労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名 京都市
事件番号 大阪高裁平成18年(行コ)第101号
控訴人(原審原告) 個人X
被控訴人(原審被告) 京都府(代表者兼行政処分庁 京都府労働委員会)
被控訴人(原審参加人) 京都市
判決年月日 平成19年1月25日
判決区分 棄却
重要度  
事件概要  本件は、Xが京都市交通局に勤務し、京都交通労働組合の支部長であったが、その意に反し庶務係長に昇進させられたことが、同組合に対する支配介入に当たるとして争われた事件である。
 京都府労委が同救済申立てを棄却したところ、Xはこれを不服として、京都地裁に行政訴訟を提起した。同裁判所は同委員会の命令を支持し、請求を棄却した。
 Xは同地裁判決を不服として、控訴したところ、大阪高裁は、原審の判決を相当とし、Xの請求を棄却した。
判決主文 1.本件控訴を棄却する。
2.控訴費用は控訴人の負担とする。
判決の要旨 ① 支配介入に関する判断基準について、Xは、支配介入が労働組合ではなく労働者にとっての団結権の保護と捉える場合、本件のように、組合ないし組合員の意思ないし決定によることなく、Xの組合における組合員資格を喪失させ、また、組合支部長の地位を剥奪するという行為は、支配介入に当たると解すべきであるなどと主張しているが、仮に、労働者個人の団結権及び団体行動権の保護の観点から支配介入に当たるか否かを判断するとしても、配転や昇任は人事権行使の一態様として使用者の裁量に基づいて行われるものであり、これよりも労働者個人の団結権及び団体行動権の保護が当然に優先されるべきものとまでは解されないから、当該昇任が結果的に組合員資格を喪失させるような場合であっても、そのことからこのような昇任を伴う異動が直ちに支配介入に当たるとはいえないし、また、支配介入に当たるか否かの判断は、原判決の理由説示のとおり、当該人事異動について、具体的人選の合理性、組合活動に対する影響及び業務上の必要性の有無等の諸般の事情をも総合考慮して判断するのが相当であるとした例。
② 本件異動の組合活動に対する影響等について、①Xは、Xが所属する組合及び組合の反主流派であるA会において、発言力ないし影響力こそ相当程度あったものの、それは、組合活動家としてというよりは、むしろ組合運動外の活動やその人柄によるもので、また、A会の組合活動という観点から見ても、Xは、A会の執行部を構成する代表役員という地位にあったのではなく、A会の運営に直接携わっていたのではないし、本件異動が、組合内におけるA会の勢力に影響を与えてその勢力が減少したというのでもない、②交通局の人事担当者が組合の役員選挙前に、主流派であるB会の選挙に向けたレセプションに出席したことをもって、交通局がB会に肩入れし、A会を敵対視しているとまでは認められない、③本件異動当時、A会から組合の三役等役員が選出されたことはなく、組合の各支部において選出される中央委員も、A会は40人中4人にとどまっていたのであるから、交通局が、A会の勢力拡大等を懸念し、合理化計画を円滑に推進するために、Xを活動から排除してA会を弱体化する必要があったなどとは考えられない、以上のことからすると、本件異動がA会の組合活動に与える影響が大きかったとか、交通局がA会の弱体化を図って本件異動を画策したなどとはいえないとされた例。
③ 本件異動の業務上の必要性について、Xは、Xの昇任は、試験採用者等を除いた50人中、主任を経ていない者としては2人、鉄道部門からバス部門への他部門の異動では1人にすぎず異例さが際だっており、また、人選は当該部局からではなくY次長の意向にもとづくものであり、直接の上司からの意向打診はないなど、通常とは異なる不自然なものであるなどと主張しているが、原判決の理由説示のとおり、①Xの昇任は、市職員任用規則に従ったものであって手続に問題はないし、Xの対人折衝能力が評価されてこれを活かす職場に配転されたのである、②本件異動により、Xと同期の在職者のうち半数が係長以上となったが、人事異動のあり方としては何ら不自然ないし不合理ではなく、Xが右記のように一定の評価を受けていたことや、現実にその能力を発揮していたことなどからすれば、本件異動に交通局の業務上の必要性があったといえる、③Xは、その活動歴からすれば昇任を容易に受け入れるとは思われないことや、通常とは異なる昇任であったことなどから、Xと長期間親しくしてきたY次長らが、直接Xを説得したとしても不合理ないし不自然であるとはいえないし、不当労働行為を推認させるものとも断じ得ない、④Xの前任者が病気治療のために入院することを理由として異動を希望していたところ、対人折衝能力等の観点からXが適任であると判断されて後任に選任されたのであり、左遷であるとは認めがたい、以上のことからすると、本件異動については、業務上の必要性があったと認められるとされた例。

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
京都府労委平成16年(不)第2号 棄却 平成17年7月29日
京都地裁平成17年(行ウ)第19号 棄却 平成18年9月5日
最高裁平成19年(行ヒ)129号 上告不受理 平成19年9月20日
 
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