労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  丸長運送事件
事件番号  福岡地裁平成18(行ウ)58号
原告 丸長運送株式会社
被告 福岡県(代表者兼処分行政庁 福岡県労働委員会)
被告参加人 福岡東部地区個人加盟労働組合・イーストサイドクラブ
判決年月日  平成19年9月5日
判決区分  棄却
重要度   
事件概要   会社が、①組合員X1及びX2をミキサー部門の廃止後、非組合員と比べ同程度に輸送業務に従事させず、それにより非組合員との間に賃金格差を生じさせたこと、②組合員X3を同人の交通事故以降、非組合員と比べ同程度に輸送業務に従事させず、それにより非組合員との間に賃金格差を生じさせたこと、③これら3名の組合員に担当車の割当てを行わなかったこと、④組合員が休暇早退届を提出した際、非組合員と異なり、会社本社でこれを受理しなかったことが不当労働行為であるとして争われた事件である。
 福岡県労委は、会社に対し、①X1、X2及びX3に対するバックペイ、②文書手交を命じ、X1及びX2に関する平成16年7月20日以前になされた賃金支払に係る救済申立てを却下した。会社は、これを不服として福岡地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は会社の請求を棄却した。
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用(参加によって生じた費用を含む。)は、原告の負担とする。
判決要旨  1 組合員への輸送業務の割当て及び賃金の減少について
  会社がミキサー部門を廃止し、組合員X1及びX2の業務割当てが減少して、売上給が少なくなったことや、交通事故後にX3の担当車を廃車して以降、同人に担当車を割り当てず、業務割当ての減少による売上給が減ったことが、組合員であることを理由とするものかを検討すると、次のことから、こららの行為は、会社の不当労働行為意思に基づくものというべきである。
  ①会社は、ミキサー部門を廃止した理由が、同部門の赤字のためと主張するが、ミキサー部門の収支の推移をみると、直ちに同部門を廃止しなければならないほどの状況に陥っていたとすることには疑問を抱かざるを得ないこと、②会社の従業員は、勤続給と売上給を基本給としているのであるから、ミキサー部門廃止によって、組合員X1及びX2が担当車や業務割当てを失えば、必然的に賃金が著しく減少する結果になることは、十分に予見し得るところであるが、予備車3台を組合員X1らに担当させたり、積極的に場内作業に従事させるようなこともせず、組合員X1及びX2の売上給の減少を放置したままにしていたというべきであること、③会社は、ミキサー車の運転及びそれに伴う業務と平ボディ車あるいはダンプ車の運転は異なり、直ちにミキサー車から別の自動車に乗り換えることは困難であるため、組合員X1らに予備車を割り当てることができなかったと主張するが、会社のY部長が撒車の養成期間は、常時ずっと付きながら回って1週間から10日間程度である旨証言していること等からすれば、この主張は採用できないこと、④会社がミキサー部門の廃止を決定した日は平成16年2月末であり、団体交渉を行った同月18日と接近しており、ミキサー部門の乗務員全員が組合員であったということ、⑤担当車が交通事故により廃車となった組合員X3についても、会社が予備車を割り当てなかったことには合理性を見出せないこと。
  また、組合員X1の休暇届の不受理についても、他の組合員もX1が届出の受理を拒否された後は自主的に本社ではなく長崎営業所に欠勤届等をファクシミリで送信するようになっているのであり、加えて、休暇届の不受理が問題になったのは、まさに会社がX1を含む組合員に対し、不当労働行為を行っている最中のことであることを考慮すると、X1の休暇届の不受理についても、X1が組合員であることを理由とするものと認められるのであり、不当労働行為意思に基づくものと評価するのが相当である。
2 本件命令の救済方法の適否
  本件について、組合員という属性で括って非組合員と組合員の平均値の差額によりバックペイ額を算出するという福岡県労働委員会の採用した算定方法も、組合員であるがために得られるべき賃金が得られなかったという不利益を救済する額の算出方法として、一定の合理性が認められるというべきであるから、労働委員会が裁量権を逸脱したと認めることはできない。

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
福岡県労委平成17年(不)第4号 一部救済 平成18年10月16日
福岡地裁平成18年(行ク)第14号 緊急命令申立ての一部認容 平成19年2月26日
 
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