労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名 西日本旅客鉄道(西労ビラ配布)
事件番号 東京地裁平成17年(行ウ)第629号
原告 西日本旅客鉄道株式会社
被告 国(処分をした行政庁 中央労働委員会)
被告補助参加人 ジェーアール西日本労働組合
ジェーアール西日本労働組合近畿地方本部
個人X
判決年月日 平成18年9月25日
判決区分 全部取消
重要度  
事件概要 本件は、休日にJR駅前で組合ビラを配布していた組合員のうちXが、別組合の組合員である同僚運転士の乗務用鞄の外ポケットに組合ビラを入れたことについて、会社が、乗務に向かう途中の運転士の意識集中を妨げ安全運転に支障を与えたとして書面により厳重注意を行ったことが不当労働行為であるとして、申立てがあった事件である。初審兵庫地労委は救済申立てを棄却し、中労委は初審命令を取り消し、会社に対し、Xに対する厳重注意がなかったものとして取り扱うよう命じた。会社は、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起した。同地裁は、中労委命令を取り消すとの判決を言い渡した。
判決主文 1 中央労働委員会が、中労委平成16年(不再)第40号事件について、平成17年11月16日付けでした命令を取り消す。
2 訴訟費用は、補助参加によって生じた部分は被告補助参加人らの負担とし、その余の費用は被告の負担とする。
判決の要旨 ① 会社の本件厳重注意処分が労組法7条1号の不当労働行為に当たるというためには、中労委において、①本件厳重注意処分が組合員Xにとって不利益な取扱いに当たること、②不利益な取扱いを受けたXが正当な組合活動を行ったこと、③使用者である会社が、②の「故をもって」①の不利益な取扱いをしたこと(不当労働行為意思の存在ないし①と②との間に因果関係のあること)を主張立証しなければならないとされた例。
② 企業秩序(職場秩序)を乱すような労働組合の活動は、争議行為として行われたものでない限り、職場秩序遵守義務に違反するものであるとして、正当性を認めることができず、このことは当該組合活動が当該労働者の勤務時間外に企業施設外において行われたものであったとしても異ならないとされた例。
③ ①会社においては、乗務に向かう運転士が乗務に意識を集中させることのできる職場秩序の維持、確保が求められていること、②従業員においても、そのような職場秩序を遵守し、乗務に向かおうとする他の運転士が乗務に対し意識を集中させるのを妨害してはならない義務を労働契約に伴って負担していること、③それにもかかわらず、組合員Xは、当該職場秩序遵守義務を怠り、運転士Zが本件ビラの受領を拒否する意思を有しており、もし意に反して交付すれば同人の乗務への意識の集中を妨げることを認識し、あるいは容易に認識することができたにもかかわらず、同人の意思に反して本件ビラ配布を行ったこと、④その結果、Xは、乗務に向かおうとしていたZが意識を乗務に集中させようとするのを妨害して困惑させたことが認められることからすれば、XのZに対する本件ビラ配布行為は、会社における職場秩序を乱す行為であったと評価するのが相当であるとされた例。
④ 右②及び③によれば、本件ビラ配布行為は、Xが会社の従業員として負っている職場秩序遵守義務に違反するものであって、労働組合の活動としての正当性を認めることはできないから、中労委は、本件において、不当労働行為成立の要件のうち、①の②の要件(XのZに対する本件ビラ配布行為が正当な組合活動 であること)  について立証がされていないことになり、その余の点を判断するまでもなく、本件厳重注意処分は、労組法7条1号所定の不当労働行為(不利益取扱い)に該当しないとされた例。
⑤ 中労委が、本件厳重注意が労組法7条3号の組合に対する不当支配に当たると主張していることとの関係から同厳重注意がそもそも「不利益取扱い」といえるかについて検討すると、  会社においては、安全かつ正確な輸送の提供が最重要な課題であるという観点に立つとき、組合員Xの本件ビラ配布行為は、安全な運転の実現に悪影響を及ぼす行為であり、就業規則の「その他著しく不都合な行為」に該当するものとして、会社から処分されてもやむを得ないものであり、本件厳重注意によりXの被った不利益は無事故表彰が1か月遅れただけであり、過去の処分例との均衡を失しているとはいえず、同厳重注意は、相当な処分というべきであり、労組法7条1号に規定する「不利益な取扱い」ということはできず、右①の①の要件も具備していないとされた例。
⑥ 本件厳重注意が、「不利益な取扱い」でなく、「正当な組合活動」でないことの明らかな本件にあっては、必然的に、Xが正当な組合活動の「故をもって」会社がXに対し不利益な取扱いをしたという不当労働行為意思の存在(①の③の要件)も、その前提を欠き、立証されていないということになるとされた例。
⑦ 会社の行為が労組法7条3号の「支配介入」に当たるというためには、その前提として、本件ビラ配布行為が正当な組合活動であること、Xの正当な組合活動に対し本件厳重注意という不利益な取扱いがされたということが立証されなければならないが、④及び⑤の判断のとおり、いずれもこれに当たらないから、支配介入に当たるとする中労委の主張はその前提を欠いているとされた例。

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
兵庫地労委平成14年(不)第7号 棄却 平成16年5月18日
中労委平成16年(不再)第40号 全部変更 平成17年11月16日
 
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