概要情報
事件名 |
田中酸素 |
事件番号 |
山口地裁平成17(行ウ)14号 |
原告 |
田中酸素労働組合 |
被告 |
山口県(代表者兼処分行政庁 山口県労働委員会) |
判決年月日 |
平成18年11月21日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、①組合員X1に対し配置転換、夏期賞与の減額等を行ったこと、②本件初審審問に証人として出頭したX1らを欠勤扱いにし、賃金減額を行ったこと、③X1らに対し脱退勧奨したこと、④X1らに対し定時退社を指示したこと等が不当労働行為であるとして争われた事件で、山口県労委は、会社に対し、①X1に対する夏期賞与の差額の支払、②X1らに対する労働委員会に出頭した時間について欠勤がなかったものとしての取扱い、減額分の支払、③脱退勧奨するなどの支配介入の禁止を命じ、その余の申立てを棄却した。
組合は、これを不服として山口地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は組合の請求を棄却した。 |
判決主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
判決要旨 |
① X1は、営業用の肩書としてプロパン部長の名称を使用することを会社から許されており、後輩の指導や販売台帳や保安台帳等を管理し、会社からは同部の責任者として位置づけられていたが、会社はその職制が明確に定められていないところ、X1は同部所属の従業員の給与や勤務実績等の査定をしたことはなく、社内では「X1さん」と呼ばれていたことに照らすと、プロパン部長が会社の職制上の部長であるとは認められず、Xは、同部所属の従業員中の責任者として業務に従事していたに過ぎないと認めるのが相当であることから、本件配置転換は、降格には当たらないとされた例。
② X1の本件配置転換直後の夏期賞与は、前年の夏期賞与に比べ14万円減額され、それ以後の賞与についても減額支給されているが、右減額支給が本件配置転換によるものと認めるべき証拠はなく、また、本件配置転換後の給与は引き下げられていないことから、Xが本件配置転換により経済的不利益を受けているとはいえないとされた例。
③ 組合は、本件配置転換により、会社内外で信用を失う等精神的苦痛を受けたと主張するが、本件配置転換により職務内容が変更し、また、配転先においては責任者的な立場でなくなったことにより、X1が精神的苦痛を感じたとしても、配置転換により担当業務が変更される以上当然のことであり、甘受すべき程度を越える不利益とはいえないとされた例。
④ 会社は、組合設立の前、プロパン部の下請について、X1の会社での業務遂行状況等について協議し、このまま同部の責任者としての地位に置くことは適当ではないと判断し、X1を別の部署に異動させる方針を決定していたのであるから、本件配置転換自体は、組合が会社に団体交渉の申入れをした当日、申入れがなされた後に決定されたものであるが、かかる事実のみでは、Xが組合の組合員であることやその組合活動をしたことの故をもって本件配置転換がなされたと認めるに足りないとされた例。
⑤ 以上のことからすると、本件配置転換をもって、X1が組合の組合員であること等の故をもってする不利益取扱いに当たるとは認められず、X1をプロパン部責任者としての職務に復帰させるとの組合の申立てを棄却した労委の命令は適法であるとされた例。
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