事件名 |
国民生活金融公庫 |
事件番号 |
東京高裁平成12年(行コ)第98号
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原告 |
国民生活金融公庫 |
被告 |
東京都地方労働委員会 |
被告補助参加人 |
X1 外18名 |
判決年月日 |
平成16年11月17日 |
判決区分 |
一審判決の一部取消し |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、組合の反主流派に属する組合員に対する昇給・昇格差別等が
不当労働行為であるとして争われた事件で、東京地労委の全部救済命令(X1ら19名に対する昭和59年度から62年度におけ
る職位・給与の是正、既支給額との差額の支払い並びに差額の支払いが完了するまでの間の年5分の割合による金員の支払い、文
書掲示及び文書による履行報告)を不服として会社が行政訴訟を提起した。東京地裁は、東京地労委の命令のうち、6名の職位・
給与の是正部分を取り消し、会社の請求を一部認容した。会社及び東京地労委がこれを不服として、控訴を提起したものである
が、東京高裁は、原判決を一部取り消し、会社の敗訴部分を全部取り消した。 |
判決主文 |
1 第1審原告の控訴に基づき、原判決中、第1審原告の敗訴部分を
取り消す。
2 第1審被告が都労委昭和61年不第90号及び昭和63年不第24号事件について平成7年4月4日付けで発した命令中前項
の取消しに係る部分を取り消す。
3 第1審被告の控訴を棄却する。
4 訴訟費用は、第1、2審とも第1審被告の負担とし、補助参加により生じた費用は、第1、2審とも補助参加人らの負担とす
る。 |
判決の要旨 |
5200 除斥期間
5201 継続する行為
昇給に関する考課査定において差別的な査定があった場合に、その賃金上の差別的取扱いの意図は、賃金の支払いによって具体的
に実現されるのであって、考課査定とこれに基づく毎月の賃金の支払いとは一体として一個の不当労働行為となるとみるべきであ
るから、昭和60年1月の査定に基づき、同年4月1日に発令された同年度の賃金最終支払時期は、同61年3月31日であり、
本件申立ては同年9月13日になされているから、賃金支払いの継続中に救済申立てがなされたことになり、労組法27条2項の
定める期間内にされたものとして適法であるが、昭和59年度分の昇格・昇給に関する申立ては、同61年9月13日に申立てが
なされていることから、1年を徒過したもので不適法であるとした原判決が相当であるとされた例。
1200 降格・不昇格
1202 考課査定による差別
6342 不利益取扱いに関する不当労働行為の成否の判断の誤り
金庫が、昭和55年以前、X1らを中心として行われた先鋭的な組合活動に対して既に強く嫌悪し、その後も、X1らがさらに企
業告発型の闘争方針を強めて盛んに活動を行ったため、X1らに対する嫌悪を強めていったことが認められるところ、昭和60年
から昭和62年ないし63年のX2ら3名及び同期者の格付けにおいて、X2ら3名は最下位に位置づけられていたが、X2につ
いては、服務上問題のある行動があり、上司の指示にも従わないことがあった上、事務処理にも怠慢が見られたこと、X3につい
ては、事務処理能力に問題があった上、協調性に欠ける面があったこと、X1については、規律上問題のある言動があり、事務処
理に関する基礎的知識や業務に対する積極性に欠ける面があったこと等に照らせば、金庫がX2ら3名の組合活動等を決定的動機
として不利益に取り扱ったものとは認められず、また、X2ら3名を除く16名の昭和60年度ないし昭和62年度の格付けにお
いても、その勤務状況に照らし、いずれも不当に低いとは認め難いから、金庫が組合活動等を決定的動機として不利益に取り扱っ
たものとは認められず、本件命令中この点に関する部分は取消しを免れないとされた例。
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業種・規模 |
金融業、保険業 |
掲載文献 |
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評釈等情報 |
中央労働時報 2005年 8月10日 1046号 31頁
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