いにあたるか)
 ①労組法7条1号の「不利益な取扱い」にいう「不利益」とは、組合員個人の雇用関係における経済的不利益ばかりでなく、組合活動上の不利益をも含むものであるところであるが、幕張電車区と京葉電車区及び習志野電車区の距離はさほど離れていないこと、シニア雇用もX組合の組合員に適用される結果となっていること等を考慮すれば、本件配転によって被った「不利益」の程度が大きいとはいえず、本件配転がシニア制度等をめぐる攻防に重大な影響を与えるものであったとはいいがたいとされた例。
 ②幕張電車区は、京葉、習志野電車区に比べ扱う車両の種類も多いことからすると、配転当初は京葉、習志野電車区において、基礎的知識を習得させ、その後幅広い技術力向上のため扱う車両形式の多い幕張電車区において勤務を経験させて検修職社員の育成を図ってきたとする会社の人事配転は相当であるということができ、平成13年度に京葉、習志野電車区から幕張電車区へ異動となった5名のうち4名は平成採用職員であったことからすると、本件配転も平成採用職員の例年の異動の一環であったということができ、平成13年12月1日のダイヤ改正に合わせて検修関係区の要員の標準数を変更した結果、習志野、幕張電車区及び木更津支区で余力が生じ、京葉電車区では4名の要員が必要とされる状況となったのであるから、各区の間で社員の異動による人員数の調整を行う必要性が生じていたということができ、したがって、本件配転については、業務上の必要性があったと認めるのが相当であるとされた例。
 ③平成採用職員が多数配属される京葉、習志野電車区においても、これらの電車区に所属するX組合の組合員はおり、平成9年当時の習志野電車区におけるX組合の組合員数は別組合とほぼ同数であったのであるし、X組合の組合員数が多数を占める幕張電車区においても、平成9年度以降学士新規採用者が、本件配転後の平成14年以降は平成採用職員も配属されているのであるから、会社が平成採用職員をX組合が多数を占める幕張電車区に初任配属させなかったのはX組合のX3委員の影響力を減殺するため、平成採用職員を別組合以外の組合に加入させないという労務政策によるものであったということはできず、検修関係区における要員の変更が外部委託を前提とする経営合理化の一環であるとしても、それが直ちにX組合の組合員を排除するためにされたものであると認めるべき根拠はなく、したがって、X組合の主張には理由がないとされた例。
 ④会社は異動の基準として、50歳代の高齢者よりも運用に幅のある40歳代の中堅職員を異動対象としており、X1組合員及びX2組合員は、本件配転当時40歳代であり、その業務経験及び本件配転による異動後の状況等からしても、仕業検査業務に通じた中堅職員であったと認められ、また、ダイヤ改正等により仕業検査業務に余裕のあった幕張電車区においては、仕業・構内班に所属している者の中から選任すること、仕業検査に関わっている者から選任すること、仕業検査業務の責任者である仕業A長を除くことなどの配転基準があり、X1組合員及びX2組合員はそれらの配転基準を満たしており、幕張電車区における在勤年数について考慮しても、X1組合員が11年、X2組合員が5年であることから、配転一般について妥当する特段言及するまでもない異動基準も満たしており、X1組合員及びX2組合員は、それらの基準をいずれも満たしているとされた例。
 ⑤X組合は、会社の主張が一貫しておらず、X組合の役員であったX1組合員及びX2組合員の異動という結論ありきの配転を後付けで正当化しようとするものであると主張するが、2回行われた団体交渉では担務変更を把握していなかったことを補充すること以外は、余力が生じていた仕業・構内班からの人選であるという中心部分が変わっていないから、この補充説明の追加をもって会社のX組合に対する説明が一貫していないということはできないこと、地労委において本件救済申立ての審査段階において本件配転基準を示したのであるが、本件配転基準はいずれも各団体交渉で示されており、在勤年数の考慮については、特段言及するまでもない基準であるので、右記各団体交渉で具体的に示していないからといって説明に一貫性を欠くとはいえないほか、第一回目の団体交渉において、「在職年数」として示されているから、説明は一貫していると認めるのが相当であり、加えて、従業員の配転には使用者の合理的裁量が認められ、複数の適格者の中から適宜配転対象者を選任することができ、本件配転基準が合理的であり、X1組合員及びX2組合員が本件配転基準に適合している以上、他の者より適切であることや他のより適切な者がいないことまで会社が検討して人選しなければならないものではなく、組合の主張には理由がないとされた例。
 ⑥組合は、本件配転と同時期に異動した社員について本件配転基準に適合しないことから、本件配転基準はもはや「基準」たり得ていないことから、本件配転は恣意的にされたものである旨主張するが、配転は一般に使用者がその裁量によって様々な要素を考慮してされるものであって、統一的な基準がないからといって、直ちに当該配転が恣意的であるということはできず、第一回目の団体交渉において、組合員X1及びX2の具体的な異動理由について、仕業検査に関わっていること等について言及したことが認められ、当初から本件配転における一般的基準を説明しようとしたものではないことが明らかであり、当該配転を含む平成13年12月25日の異動の一般的基準は「各区について平成採用職員の異動を行うこと及び各区における需給調整をすること」のみであったのであり、別職員の異動は、年齢、担当業務等からすると、この一般的基準から何ら外れていないと認められ、組合の主張は、配転の性質及び本件配転に関する団体交渉の経緯を看過したものであって、理由がないとされた例。
 ⑦組合員X1及びX2は安全衛生委員に任命されており、平成13年12月28日に安全衛生委員会が予定されていたが、これを考慮せずに組合員X1及びX2を人選したのは、役員であったX1及びX2を狙い撃ちにしたものである旨主張するが、会社は組合員X1及びX2が安全衛生委員であることを認識することなく人選を行っていたもの認められ、安全衛生委員であることを考慮しなかったことが、狙い撃ちしたものであるとはいえず、組合の主張には理由がないとされた例。
 ⑧本件配転は会社の業務上の必要に基づいて行われた合理的なものであると認めるのが相当であり、本部役員として組合活動を行っていた故に、組合に対する不当労働行為意思を決定的な動機として行われたものということはできず、本件配転は不利益取扱いには該当しないというのが相当であるとされた例。
 争点2(支配介入の成否について)
 本件配転は、組合の現職の本部役員の配転である以上、組合の幕張電車区における組合活動に一定程度の影響を及ぼしたことは、否定できないものの、争点1で判断したとおり、組合に対する不当労働行為意思を決定的な動機として行われたということはできないから、支配介入には該当しないというのが相当であるとされた例。

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
千葉県労委平成14年(不)第4号 棄却 平成16年1月7日
中労委平成16年(不再)第3号 棄却 平成17年10月5日
東京高裁平成19年(行コ)第350号 棄却 平成20年6月17日
 
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