労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  日本アイビーエム 
事件番号  東京高裁平成15年(行コ)第275号 
控訴人  東京都労働委員会 
控訴人参加人  日本アイ・ビー・エム株式会社 
被控訴人  全日本金属情報機器労働組合日本アイビーエム支部 
被控訴人  全日本金属情報機器労働組合東京地方本部 
被控訴人  全日本金属情報機器労働組合 
判決年月日  平成17年 2月24日 
判決区分  一審判決の全部取消し 
重要度   
事件概要  本件は、会社が、①支部のスタッフ専門職である組合員三名のチェックオフ申請を拒否したこと、②分会の執行員に就任した組合員X1の就任撤回と役員名簿の修正を要求したこと、③組合員X2、X3に対し、上級管理職の職務等に反する活動を行った場合の懲戒処分を示唆したことが不当労働行為であるとして争われた事件である。
 東京都労委は、いずれも不当労働行為に当たらないとして、申立てを棄却したが、これを不服として、組合が行政訴訟を提起した。
 東京地裁は、東京都労委の棄却命令を取り消し、組合の請求を認容した。
 本件は、東京都労委がこれを不服として、東京高裁に控訴したものであるが、同高裁は、会社の請求を認容し、原判決を取り消した。 
判決主文  1 原判決を取り消す。
2 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人らの負担とする。 
判決の要旨  5130 法2条但書との関係
X1ら3名が現実にライン専門職の人事権行使を助言したり、人事上の機密事項に接したことがなかったというだけでなく、参加人においては、X1ら3名が置かれているスタッフ専門職としての地位そのものが、直接には人事評価を行ったり、人事情報に接することができないものであり、X1ら3名が使用者の利益を代表する者に該当するということはできないとされた例。

5130 法2条但書との関係
労働組合は、その自主的判断に基づき組合員の範囲を決定することができるのであるから、その判断に基づいて使用者との間で、労働協約をもって非組合員の範囲を定めることを妨げられるものでなく、また、使用者にとっても、非組合員の範囲は人事制度や労務管理にかかわることであり、これを定めることについて一定の利益を有していることは否定できないから、非組合員の範囲について労働協約が締結された以上、労使の合意として効力を有するものであるが、使用者の利益代表者の範囲は、現実にはその判別が困難を伴うとしても、各企業の実態に即して客観的に定まるものであって、労使の合意によって左右されるものではなく、しかも、組合員となる資格を有しない者の範囲の裏返しである組合員となる資格を有する者の範囲は、本来組合の自主的判断に委ねられるべきものであり、非組合員の範囲を広いものとするか狭いものとするかは、組合員となり得る者の多少、組合員のままで昇進したり就くことのできる職種の範囲に直接関係し、組合活動に及ぼす影響は大きいものであるから、労働協約中の非組合員の範囲を定める条項の効力を考えるに当たっては、このような事情を十分考慮すべきであるとされた例。

2305 労働協約との関係
2249 その他使用者の態度
本件確認書の1項は組合員の範囲に関するもの、2項及び3項は組合員の就業時間中の組合活動に関するもの、4項は組合員の昇進問題の解決に関するものであり、このように一つの労働協約において複数の事項が協定されている場合、各合意事項は相互に関連を有し、又はある事項についての一方の譲歩と他の事項の他方の譲歩により全体の合意が成立するなど、労働協約全体が一体をなすものとして成立するのが通例であるから、一方当事者が自己に不利な条項のみを取り出して解約することは原則として許されないと解すべきであるが、その条項の労働協約の中での独立性の程度、その条項が定める事項の性質をも考慮したとき、契約締結後の予期せぬ事情変更によりその条項を維持することができなくなり、又はこれを維持させることが客観的に著しく妥当性を欠くに至っているか否か、その合意解約のための十分な交渉を経たが相手方の同意が得られず、しかも協約全体の解約よりも労使関係上穏当な手段であるか否かを総合的に考え合わせて、例外的に協約の一部解約が許される場合があるとするのが相当であり、本件の組合員の範囲に関する条項の解約が、信義に反し、あるいは権利の濫用に当たるということはできず、有効に解約されたというべきであるとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
労働協約の条項の一部解約が認められるか否かの判断は微妙なものがあり、事業所の所長らによる組合員に対する本件言動の当時、参加人会社が本件条項の一部解約は認められないと考えるのも無理からぬ事情があったというべきであるから、参加人が本件条項が有効で、専任以上のスタッフ専門職には組合員資格がないと考えて、その自己の考えを意見として表明したり、敷衍して説明したりすることを支配介入の不当労働行為意思の表れとみるのは相当でなく、これら言動を不当労働行為と認めるのは相当でないとされた例。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
参加人会社はX1ら3名についてチェックオフを開始することを求める申請を、X1ら3名が組合員でないとして実施しなかったものであるところ、組合支部の組合員150名中20名についてはチェックオフが実施されずに組合支部が直接組合費を徴収していたことが認められ、組合員であることとチェックオフ実施の関係は明確でないのみか、X1ら3名について新たにチェックオフを開始することを拒否することが、組合支部の活動に及ぼす悪影響はほとんどないものと推認され、このような、組合支部と会社との間のチェックオフの実情に、本件条項のみの解約は許されないと会社が考えるのも無理からぬ事情があり、会社がX1ら3名が組合員であることに疑義を抱いていたことにはそれなりの理由があることを併せ考えると、会社がX1ら3名にチェックオフという便宜供与を拒んだからといって、これが支配介入による不当労働行為に該当するということはできないとされた例。

業種・規模  電気機械器具製造業 
掲載文献   
評釈等情報   

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
東京地労委平成8年(不)第69号 棄却 平成13年3月27日
東京地裁平成13年(行ウ)第229号 全部取消 平成15年10月1日
最高裁平成17(行ツ)177号
最高裁平成17(行ヒ)191号
上告棄却・上告不受理 平成19年11月30日
 
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