労働委員会関係裁判例データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[判例一覧に戻る]   [顛末情報]
概要情報
事件名 東新潟自動車
事件番号 東京地裁平成18年(行ウ)第15号
原告 株式会社東新潟自動車学校
被告 国(処分行政庁 中央労働委員会)
被告補助参加人 全国一般労働組合新潟県本部
判決年月日 平成19年4月19日
判決区分 棄却
重要度  
事件概要  本件は、会社が、①全国一般労働組合新潟県本部(組合)東新潟自動車学校支部(支部)の組合員Xに対して、副管理者への昇格に際して組合支部を脱退させようとし、これに従わないことをもって退職を強要するような発言を行ったこと、②Xに対して、支部を脱退しなかったことを理由として教習業務全般から外すなど職務変更を行い、さらに班長職の解任及び教習全般職務停止の懲戒処分を行ったこと、③支部の役員又は組合員に対してXを非難する言動を行ったことが不当労働行為であるとして申立てがあった事件である。
 初審新潟地労委は、会社に対し、①教習業務全般の停止措置及び懲戒処分がなかったものとしての取扱い及びバックペイ、②脱退強要及びこれに応じない場合の退職強要の禁止、③支部組合員に対する脱退示唆の禁止、④文書手交を命じ、中労委も、これを維持して再審査申立てを棄却した。会社は、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、会社の請求を棄却した。
判決主文 1.原告の請求を棄却する。
2.訴訟費用(補助参加の費用を含む。)は原告の負担とする。
判決の要旨 (理由)
争点1(Y自動車学校において、副管理者は労働組合法2条ただし書き1号の「使用者の利益を代表する者」に当たるか)について
① 副管理者は、人事面においては、新入社員の採用、副管理者や主任・班長の選定、資格の取得につき、幹部構成員としての立場で協議に関与していることが認められるものの、これらはあくまでも役員への推薦や意見を付するものにすぎず、雇入れや昇進についての決定権限までは有していなかったことは明らかであり、賃上げ又は賞与については、幹部会に対してすら報告があるのみで、その構成員たる副管理者はその決定過程に何ら関与していない。また、副管理者の組合員資格については具体的な定めはなく、現に支部組合員のまま副管理者に就任している者が少なからずいた。これらを総合すると、副管理者は、教習に関する問題など教習所の管理についての協議の面において一部関与していたことを考慮しても、副管理者が「使用者の利益を代表する者」に当たると認めることはできないとされた例。
争点2(Y1専務の組合員X1対する発言が組合の組織運営に対する支配介入に当たるか)について
② 副管理者は、右記のとおり「使用者の利益を代表する者」とは認められないから、組合員資格を有したまま副管理官に就任することができるはずのところ、Y1専務の「組合員のままで副管を受けるのは認められない。そういう考えであれば会社を辞めてもらう」などの各発言は、副管理者に就任するに際しても組合員のままでいたいというX1に対し、支部の組合員でいる限り就業上の不利益が及ぶかのような示唆をしたものとの評価を免れず、脱退を強要したものというべきであって、組合に対する支配介入に当たる行為といわざるを得ないとされた例。
③ 次に不当労働行為意思を検討すると、Y1専務が支部組合員のまま副管理者に就任していた者が少なからずいたことを認識していたことは明らかであるにもかかわらず、組合員のまま副管理者に就任したいという組合員X1の希望を全く考慮、検討することなく、支部を脱退しなければ副管理者になれないと告げ、繰り返し支部からの脱退を求めているのであり、全体として穏当な発言でなく、むしろ強圧的といえるものであって、このようなY1専務の一連の発言には不当労働行為意思の存在を認めることができるというべきであるとされた例。
④ 右記②、③からして、Y1専務の組合員X1に対する各発言は組合の組織運営に対する支配介入であって労働組合法7条3号の不当労働行為に当たるとされた例。
争点3(本件職務変更及び本件懲戒処分が、不利益取扱い及び支配介入に当たるか)について
⑤ Y1専務が組合員X1を教習・検定業務から外したのは、組合員X1が指示に従わないために同人を個人として嫌って厳しい措置をしたというに止まらず、労働組合である支部や組合を嫌悪し、組合員X1が支部の組合員のままでいることを嫌って報復的な措置を採ったものであると認めるのが相当であり、本件職務変更は、組合員X1が支部組合員であることのゆえをもって行った不利益取扱いであり、組合に対する支配介入にも当たるとされた例。
⑥ 本件懲戒処分は、組合員X1が支部から脱退しないことに対して行われているものであり、不利益取扱いであると認められ、支部の組合員である限り不利益が及ぶことを支部や組合に対して示すものというべきであるから、本件職務変更と同様に、組合に対する支配介入であると認められるとされた例。
争点4(Y自動車学校が支部組合員を呼び出し、組合員X1の態度を非難し、意見を求めたことがあるか、あるとすると支配介入に当たるか)について
⑦ Y1専務の発言は、意見を求めるという形は取っているものの、副管理者の地位と組合員の地位が両立しないものであることを当然の前提とし、その結論を押しつけようとするものにほかならないのであって、討論によるコミュニケーションの醸成をはかるというY自動車学校の主張とはほど遠いものであると言わざるを得ず、組合に対する支配介入であって、労働組合法7条3号の不当労働行為に当たるとされた例。
争点5(救済方法に裁量の逸脱・濫用がないか)について
⑧ 右記のとおり、組合員X1に対してした懲戒処分及び同処分に至るまでの同人並びに組合の役員及び組合員に対して行った言動がいずれも不当労働行為であるとした本件命令の判断、認定に裁量の逸脱・濫用はなく適法であるとされた例。          

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
新潟地労委平成15年(不)第5号 全部救済 平成16年3月31日
中労委平成16年(不再)第28号 棄却 平成17年11月16日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約244KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。